斧使い
湖に斧を落としてしまった……
斧使い
……!?
斧使い
湖の中から、何かが――
精霊
旅人よ
精霊
あなたが落としたのは、この金の斧ですか?
精霊
それとも、この銀の斧ですか?
斧使い
湖の……精霊様?
斧使い
いえ、どちらも俺の斧ではないです
精霊
それでは、この普通の斧ですか?
斧使い
……
斧使い
いえ、違います
精霊
えっ
斧使い
俺が落としたのは
斧使い
オリハルコンの斧です
精霊
えっ
斧使い
湖の底に、ありませんでしたか?
精霊
ちょ、ちょっと待っててください!
斧使い
……潜っていってしまった
斧使い
それにしても、金の斧と銀の斧を置いていったけど
斧使い
……俺のこと、信用しすぎじゃない?
精霊
わ、忘れ物です!
斧使い
うわっ、急に現れないでください!
精霊
はぁ、はぁ
精霊
……ああ、まだいらっしゃいましたか
精霊
金の斧も銀の斧も盗まないとは、あなたは正直者ですね
斧使い
はぁ
精霊
正直者のあなたには、両方とも差し上げましょう
斧使い
えっ
精霊
それではこれで……
斧使い
いやいやいや!
精霊
あ、すいません
精霊
こちらの普通の斧も差し上げましょう
精霊
それではこれで……
斧使い
いやいやいや!?
精霊
どうかされましたか?
斧使い
俺の斧は!?
精霊
その3つじゃ、ダメですか?
斧使い
ダメですよ!?
精霊
あなたは欲張りですね……
斧使い
いやいやいや!!
斧使い
俺が落としたのは違う斧!!
斧使い
オリハルコンの斧!!
精霊
あっ
精霊
そうでした、そうでした
精霊
金の斧と銀の斧を忘れたので、慌てて戻ってきたのでした
斧使い
この斧は全部お返しするので
斧使い
俺の斧を返してください
斧使い
自分の斧以外には、興味がないです
精霊
分かりました
精霊
それでは、少々お待ちください
斧使い
はい、よろしくお願いします
斧使い
……よし、金の斧と銀の斧も忘れずに持っていったな
斧使い
あれ?
斧使い
普通の斧だけ置いていってるな
斧使い
まぁそこら辺に売っていそうな斧だし、後で返せばいいか
精霊
旅人よ
精霊
あなたが落としたのは、この金の斧ですか?
精霊
それとも、この銀の斧ですか?
斧使い
俺が落としたのは、普通の斧です
精霊
あなたは正直者ですね
斧使い
そういう精霊様は
斧使い
こんな夜中まで戻って来ないで、何をしていたんですか?
精霊
はぅ
精霊
……
精霊
金の斧と銀の斧を差し上げますので
精霊
今回はそれで手を打ちませんか?
斧使い
ダメですよ!
斧使い
俺はあの斧を使って、魔王を倒さないといけないんです!
精霊
ふむ……
精霊
確かにあの斧は強そうですね
斧使い
ああ
斧使い
ちゃんと見つけてはくれたんですね
斧使い
それでは返してください
精霊
それがですね
精霊
持てないのですよ
斧使い
え?
精霊
あの斧、火属性ですよね?
斧使い
いや、聖属性のはずですが
精霊
でも、私が持つと
精霊
じゅわわわわっ
精霊
って、めちゃくちゃ熱いのです
斧使い
貴様、魔物だなッ!!
精霊
違いますよっ!!
精霊
とにかく水属性の私と相性が悪いので
精霊
ここまで持って来れないのです
精霊
なので諦めてください☆
斧使い
可愛く言ってもダメですっ!
精霊
でも、私にはどうしようもないので……
斧使い
それでは俺を、湖の底まで連れていってください
斧使い
自分で持ち帰りますので
精霊
それは出来ません
斧使い
精霊様の力を使っても、無理だということですか?
精霊
はい
精霊
ちょっと今、散らかっていまして
斧使い
そんなの気にしませんよ!!
精霊
私が気にするのですっ!
精霊
無神経な人ですねっ!
斧使い
えぇ……
斧使い
それじゃ、目を閉じていますので
斧使い
そこまで誘導して頂ければ……
精霊
そう言って、こっそり目を開けるのでしょう!?
精霊
男の人って、みんなそうなのです!
斧使い
……何か嫌な経験でも?
精霊
漫画で読みました!
斧使い
精霊様も、漫画なんて読むんですね……
精霊
乙女のたしなみですよ☆
斧使い
失礼ですが、おいくつで?
精霊
精霊ぱーんち!!
斧使い
ぐはっ!?
精霊
乙女に年齢を聞くだなんて!
精霊
デリカシーの欠片もない人ですね!
斧使い
……なるほど、一理あります
斧使い
しかし、それはそれとして
斧使い
俺の斧を返してください
精霊
だから、無理なのです!
斧使い
何とか解決策を考えましょうよ
精霊
別に、私は返さないでも困らないし
精霊
金の斧と銀の斧で、手を打ちましょう?
精霊
今なら普通の斧もお付けしますよ?
斧使い
オマケにまったく魅力を感じられない……
斧使い
っと、それは置いておいて
斧使い
オリハルコンの価値は金や銀よりもずっと高いので
斧使い
諦めることなんて出来ません
精霊
まったく折れない人ですね……
精霊
私は最終手段として
精霊
全部の斧を持ち去って、もう姿を現さないことだって出来るのです
精霊
そうしたらあなたの手元には何も残りません
精霊
それが今なら、金と銀と普通の、3つの斧が残るのですよ?
精霊
1つが3つに!
