幽月 楓
夢を見ていた、古い夢を
父親
パパと遊ぶか?
幽月 楓
あそぶ〜!
「私の幼少期の記憶かぁ…」
幽月 楓
父親
行っちゃダメだぞ〜!
この頃は楽しかった… 全部がキラキラしてたな
幽月楓の幼少期。 その記憶を眺めているのは 現在の姿の楓だ。
幽月 楓
ままともあそびたいよ…
父親
だから今日はパパとだ!
幽月 楓
お母さんはいつも居なかった… 思えば、それは多分全国で悪霊退治の旅 でもしてたんだろうな
幽月 宵
父親
ほら、
いないいない…ばぁ!
幽月 宵
幽月 楓
いつもあえないの?
楓の母
いつもそばに居られなくて
私の力が必要で困ってる人
が居るから、私は
おうちに居られないの。
幽月 楓
ままのおしごとは
ひとだすけ?
楓の母
わるーいお化けから
皆を守るお仕事なの。
幽月 楓
ひとだすけしたい!
ままのおてつだいする!
おばけやっつける!
幽月 楓
楓の母
母は少し沈黙し、悲しそうな顔をするが、 すぐに歯を見せ笑顔になった
楓の母
なったらママのお手伝い
してもらおうかな!
幽月 楓
おかあさんもいっしょ!)
幽月 楓
うれしいなぁ)
楓は1番窓側の席で、 通路側から見て父母楓の順番。
久しぶりに会えた母との 会話や一緒に食べる食事や景色を楽しんだ
「あぁ…嫌だなぁ…」
声を震わせ、唇を噛み、楓は呟いた
楓はこの幸せな時間の結末と結果を 知っている
もう止めようも変えようもない過去
自分の1番深い闇を幾度も見せられるのは 堪えられないほどの苦痛だった
この幸せな時間が続けばいいのに。 夢の中で唇を噛み、何度そう思ったか 分からない
楓の母
幽月 楓
きずだらけ…
幽月 楓
普通は静かなはずの新幹線全体から 響く、金属が触れ合う鈍い巨大な音
それは幼少の子供にも分かる、 明らかな異変だ
楓の母
ママと逃げるよ!
楓の母
持って!さあいくよ!
扉を開け、後方車両へと急ぐ。 そして1番後ろの車両へ着いてしまった
もう後がない。
楓の母
お母さんがこんな事に
巻き込んじゃって。
本当にごめんなさい
幽月 楓
楓の母
離れていても…ずっと
そばに居るから。
楓と宵を強く抱き締め、 母は前方車両へ駆けて行った
新幹線の脱線・横転事故 乗客数1112名中、生存者2名の大惨事
乗客数1112名中、生存者2名の大惨事
「父と母」として戻ってきたのは DNA鑑定でようやく本人と確認できた 「顎の骨」のみだった
あの時、楓が頭を強く打って得たのは 幽月一族が代々受け継ぐ、 強力な霊視と霊術の才
母さんと父さんを殺したあの物の怪 あいつをこの手で葬り去れるならば
私はこの魂をも、喜んで悪魔に差し出そう
カエデ
夢から覚め、病院のベッドで目覚める
背中が汗で濡れている。 あの夢にうなされていたらしい
玉宮燈子
したのかい…!?
横を見ると、燈子ばあが居た
カエデ
莉子
心配したんだから…!
カエデ
心配する事ないのに…
って
二人とも、目を赤く腫らしている
莉子
心配してたんだよ!?
莉子
どこか行っちゃうの!
カエデ
ごめんなさい。
私どれくらい寝てたの?
莉子
カエデ
って…痛たた…
大声出し過ぎた…
莉子
ずっと
見守ってたんだから…!
医者
のですが、楓さん!
医者
医者
ふさがってますし、
朝になったら退院して
問題無いですよ
莉子
幽月…!
玉宮燈子
もう1日入院させた方が
いいんじゃ…
カエデ
朝になったら退院したい
………
玉宮燈子
無茶だけはしちゃいけんよ