いつも通り、講義を終えて、
いつも通り、帰路について、
いつも通り、家に帰ってきた。
香音
(今日は親子丼でも食べようかな〜)
とか、他愛もないことを考えながら。
だから、当たり前のように、 いつも通り、今日が終わると思っていた。
香音
…え?
香音
…何…?コレ…
僕の部屋のドアにもたれかかってる少年。
ちなみに、親戚が大家のアパートに 特別に住まわしてもらっている。
香音
(…汗だくだし、目開いてないし、)
香音
(もしかして…)
香音
(死んでる?)
不謹慎ながら、少しわくわくしている自分がいる。
香音
(だめだめ、ちゃんと生きてるか確認しないと。)
香音
おーい、少年、生きてる〜?
肩をゆさゆさと揺らしながら声をかけてみる。
すると、ゆっくりと開いた瞼の隙間から、
虚ろな藍色の瞳がこちらを覗いていた。
香音
(…珍しい色だなぁ…)
少年
…ッん…?母…さん…?
香音
(誰が母さんだ)
香音
(普通、僕見て言うなら、「父さん」じゃないの?)
香音
(…いや、どっちでもないけどね!?)
少年
おかえりぃ…
へらっと笑って立ちあがる少年。
…正確には、立ちあがろうとした。
左右にふらつき、そのまま欄干に倒れ込んだのだ。
一応受け止めようとはしたけど、 その努力も虚しく、間に合わなかった。
ゴツンッ!と、鈍い音がなる。
香音
うわぁ!?だ、大丈夫…?
頭をぶつけて再度気を失った少年。
いかにも「ばたんきゅー」という感じだ。
ぶつけたところが赤くなっていて、痛々しい。
香音
(ていうか…顔全体赤くなってない?)
意識が戻る前までも赤かったので、すごく今更だが。
異変を感じ、少し顔を触ってみる。
香音
熱っ!?
香音
(これ…もしかしなくても熱中症じゃ…?)
またまた不謹慎ながら、少し高鳴る胸を押さえ、
苦笑いに近いような顔で立ち上がり、 再度少年の顔を確認した。
香音
(さて…)
香音
(コレ、どうしよう…?)