コメント
0件
しおり
クラスメイトのしおりが、廊下の向こうから血相を変えて走ってくる
うすい先生
途端に担任の臼井が激を飛ばす。いつもの光景だ。面倒くさそうに謝るしおり。これも日常茶飯事の光景。
しおり
ゆうな
しおり
ゆうな
かなは、しおりのいとこでもあり私の友達である。実は先日かなに頼まれ、しおりと組んで意中の先輩とくっつける小芝居を打ったところだ。
しおり
ゆうな
しおり
ゆうな
しおり
ゆうな
「そうたにはもう何の感情もないんだけどさ。ぶっちゃけ向こうも気持ちないと思う。けど別れるってなんとなく言いにくくて。ねえ、ゆうなさあ、しおりと一緒に私の計画に乗ってくれない?」
かなの言う「計画」とはこうだ。 そうたが前々から使っていた出会い系サイトを使って、偶然を装いしおりと会わせる。そうたは押しに弱いから、しおりみたいなグイグイ来る女の子には弱いはず。かなには内緒でしおりとデートの約束を取り付け、そこにゆうなもこっそり出向き、証拠写真と証拠音声を録音し、そうたを追い詰める。
正直そこまでやるくらいなら、真っ向から別れを切り出せばいいのに。と思ったが、しおりの押しに弱いのは私も同じ。しおりのいつものあのノリで「面白そうじゃん!ゆうな!ね、一緒にやろ?」と来られたら、断りづらくなってしまった。
そうたと私は、実は中学時代の同級生だ。その頃から女好きで有名で、先輩後輩同級生問わず、女を取っかえ引っ変えしているという噂は絶えなかった。しかしそんなそうたであれ、やすやすとかなの計画通りに話が進むわけないよな、と思っていたが相変わらず軽い男なのか、簡単にしおりの色仕掛けにハマってしまった。 待ち合わせ場所の駅ビルに、土曜日の時間通りにのこのこと現れたそうたを見て、思わずため息をついた。
「男って、単純なのかもしれない」そう思うが早いか、しおりはそうたの腕に自分の腕を絡め、早くもいい雰囲気に。高校生にしてこれでは、しおりの将来が心配だ。そんな感情を押し殺し、私は隠し持ったコンパクトカメラで階段の影からいい雰囲気のしおりとそうたを隠し撮った。
しばらくして二人は、駅ビルのカフェに入った。これも計画のうち。既に斜向かいのパーテーションで区切られた席に私が陣取り、いつでも音声の録音ができるようボイスレコーダーを握りしめている。
そうた
しおり
そうた
しおり
そうた
そうた
出た。そうたの「お前と付き合えたらオレ幸せ」作戦。中学の頃からこのキザな台詞で、何人の女が騙されたことか。そうたには申し訳ないが、しっかりとその言葉も録音させてもらった。
しおり
そうた
なーにが返事は急がない、だ。同級生として恥ずかしいくらいキザな台詞に辟易していた所、上手いタイミングでしおりが話を切り上げてその日は二人とも別れた。
しおり
ゆうな
しおり
辟易としていたのは正直なところだが、同級生をそこまで罵られて心中は穏やかではない。やっぱり最初から、こんなことしなければ良かったのかもしれない。そうたにも悪いことをしてしまったかも、と急に罪悪感を覚え始めた。
ゆうな
しおり
何となく、しおりが寂しそうなのが何故か気になったが、気にせず私鉄の駅へ歩き出した。しおりの最寄り駅も、この私鉄沿線なのだからいつもなら、「待ってよー!私も一緒に帰るー!」って来そうなものなのに。
その二日後の月曜日、土曜日の寂しげな様子もなく、しおりは廊下の向こうから臼井先生に怒られながらドタバタと走って、かなと城山先輩が付き合うことになった、と報告に来たのだった。
続く