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藤澤涼架side
おじさん.
藤澤.
若井と別れた後、おじさんがそう聞くので答える
おじさんがへぇと呟く
おじさんの息がかかるたびにお酒のような匂いが僕の鼻を刺激した
こういう匂いは好きではない
なんならおじさんと行為をすることだって好きじゃない
でも、何故かやってしまう
おじさんと腕を組んで、ホテルかどこかで行為をして帰る
それだけの関係をもう何人と持ってしまっただろうか。
きっとおじさんは僕のことをなんとも思っていない
ただ自分の欲を満たしたいがために僕を使って処理するだけ。
でも、やってる間はおじさんは僕のことを認めてくれる
「ここにいていい」って言って
腰に手を回して、深い深いキスをして。
それだけで、ちょっと心が満たされるんだ
たとえおじさんの言葉が上辺だけのものであっても。
おじさん.
藤澤.
おじさん.
そう言いながらおじさんは僕の手を引いて歩き始める
人がいない怪しい路地に入っていく
どうやらこのおじさんは路地でやるタイプらしい。
街灯もない薄暗い路地で僕はおじさんに壁に押し付けられる
おじさんの口が近づいてくる
唇が触れる瞬間、おじさんの息がかかった
クラクラしたお酒の匂いに混じっておじさんの舌が僕の口を割って入ってくる
舌が、唾液が、目もくらむようなお酒の匂いと混じり合う
僕は、それら全てを静かに受け入れた
おじさん.
藤澤.
おじさんに聞かれて返事をする。
おじさんは満足したように笑った
違う
本当は痛くて苦しくて辛かった
息がかかるたび、舌が入るたび、おじさんが僕に入ってくるたび
逃げてしまいそうになる
でも逃げなかったのはそんな苦しい状況の中でも聞こえてくる 「ここにいていいよ」 っていう言葉のため
おじさんでもいいから、
多少の犠牲は払うから
気持ち悪くても、苦しくてもいいから
一時的でもいいから
心を満たしてほしい
おまけじゃないって、僕を認めてほしい
心に空いた穴をふさいでほしいの
誰か一人の人間が、僕だけを見てくれている
他の誰でもない僕を選んで、僕を満たしてくれる
その事実が、ただ嬉しかった
でも、いつまでこんなことやってるんだろう
脱がされた服を履いている時、ズボンのポケットの携帯が震える音がした
画面に映し出されている文字は、
『若井滉斗』
迷わず拒否の赤いボタンを押す
当分、元貴とも若井とも喋りたくなかった
僕より求められている人に僕の気持ちなんてわからない
僕はおじさんに別れを告げる
おじさんを引き止めることなく手を振った
引き止められないことがなんとなく悲しかった
僕はまた騒がしい街でおじさんを見つけに行く
こんにちは✨
500いいねありがとうございます 感想も嬉しいです
次は若井さんサイドです 楽しみにしてくれると嬉しいです
それでは、また
コメント
1件
やばい、、💛ちゃんの心情の描き方好きすぎる、、、 認めてくれないの悲しいなぁ、、、 ただ、いてもいいって言ってもらいために自分を犠牲にしちゃうの辛いです…まじでこの話好きだああああ