精霊
すっごくお得じゃないですか☆
斧使い
なるほど
斧使い
精霊様は、最終手段を持ち出してくるわけですね
精霊
ふふふっ
斧使い
ところで俺の仲間には
斧使い
火の魔法が得意な魔法使いがいるんです
精霊
はい
斧使い
弾数に限りはありますが、一面を焦土に変えるほどの魔法も使います
精霊
えっ
斧使い
少し時間は掛かりますけど
斧使い
この湖の水も、全部蒸発させることが出来るでしょう
精霊
やめてください
精霊
人の家を何だと思ってるのですか!
斧使い
それなら、俺の斧を返してください!
精霊
むぅ……
精霊
分かりました、できるだけ頑張ります
精霊
時間は掛かるので、それは覚悟しておいてくださいね
斧使い
分かりました、眠って待ってます
精霊
ぐぬぬ……
精霊
ほら、起きてください
斧使い
お……
斧使い
もう朝ですか、おはようございます
精霊
呑気なものですね
精霊
私にとっては地獄のような一晩でしたのに
斧使い
え?
精霊
はい、この斧ですよね?
斧使い
おお、そうです!
斧使い
俺の、オリハルコンの斧!!
精霊
まったく、なんて斧ですか
精霊
火属性なのは良いとして、柄まで熱いだなんて
斧使い
聖属性のはずですが、確かに熱いんですよね
斧使い
俺はもう慣れちゃいましたけど
精霊
あなたの分厚い皮と一緒にしないでください
精霊
私の手は繊細なんですから
斧使い
……あ
斧使い
両手、ヤケドしちゃってますね
斧使い
すいません、無理をさせてしまって
精霊
まったくですよ!
精霊
大体あなたが勝手に落としただけなのに
精霊
何で私がこんな目に遭わないといけないのですか!
斧使い
確かに……
斧使い
今までの失礼、謝罪いたします
精霊
……突然、そんな殊勝にされても困るのですが
斧使い
回復薬なら持っていますが、効きそうですか?
精霊
精霊には効きませんね
精霊
時間を掛けて、ゆっくり治すしかないです
斧使い
なおさら申し訳ない……
斧使い
このあと、俺は魔王を倒しに行かないといけないんです
精霊
ああ、言ってましたね
精霊
この辺りは私が護っているので大丈夫ですが
精霊
世界的には大変みたいですし
斧使い
えっ
斧使い
精霊様って、結構すごい方だったんですか!?
精霊
ふふふっ
斧使い
もしよろしければ
斧使い
魔王討伐の旅に、力を貸してください!!
精霊
えっ
斧使い
失敗できない旅なんです
斧使い
精霊様がいるなら、きっと心強いので
斧使い
どうかお願いします!!
精霊
ふむ……
精霊
ずっとこの湖にいるのも飽きましたし
精霊
それも良いかもしれませんね
斧使い
本当ですか!?
精霊
旅が終わったら、また別の湖に連れていって頂ければ
斧使い
この湖ではダメなんですか?
精霊
だって散らかってるし……
精霊
もとい
精霊
心機一転、ってやつですよ
斧使い
はぁ
斧使い
それで良いなら、お願いしたいです
精霊
ただ、私は自由に動きまわれないので
精霊
移動するときは何か宝石に引っ越さないといけません
斧使い
なるほど
斧使い
それならちょうど良い宝石があるので大丈夫です
精霊
本当ですか?
精霊
それでは早速、移動することにしましょう
精霊
こちらの準備は大丈夫です!
精霊
宝石を掲げて、「我、招来の儀を執り行う」と言ってください
斧使い
分かりました
精霊
ちなみに、どんな宝石なのでしょう
精霊
わくわく
精霊
……って、オリハルコンの斧を掲げて……?
斧使い
ほら、ここの
斧使い
斧の刃の間に、大きな宝石があるでしょう?
斧使い
こちらに入って頂きます
精霊
えっ
精霊
ちょっと、その斧は火属性――
斧使い
我、招来の儀を執り行う!!
精霊
きゃ……
精霊
きゃああああ――――
斧使い
うおっ、強い光が……!
斧使い
…………
斧使い
……収まった
斧使い
これで大丈夫なのかな?
精霊
……
精霊
熱いいいいいいいいいいいいいっ!!!!
斧使い
えっ
精霊
あなたバカ?
精霊
おバカなの!?
精霊
何で水属性の私を、火属性の武器に入れるのおおおおおっ!!!!
斧使い
……
斧使い
すいません
斧使い
……
斧使い
あわよくば、火と水の複合属性になったりしません?
精霊
そんなの、なるわけが――
精霊
……
精霊
あれ、なってる?
斧使い
おお!
斧使い
これは魔王討伐の強い武器になります!!
精霊
いやいやいや!
精霊
私、ずっと熱いままだから!!
斧使い
世界の平和のためです
精霊
知るかーっ!!
斧使い
お詫びに
斧使い
世界中の冷たいスイーツを食べてまわることにしましょう!
精霊
えっ
精霊
……魅力的ですね
精霊
でも、ずっと熱いのは嫌だから
精霊
それなら斧の外で過ごしますよ
斧使い
ああ、外には出ていられるんですね
斧使い
それじゃ、近くの街で服を買いましょう
精霊
服?
斧使い
精霊様は、いかにも精霊っぽい服ですから
斧使い
もう少し、冒険者に見える服にしましょう
精霊
魅力的な提案ですね
精霊
ではせいぜい、あなたには貢いでもらうことにしましょう
斧使い
少し怖いですが、分かりました
斧使い
それでは、そろそろ行きますか
精霊
はい
精霊
しばらくの間、よろしくお願いしますね






