TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

人生は、 全部上手くいくようには出来ていない

予定通りに終わらせたはずの任務に 予想外の事態が起こった

トドメを刺し損ねた奴がいて 情けないことに隙をつかれてしまったのだ

全てが終わったあとも 自分の状態を見る限り、生きて帰れる心地はしなかった

自分の想定よりも早く 終わりが近づいているのを酷く痛感した

怖くはなかった

近いうちに死ぬってことは 分かっていたから

それでも、 自分が生きていられる、残りの時間のことを考えると

痛みなんかで座り込む暇なんか ないと思った

最期にしなければいけないことがある

  

(終わるならせめて、あの場所で…)

雨の中、必死になって走った

冷たい雨に体温を奪われ 弱った身体を蝕まれる

体を動かす度に 撃たれた場所から、どんどん血が流れていくのが分かった

視界が霞んでいくのが分かって 人って死ぬ時は死ぬんだなって、そんなことを考えてしまった

公園に着いた頃には 息が切れて、意識も朦朧としてた

限界が近くて、 ベンチに倒れ込むように座った

  

早く、電話……しないと、ッ…

震える手でスマホを取りだし 電話をかける

マイキー

もしもし

  

……、しゅ、りょ…ぅ…

マイキー

お前か、どうした?何かあったか?

  

任務…おわり、まし、た…

マイキー

そうか、ご苦労だったな

マイキー

身体は大丈夫か?

  

すみ、ま…せん

  

銃弾を…うけ、て…しまって、もう…

マイキー

何だと…!?

マイキー

今どこだ…!すぐに部下を…

  

いいん、です…

マイキー

え…?

  

余命…宣告、されて…たん、です

  

分かって…ました、もう…死ぬって…

マイキー

お前、だから任務を…

  

はい…

  

最期に…なにか、役に立ちたくて…ッ…

マイキー

そんな言い方やめろ、お前は俺たちのために今まで沢山やってきたろ…!

マイキー

お前のおかげで、
成功した契約もある…!

マイキー

だから、そんなふうに言うな…!

  

ありが…とう、ございます…

マイキー

お前、なんで余命のこと言わなかったんだ

マイキー

言えば三途だって、
任務になんて行かなかったのに…

  

数日前、喧嘩…したんです

  

彼が…私より、先に…
死んでしまうかと……ッ…思って、

  

彼が…最期の日、私のそばに、
いないと…思って

  

それが…怖くて、暴走…して…ッ…

  

話せなくて…気づいたら、もう、彼の行く日に、なっていて

  

どうしようも…無かったん、です…

マイキー

…そうだったのか

  

しゅ、りょう…

  

私が…死ん、で…も、彼には、言わないで…

マイキー

なんで、むしろあいつに言うべきじゃ…

  

彼…すぐ、自分を責めて、しまうん…です

  

自分が…悪く、なくても、関係…して、なく、ても…

  

全部…自分の、せいに、して…しまうん、です

  

私が…死んだことに、対して、
自分を…責めて、ほしくない…

  

それに、彼には…幸せに、なってほしい…

  

もう居ない…人を、
ずっと思い続けないで、ほしい…

  

お願い、です…

  

私が…生きた証を、存在した…証を、
全部…無くして、ください…

  

彼に…私を、忘れさせて、ください…ッ…

マイキー

…………ッ……分かった、

その言葉を聞き安心した私は 通話を切った

  

(これで、もう…思い残すことは…)

もう眠ってしまおう そう思った瞬間、私の身体がそれを拒否した

血も止まらず、痛みも増すばかりなのに 意識を手放したくない気持ちでいっぱいだった

最期に、彼の声を聞きたいと思った

  

(出てくれるかな、番号変えちゃったし…)

一抹の不安を抱きながら 私は彼の番号を押し、電話をかけた

春千夜

[もしもし…]

数秒のコールの後、 警戒の籠った彼の声が聞こえた

それもそのはず 元々今日死ぬ気で、自分の存在を消そうと思っていた私は

自分の電話番号を変えているため 彼のスマホには【非通知設定】という文字が表示されている

今の時間なら、 ちょうど任務に行く直前だろう

  

(番号…変えとくだけでよかった)

  

(こうやって電話したくなるだろうって、予想してたんだろうな)

過去の自分に感謝しながら 彼に返事をしようと口を開く

  

………ッ…、…!

声が出なかった

スマホを持ち上げるだけで 私は身体全部の力を使っていた

声のために使える力は もうほとんど残っていなかった

春千夜

[おい誰だ、間違い電話か?]

彼の言葉に身震いした

このままでは通話を切られてしまう 次また掛けられたとして、出てもらえる保証はない

声を出したら、 もうスマホを持てなくなるだろう

出せるのは、せいぜい二言…

  

さ…

春千夜

そういやお前、なんで敬語になったんだ?

春千夜

前はそうじゃなかっただろ?

春千夜

呼ぶ時も苗字だし

  

え!?それは、
まあ…一応上司で幹部ですし…

  

それに元々苗字呼びだったので、今更呼び方変えるのは、恥ずかしい…というか

春千夜

…そうかよ

  

………………

春千夜

[喋んねーなら切る…]

  

…ッ…はる、ち…よ、さん

  

だい、す…き…ッ…

春千夜

[え…]

彼の返答を聞く前に 通話を切る

それと同時に力が入らなくなり 手からスマホが離れた

  

(なんで、愛してるって…言わなかったんだろう)

  

(最後の最後で恥ずかしがって、ほんと…バカみたい…)

  

(でもきっと、いつか彼に言える日が来るんだろうな)

  

(忘れさせたいと思ってるのに、
番号…変えるだけだし)

  

(電話までしちゃったし…)

  

(最期に、彼の声を聞けてよかった…)

僅かに抱いていた後悔を 本音が上書きする

次に見えたのは、懐かしい記憶

  

三途さん

  

組織入りたての頃に、私にこのピアスくれたじゃないですか

春千夜

ああ、そうだな

  

このピアスに付いてる宝石って何ですか?

春千夜

ラピスラズリ

  

なにか意味とかあるんですか?

春千夜

知らね

春千夜

お前に合いそうなの適当に渡しただけだ

  

適当って、なんか引っかかりますね…

春千夜

バーカ、なんでも似合うってことだろうが

  

  

女たらし…

春千夜

んだとコラ‪

  

(ラピスラズリ、か…)

もう残されていないはずの力で ピアスを取り空に掲げる

僅かな月明かりで 雨に濡れたピアスが光る

  

綺麗…

言葉にも満たないかすれた声が出る

朦朧とする意識をつなぎ止め 私はピアスにキスをした

最後に残ったのは、 激しい雨の音と金属物の落ちる音

そして、微かなチョコレートの匂い

True End 【雨時、君の声が聞こえる】

この作品はいかがでしたか?

1,530

コメント

38

ユーザー

TikTokから来ました。 とっても感動しました。 ありがとうございます。

ユーザー

tiktok か ら 来た の です が 、 月銀 彡 の 小説 どれも 面白み が あり 、 感動 が あり 、 すごく 好き で す ! (( 初 コメ 失礼 し ま す ))

ユーザー

目から涙が次々と溢れ出てくる… もうやばい天才最高愛してます一生愛します推します大好きです 夢ちゃんの物語ももちろん大好きですけどこーゆーのもめちゃ好きです! なるほど〜、物がなくなってたのは???ちゃん(名前が不明なのでそう呼びます)がマイキー達に頼んだんだ…! もしかして……春ちゃん以外の梵天メンバーって???ちゃんのこと忘れてた、というより覚えてたけど忘れてたふり…? いやそれは違う?笑

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