そらるこ
ねえ、花火大会行かない?
全てはこの一言から始まった
まふまふ
いいけど…なんで?
そらるこ
話したいことがあるから
まふまふ
…分かった
僕とそらるこは付き合ってないけど両思いだった
だから告白だと思ってたんだ
…あの時までは
バーン
そらるこ
うわぁ!綺麗!
まふまふ
ほんとだね!
汗ばむ温度を風がどこかへ持って行ってくれる
そうして僕たちはこの夏最後の花火を見ている
夕日の影にかわって夜が現れて
花火を引き立たせている
まふまふ
…この夏最後の僕らの夢みたいだ
そらるこ
ほんとだね…
不意の視線を感じて振り返ると
そらるこが花火ではなく僕を見ていた
そらるこの黒い長髪を結いた髪型と
浴衣姿の華奢な背中
まだ夕方っぽさが残る空に
ぱーっと
花が咲いた
そらるこ
…花火って飽きないなあ
まふまふ
(花火が上がった時の君の笑顔)
まふまふ
(それがありふれた物で)
まふまふ
(僕にはそれしかないんだ)
夜空を着飾る光の粒に
遅れて音がする
…それが恋の終わりなんて思わなかった
だから僕は
まふまふ
…そうだね
君に笑いかけられていたんだ
数年後
まふまふ
(…心に何か意外性がないなあ)
まふまふ
(下駄が擦れて痛むくらい普通のことで埋まってる)
まふまふ
(…前から人目を避けて歩いてきた僕の歩幅に)
まふまふ
(初めて合わせてくれたのがそらるこだったなあ)
まふまふ
…でも、そらるこは
回想
そらるこ
…ねえ、まふ
まふまふ
ん?
まふまふ
(あ…告白か)
そらるこ
私…昔から…
まふまふ
…うん
そらるこ
…海外に行くのが決まっていたの
まふまふ
…え?
そらるこ
そして出発は明日
そらるこ
いままでありがとう
まふまふ
ちょ、ちょっと待ってよ!
まふまふ
海外って…
そらるこ
もう、多分会えないよ
まふまふ
そんなの嫌だよ!
そらるこ
私だって嫌だよ…
そらるこ
だけど…親からの命令だから…
まふまふ
そんな…
そらるこ
ありがとう、まふ
そらるこ
大好きだったよ
僕は手を見つめる
まふまふ
(この空っぽの手すら君の手で埋められない)
まふまふ
(僕はまるでそらるこが乗っていった最終列車みたいだ…)
まふまふ
…どっちも意気地無し
そしてテーブルに置かれたビー玉を見つめる
まふまふ
(…これも)
まふまふ
(ラムネのおかげで存在できてる)
まふまふ
(他人のおかげで生きてる僕みたいだ)
まふまふ
(…あの時の1歩は海の向こう側よりもずっと遠かった)
まふまふ
(たとえどれだけそらるこの近くに行っても)
まふまふ
(僕の願いにはもう遠すぎる)
まふまふ
(可憐に咲く花火の裏の)
まふまふ
(真っ黒な闇に気づけなかった)
まふまふ
(きっとあの花火は)
まふまふ
(僕とそらるこの隙間を照らしてたんだろうな…)
まふまふ
(あの時僕は人々の歓声を背景に)
まふまふ
(君に笑いかけることしか出来なかったんだよ…)
ピーンポーン
まふまふ
はーい
ガチャ
まふまふ
え…
まふまふ
なんで…?
あと少しのもう少しの
埋まらない距離と夏のような
届かなくて触れない
あの花火のような
『君』がそこにいた
そらるこ
久しぶり、まふ!
チョコチップ
はいっ!
チョコチップ
甘酸っぱい青春ですなあ…
チョコチップ
さぞまふくんはモテただろうな…
チョコチップ
次は拝啓、桜舞い散るこの日にです!
チョコチップ
ではでは
チョコチップ
ばいちゃ!