東西戦争

俺は目の前の北海道の圧に、思わず後退りそうになったが、踏ん張って我慢した

俺は、北海道に勝とうだなんて考えてない

俺じゃ北海道には勝てない、負けそうになったら逃げるつもりではある

これはあくまで時間稼ぎであって、相手を減らそうとしているわけではない

もちろん減らせたらラッキーではあるのだが、それは無理前提で考えている

減らすと言っても、殺すわけでは無い

戦闘不能にするだけ

そう言って銃を構えたのを見て、俺は素早く身を屈めた

そして、銃弾は俺の背中の上を抜けて奥の木の枝に当たった

弾が当たった木の枝が音を立てて折れた

褒めてないなんてことは分かっていた

でも、特に意図はなく、いつものノリで言っただけ

北海道が銃を使わずに足元に落ちていた大きめの石を投げて来る

北海道は腕力が凄まじいため、あんな北海道が投げた大きい石なんかに当たったら、骨が折れるかもしれない

それ程北海道の力が強いことは知っていた

北海道はポーカーフェイスを崩さなかった

でも、その表情は俺の知っている北海道の表情とは違っていた

俺には、目の前の獲物を殺そうとする、"狂人"に見えた

俺は恐怖を押し殺して、北海道に石を精いっぱい投げ返した

正直、さっきから無茶苦茶な質問ばっかりされて疲れて来ていた

大阪が何処にいるか知ってる？とか、俺ら何したら良いと思う？とか

まるでうちへの質問が宮城と青森の暇つぶしの様になっていた

うちの余裕そうな様子にムカついたのか、違和感を感じたのか、二人は顔を顰めた

拘束されてて、いわば監禁状態の奴がこんなに余裕そうやったら、そりゃ違和感覚えるよな

まぁ、うちも無計画なわけではないんやわ

こうやって捕まった時のための作戦だって、近畿全員で考えた

だから、もう少しで来る

日本最大の湖を持つ、"あいつ"が

バリーン！！

やっぱり、まともに扉から入られへんのやね

開かへんかったらぶち破る、そういう奴

相変わらず、煽るのが上手な奴…とか考えていたら、"そいつ"が、縄と首の鎖を解いてくれた

そう言って、滋賀はニヤリと笑みを浮かべた後、俺の手を握って立たせてくれた

俺より身長低い癖に、力は強い、よく分からない

でも、そういうところが良いところなんだと思った

青森と宮城はニヤリと笑った

でも、それだけで怯むほど弱くない

そして、うちらは戦うために、外に出ようと玄関に走った