人生は、 全部上手くいくようには出来ていない
予定通りに終わらせたはずの任務に 予想外の事態が起こった
トドメを刺し損ねた奴がいて 情けないことに隙をつかれてしまったのだ
全てが終わったあとも 自分の状態を見る限り、生きて帰れる心地はしなかった
自分の想定よりも早く 終わりが近づいているのを酷く痛感した
怖くはなかった
近いうちに死ぬってことは 分かっていたから
それでも、 自分が生きていられる、残りの時間のことを考えると
痛みなんかで座り込む暇なんか ないと思った
最期にしなければいけないことがある
雨の中、必死になって走った
冷たい雨に体温を奪われ 弱った身体を蝕まれる
体を動かす度に 撃たれた場所から、どんどん血が流れていくのが分かった
視界が霞んでいくのが分かって 人って死ぬ時は死ぬんだなって、そんなことを考えてしまった
公園に着いた頃には 息が切れて、意識も朦朧としてた
限界が近くて、 ベンチに倒れ込むように座った
震える手でスマホを取りだし 電話をかける
マイキー
マイキー
マイキー
マイキー
マイキー
マイキー
マイキー
マイキー
マイキー
マイキー
マイキー
マイキー
マイキー
マイキー
マイキー
マイキー
その言葉を聞き安心した私は 通話を切った
もう眠ってしまおう そう思った瞬間、私の身体がそれを拒否した
血も止まらず、痛みも増すばかりなのに 意識を手放したくない気持ちでいっぱいだった
最期に、彼の声を聞きたいと思った
一抹の不安を抱きながら 私は彼の番号を押し、電話をかけた
春千夜
数秒のコールの後、 警戒の籠った彼の声が聞こえた
それもそのはず 元々今日死ぬ気で、自分の存在を消そうと思っていた私は
自分の電話番号を変えているため 彼のスマホには【非通知設定】という文字が表示されている
今の時間なら、 ちょうど任務に行く直前だろう
過去の自分に感謝しながら 彼に返事をしようと口を開く
声が出なかった
スマホを持ち上げるだけで 私は身体全部の力を使っていた
声のために使える力は もうほとんど残っていなかった
春千夜
彼の言葉に身震いした
このままでは通話を切られてしまう 次また掛けられたとして、出てもらえる保証はない
声を出したら、 もうスマホを持てなくなるだろう
出せるのは、せいぜい二言…
春千夜
春千夜
春千夜
春千夜
春千夜
春千夜
彼の返答を聞く前に 通話を切る
それと同時に力が入らなくなり 手からスマホが離れた
僅かに抱いていた後悔を 本音が上書きする
次に見えたのは、懐かしい記憶
春千夜
春千夜
春千夜
春千夜
春千夜
春千夜
もう残されていないはずの力で ピアスを取り空に掲げる
僅かな月明かりで 雨に濡れたピアスが光る
言葉にも満たないかすれた声が出る
朦朧とする意識をつなぎ止め 私はピアスにキスをした
最後に残ったのは、 激しい雨の音と金属物の落ちる音
そして、微かなチョコレートの匂い
True End 【雨時、君の声が聞こえる】
コメント
38件
TikTokから来ました。 とっても感動しました。 ありがとうございます。
tiktok か ら 来た の です が 、 月銀 彡 の 小説 どれも 面白み が あり 、 感動 が あり 、 すごく 好き で す ! (( 初 コメ 失礼 し ま す ))
目から涙が次々と溢れ出てくる… もうやばい天才最高愛してます一生愛します推します大好きです 夢ちゃんの物語ももちろん大好きですけどこーゆーのもめちゃ好きです! なるほど〜、物がなくなってたのは???ちゃん(名前が不明なのでそう呼びます)がマイキー達に頼んだんだ…! もしかして……春ちゃん以外の梵天メンバーって???ちゃんのこと忘れてた、というより覚えてたけど忘れてたふり…? いやそれは違う?笑