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サトコとの戦いから数日経った今日まで、他にも能力を失ったものは誰もいなかった。

ワタルとカナの2人以外、能力を失ったことにより目が見えなくなったという事実は誰1人として知らなかった。

ワタル

なぁ、カナ

カナ

ん?なぁに?

ワタル

サトコの件。お前はどう思う?

カナ

そのこと、なんだけどさ

彼女は一呼吸置いて再び口を開く。

カナ

私たちが普段話すために使っている口、見ている目、聞いている耳

カナ

それらが全て能力に含まれるとしたらどうなるのかな?

ワタル

確かに、能力を失うとは伝えられたが、備わった特殊能力を失うとは一言も言ってない

ワタル

人間に備わっている機能を能力として捉え、それを失う…

カナ

…それだと辻褄が合うよね

ワタル

ワタル

なんだよそれ…っ!

カナ

ワタル…

ワタル

っていうのは無しだ!

カナ

えっ!?どうしたのいきなり?

ワタル

要は負けなきゃいいんだろ?どうせ他の人達も同じように使えない能力なはずだ、負けるはずがないさ

カナ

そっか…、うん!そうだよね!

しんみりとしていた空気が、ワタルの言葉で再び元の明るい空気へと戻り始める。

カナ

さてと!それじゃあ私はまだノルマ達成してないから早く行かなきゃ!

カナ

ワタルも頑張ってね〜!

カナはそう言って走り去っていった。

口では気にしないと言っていたワタルも、どうか負けないでほしい、そう願っていた。

ワタル

さてと、俺も相手を探さなきゃだな…

ワタルも独り言をつぶやき歩き始める。

ユウ

おっとそこの名も分からぬ高校生!

ユウ

さっそくだがこっちはノルマ達成出来てなくて困ってんだぁ!

ユウ

戦ってもらうぜぇぇ??

歩き始めて13歩目の事だった、あまりにも早く見つかり拍子抜けしてしまう。

ワタル

おぉ…、戦うのは別にいいよ?

ユウ

っし!じゃあ早速おっぱじめようぜ!

彼はそう言い放ち、そして目を瞑る。

ワタル

…は?

ユウ

その場に沈黙の空気が流れた…

全く攻撃をしてこない相手に何かをするのも気が引けると思ったワタルは、彼が目を瞑るのが終わるのを待っていた。

そして3分後

ユウ

俺は…強い!!

ワタル

うぉ!?ようやく終わったか…

ユウ

待たせたなぁ少年!

ユウ

その粋な計らい感謝する!

ユウ

お礼に教えてあげよう!!

ユウ

私の能力!それはその場で目を瞑る事で夢を見ることができる力だ!

ワタル

じゃあさっきまで夢みてたのかよ!!

ユウ

いや待つんだ少年!プラシーボ効果って知っているか?

ワタル

あぁ、ただの砂糖とかを、これは病気に効く薬だって言われて飲まされたら本当に病気が治ったとかいうあれか

ユウ

その通り!つまり本来力を持たないものが思い込みの力により力を持つことを言うのだ!!

ワタル

は、はぁ…

勢いに押され、ついていけなくなっていた。

ユウ

そして!私の見ていた夢!!

ユウ

それは、私自身が強くなる夢だ!!

ワタル

なんて夢みてんだよ…

ユウ

だがそれにより今私は私自身が強いと思い込んでいる!

ユウ

だから私は強いのだ!!!

ワタル

思い込んでるって言っちゃったし自分で強いとか言っちゃったよ…

ユウ

信じていないか…、ならばこの速さを!

ユウ

見るがいい!!

只今の場所は公園、風で砂が舞う場

砂を避けるために手で目を防ぐワタル、彼の耳に聞こえてきた音は…

シュッ!シュッ!

ワタル

これは、風を切る音!?

自分の前方からしか聞こえてこないわけでは無い。

右、左、またまた後ろ、四方八方から聞こえてくる風を切る音。

ワタル

一体どうなってるんだ…?

目を覆っていた手を、恐る恐る開いて見てみると…

ユウ

シュッ!シュッ!

ワタル

ユウ

ヒューッ!シュシュシュッ!!!

ワタル

しかも足は対して速いわけじゃないのね…

見えてきたのは風を切る音を自分で言いながらワタルの周りを回る彼の姿だった。

ユウ

どうだ!あまりの速さに感嘆のため息を出してるではないか!!

ワタル

呆れてため息出してんだよ!

…とツッコミを入れたところで、ワタルに妙案が思いつく。

ワタル

プラシーボ効果、反対…

ユウ

ん?何か言ったか?

ワタル

いや、なんでも

ワタル

ところで君、名前はなんていうんだい?

ここからは、ワタルの殻を破ったハッタリの始まりだった。

ユウ

俺?ユウだが…

ワタル

そうか、ユウ君か…

ワタル

ところで、私の能力をまだ教えてなかったね

ワタル

私の能力、それは

ユウ

っ!石ころを、出した…

ワタル

おっと、これはただの石じゃあない

ワタル

これは、ぶつける事で相手を弱体化させる石なんだよ…

ユウ

相手を、弱体化!?

ワタル

そう、それを君にぶつけると、どうなると思う?

ユウ

ひっ…!考えたくもない…

ワタル

はい拾った〜!さぁ10数えようか

ワタル

10!

ユウ

嫌だ、負けたくない…!

ワタル

9!

ユウ

何故だ!何故足が動かない!

ワタル

8!

ユウ

早く…!逃げなきゃいけないのに!

ワタル

7!

ワタル

それで言い切る前にわぁぁぁぁ!!!

ユウ

うわぁぁぁぁぁぁ!!!

石をぶつける事なく脅かす事で気絶させたワタル。

やり方としては汚いが、これも一つの勝ち方としては悪いとは言い切れないのだろう。

ワタル

よし、勝ったか…

ワタル

プラシーボの反対、ノーシーボ効果

ワタル

恐るべし…

今後、同じような勝ち方では二度と勝ちたくない、そう思ったワタルなのだった。

無能力者達の日常

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