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本田菊
ギルベルト
本田菊
日本がそう呟くと、プロイセンは小さく笑った。年下とは思えない落ち着いた仕草で、周囲を一瞥する。
ギルベルト
そう言って、プロイセンは日本を柱の陰へと導いた。金属の冷たさが背に伝わるが、すぐにそれ以上に近い体温を意識してしまう。 年上のはずの日本が、指示を待つように視線を落とす。
プロイセンの手が伸び、浴衣越しに腕を押さえた。その動きは稽古の型をなぞるようで、しかし距離は明らかに近すぎた。
ギルベルト
低い声が耳元で響く。工場の静寂が、その声を必要以上に際立たせる。日本は息を整えようとするが、うまくいかない。
ギルベルト
短い言葉とともに、体勢がゆっくりと変えられる。機械油の残り香と、人の熱が混じり合い、思考が曖昧になっていく。
日本は無言で従い、プロイセンの肩口に指をかけた。
やがて二人の間に言葉はなくなり、聞こえるのは微かな呼吸と、遠くで軋む鉄骨の音だけだった。
何もないはずの工場は、その瞬間だけ、確かに満たされていた。
本田菊
ギルベルト
主
主