屋上の扉の先に、彼女はいた。 特別な日だというのに、彼女はひとりで弁当を食べていた。
少年
誕生日おめでとう
少女
え?
あー、そういえば今日私の誕生日かぁ
ありがと
あー、そういえば今日私の誕生日かぁ
ありがと
少年
え?忘れてたの?てか、嬉しくないの?
少女
ん、まあね
少年
まあって…
呆れて言葉も出ないでいると、彼女はそっと零した。
少女
はぁ、歳、とりたくないなぁ
少年
え?
思わず声が出た。 しかし、彼女は気にする様子もなく説明する。
少女
いやさぁ、私、年取るの嫌なんだよね
少年
なんで?
少女
だって衰えたものに価値なんてないでしょ
少年
そんなことない
少女
綺麗事はいいよ
「綺麗事」 その言葉に言い返せないでいると、彼女はからかうように笑った。
少女
ふふっ、私はねぇ、15歳くらいでずっと止まってたいんだ
少年
なんで…
少女
んーと、ドライフラワーってわかるかな?…あんな風になりたい。一番美しい状態で、永遠に…みたいな?笑
そこで思わず言い返す
少年
でもそれだって永遠じゃない
いくら加工したって、いつか色褪せて朽ち果てる。そして忘れられていくんだ
いくら加工したって、いつか色褪せて朽ち果てる。そして忘れられていくんだ
少女
でも、そうなりたい。かな
少年
今の本気?
少女
さぁ?どうだろね
そう笑った彼女の笑顔は、これまでにないくらい綺麗なものだった。
少年
(嗚呼、この美しい笑顔なら、永遠であってもいいかもしれない。)