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催涙雨

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催涙雨

1 - 催涙雨

♥

501

2019年08月25日

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ねぇ、星奈ちゃん

催涙雨って、知ってる?

教室の外を眺めながらそう聞いてきた彼女は、私の憧れの澪先輩

博識で、私の知らないことをたくさん教えてくれる

星奈

さいるいう…ですか?

七夕に降る雨をそう呼ぶの

星奈

へぇ、名前があるんですね

雨が降ると、天の川が見えないでしょう?

だから七夕の日の雨は、天の川が渡れず、織姫と彦星が会えない悲しみで流した涙だって言われてるの

また初めて知る世界だ

澪先輩はいつだって 私の知らない世界を広げてくれる

星奈

じゃあ3日後の七夕には
雨降って欲しくないですね

そうね…

でも逆に、織姫と彦星が会えた嬉しさで流す涙って説もあるの

星奈

そっちもロマンチックですね

そうでしょう?と微笑む澪先輩が 夕日と相まって眩しかった

…星奈ちゃんは、
どっちの説だと思う?

星奈

え…?

星奈

そうですね、私は…

星奈

会えた嬉しさで流す涙の方が好きです

…そっか

澪先輩は、頬杖をつきながら また外を眺めた

…私ね

遠距離恋愛してるの

もう1年は会えてないかな

星奈

えっ…

でもね、やっとこの前連絡が来たの

「7日に会えるかも」って

星奈

そう…なんですか…

でも、また「かも」なのよね

いつもそう…

だからあんまり期待はしてないのよ

それに、7日は雨の予報なの

澪先輩はずっと苦笑いしながら話していたが、突然ふっと微笑んで続けた

でもね、星奈ちゃんが催涙雨は会えた嬉しさで流す涙って言ってくれたから

なんだか、会える気がする

どう返せばいいかわからなかった私はとにかく必死で伝えた

星奈

…澪先輩は、素敵な織姫です

星奈

もし会えなくても、きっと彼氏さんも彦星のように先輩を想ってくれているはずです

星奈

だから…だから大丈夫です!

我ながら意味のわからないことを言ったと思う

けれど先輩は

ありがとう…

そう言いながら

目に涙を浮かべていた

「今日7月7日のお天気です」

「全国的に晴れ間が広がりますが…」

「局地的な通り雨にご注意ください」

画面の向こうの気象予報士の声が うっすらと聞こえる

もうとっくに昼過ぎだったが 私はまだベッドの上にいた

星奈

澪先輩…

星奈

彼氏さんには…
会えましたか…?

そう天井に呟いてみたけれど もちろん返事など返ってこない

星奈

どうして私は…

…どうして私は女なんだろう

この言葉を何度も飲み込んだ

星奈

本当は…本当はずっと…

窓の外で雨の音がした

言いたかった

けれど、遠くの彦星を想う 織姫の顔を見てしまったら

そんなこと、言えるはずもなかった

星奈

ずっと

星奈

大好きでした…

今年の催涙雨が

織姫と彦星の

会えた喜びで流す涙で

ありますように

-END-

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