怪盗I

※キャラ崩壊注意⚠️ ※いむくんほとんど喋りません ※配役はルーレットで決めました

張り上げられる声に、僕は顔を上げた。目の前の舞台には、

赤いタキシードを身に纏った若い男性が立っている。

彼の言葉に呼応し、ライトが動き音楽が鳴り響く。

周囲の貴族たちも、その言葉に拍手を贈っていた。

カツンと踵を鳴らし、更に彼は続ける。

ブザーが鳴り、バチンという音と共にライトと照明が一気に消えた。

途端にどよめきが上がる。

響き渡る笑い声。

1部の観客がざわめき始めると、突然誰かに押し退けられる。

張り上げられる男性の声。

復旧したスポットライトが舞台を照らす。

すると、先程までそこにあったはずの展示品のティアラが、

影も形もなくすっかり消えていた。

途端に1部の観客がバタバタと駆け回る。

気づけばついている照明。

まるで映画のような展開に、貴族は我先にと逃げていく。

警察は貴族の波を掻き分けながら彼を追った。

「退け！」という声と共に、警察の1人が僕にぶつかっていった。

僕はバランスを崩し床へと落ちていく。

衝撃を覚悟した瞬間、ふわりと体が浮いた。

視線を巡らせれば、彼がティアラを片手にほくそ笑んでいる。

彼は傍にあった花瓶からバラを一輪引き抜くと、僕の胸元に差し込む。

その停止した瞬間を逃がすまいと、警察が向かってきた

思わず僕が言うよりも早く、彼は僕を支えたまま見事なワルツターン

を描きくるりと回転する。そして彼は僕に囁いた。

そう言って彼は風のようにステンドグラスを割り飛び降りて行った。

バタバタと会場を抜ける警察。

気づけば取り残されている僕に、1人の男性が歩み寄った。

そっと僕に寄り添う男性の横で、僕は胸元のバラを見ていた。

よく見ると、バラの花弁の中に小さな紙切れが挟まれている。

花弁を散らさないように注意して取り出すと、

折りたたまれたカードのようなものが現れた。

僕がそれを開いた瞬間、後ろにいた男性が声を上げる。

そこにあった言葉は短く、しかし確実に僕の胸を踊ら……せる？