愛を知らない君へ

多分楠木を知ったのは

1年の秋頃

俺はヤクザの息子という噂は

とっくに広まってた

だから友達は一人もいなかった

俺は今雑用を頼まれてる

と言っても資料室までこれを運ぶだけ

頼む先生も怯えてたけど

なんで俺になんか…

資料室に入る時

誰かにぶつかった

最初の印象は

髪が長い人

次の印象は…

また始まった

正直慣れてるから

なんとも思わないけど

あいつは…変なやつだな

多分その時には

意識し始めてたのかもしれない

俺の親父は

あおば組の組長

ヤクザだった

別に家族仲が悪い訳じゃない

姉貴も

両親とも別に話す

でも俺は

自分が若頭なんてことは

到底受け入れられなかった

だから距離を置いてた

今まで色々なことができなかった

ヤクザの息子というだけで

小学生にいた友達も

全員が離れていった

そんな時に

このコテージを見つけた

森の奥にあるため

人の目につかない

いいとこを見つけたと思い

そこで寝ていた

ある時

寝室にいると

物音がした

そして見つけたのが

楠木だった

慌ててる楠木は

なんていうか

可愛かった

月日が流れるうちに

気づいた

自分が

楠木のことが好きだって

でもその気持ちは

誰かに言うことも

本人に伝えることもない

自分は普通に生きれないことが

わかっているから

お金が盗まれたとき

1番に疑われたが

楠木は庇ってくれた

もしかしたら楠木も俺のことが…

そんなことも考えた

でも

いつも楠木に付きまとってる

渋谷恭平だ

こいつは

社長の息子

俺とは正反対の人間

だけど

一つだけ似てるとこがある

楠木が好きってこと

は？

なんでこいつが知ってんだよ

いや…ハッタリかもしれない

あまり食いつくのはやめよう

こいつは

そういうやつだ

自分のためなら

何でもする

告白すんのかこいつ

まぁ俺には関係の無いことだけど

将来…な

楠木が渋谷に今日告白されてた

知ってたけど

その場にはいたくなかった

なんとも…

思うに決まってる

俺の横で

笑って欲しい

渋谷の横じゃなくて

そう言おうとしたけど

それは叶わない

俺はそう答えた

でもその言葉を発してすぐに

後悔した

なぜなら傷ついた

楠木の顔が目に入ったから

そう言い残して

楠木は帰った

俺は…追いかけられなかった