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ルティ
ルティの声が聞こえ
次の瞬間、目の前にワイバーンの牙が見えた。
避ける時間はなかった。
空に注意を向けすぎていた。
ただ、死を、覚悟した。
ルティ
死が溢れた世界の中に、聞き慣れた声が響いた。
大地から現れた漆黒の茨がワイバーンに絡みつき、動きを止める。
ルティ
言われるまでもない。
武器を手に、正面のワイバーンを見据え、とどめをさした。
ルティ
ルティ
ルティ
ルティ
戸惑いを、覚える。
ルティはついこの間まで、戦えるような子じゃなかったはず。
ルティ
ルティ
ただ、今は、それを気にしている余裕はなかった。
ルティのおかげで、形勢は少しマシになったが、劣勢であることに変わりはない。
ワイバーンの数が、多すぎる。
キャラバンにも、被害が出ている。
このままだと、壊滅する。
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ニンゲンの青年
不意に、状況にそぐわない呑気な声が響いた。
エルフの少女
音源にいたのは、ニンゲンの青年とエルフの女性。
二人は戦場のど真ん中に、ズケズケと侵入してくる。
通り際に、ワイバーンを屠りながら。
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
リョウと名乗った青年は自己紹介をしながら
襲い来るワイバーンを返り討ちにしていく
一撃で一殺。
いや、場合によっては二殺。
圧倒的なまでに、強い。
エルフの少女
エルフの少女
エルフの少女
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
エルフの少女
そして、メルティの杖から放たれた一筋の光が、空に昇る。
一瞬の後、空から無数の光が降り注ぎ
それは、すべてのワイバーンを撃ち抜いた。
翼を焼かれ、風穴を開けられ、無数のワイバーンが落ちていく。
それが魔法であることは明らか。
ただ、これほど大規模で精密な攻撃魔法は
並のエルフが扱えるものではない。
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
通商破壊とは、食料や武器の補給を断つために、補給路を襲う事をいう。
つまり魔物の軍勢は本格的な戦争行動を行っていて
ファールウィンドは事実上、戦時下にあるということになる。
ルティ
ルティ
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
ルティが礼を述べ、リョウは爽やかな笑みを返す。
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
エルフの少女
エルフの少女
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
メルティは微笑み、リョウは困った顔をする。
エルフの少女
エルフの少女
エルフの少女
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
ふたりから向けられた言葉に、戸惑う。
少なくとも、手を抜いているつもりはなかった。
それなのに「本気を出していない」とは、どういう意味なのか？
ルティ
ルティ
ルティが不自然に慌てながら、割って入る。
ふたりに言わせれば、ルティも「本気を出していない」ということになるが
そんなはずはないだろう。
ルティ
ルティ
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
ニンゲンの青年
街道を塞ぐワイバーンの死体を、そのままにはできない。
使える部位は剥ぎ取り、討伐の証にして
肉は食用として、載せられる分だけ荷台に載せる。
残った部分は、道の脇に固めて放置する事になった。
本当なら、埋めるのが望ましいが
35匹のワイバーンを埋めるだけの穴を、用意する気力はなかった。
ルティ
耳元で、密かに紡がれる言葉
ルティ
ルティ
そう告げるルティの顔色は、少し、青ざめて見えた。
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