短編__『二人きりの放課後.』 StaRt
大森元貴side
いつも通りイヤホンを片耳に嵌めたまま
教室に入ると若井が女子に囲まれていた
若井は僕の友達
よく一緒に帰るし、親同士も仲がいい
でも若井は目立たない僕と違って
すごくよくモテるのだ
毎日のように愛の告白を受け
毎日のように遊びに誘われている
他校でも若井目当てに転校してくる人がいるくらいだ
バレンタインの日なんて若井にチョコを渡そうと長い列ができる
数えきれないほどのチョコを抱える若井を
僕は何度見ただろうか
でもちゃんとお返しするからモテるんだろうなと思う
でも若井は男子に好かれていないわけではない
女子にモテていることをひけらかずに
昼休みはサッカーに明け暮れる若井は
そんな彼は当然男子にも好かれていた
顔良し、性格良し、頭は良くないけど、運動神経良し
そんな若井には、
『ファンクラブ』がある
このクラスは僕以外の全員が入っていて
毎日のように若井を追っかけ回している
時々他学年や他校の人もファンクラブに入っていると聞く
僕も色んな人から「入ろうよ」と誘われているけれど
僕はいまだに入っていない
そういうものには興味が無いから
教室に足を踏み入れると
女子の声が耳に大きく響く
そして男女数名と挨拶を交わしてから席に着く
必要なものを鞄から取り出して机に移す
そして読みかけの文庫本を手に取った
片方取っていたイヤホンを嵌めようとして、その時
Hrt.
Mtk.
若井は囲まれていてよく見えないであろう場所から
僕をめざとく見つけてこっちに駆け寄ってきた
その場に取り残されたファンクラブの視線が痛い
Hrt.
Mtk.
Hrt.
Mtk.
Hrt.
Mtk.
Hrt.
Mtk.
若井は僕の返事に笑うと
席にスキップで戻っていった
ーーー
そして一日が終わり、放課後の時間
ファンクラブの人さえも居なくなった学校を出て、
二人きりの放課後
若井と二人の帰り道は嫌いじゃない
明るくて元気な若井の声が耳に静かに響いて何となく落ち着くから
Mtk.
Hrt.
Mtk.
Hrt.
Mtk.
僕が揶揄うように口を開いて若井に笑いかけると
若井はあからさまに不機嫌な顔をして言った
Hrt.
Mtk.
若井、好きな人いたんだ
二人の間に沈黙が落ちる
夕陽に照らされた家の窓が金色に光る
なんとなく、胸が痛くなった
Hrt.
Hrt.
Mtk.
Hrt.
Mtk.
Hrt.
若井は白い歯を見せて笑い、「でも、」と続けた
Hrt.
若井の頬がオレンジ色に染まる
きっと僕も頬もオレンジ色に染まっている
これなら多少赤くても、バレないよね
Mtk.
若井は吃驚したように立ち止まってこっちを見た
二人の間に沈黙が落ちた
Fin
こんにちは
短編集更新するの久しぶりですね 明日は『貴方にもう一度〜』を更新します
この作品も♡と💬よろしくお願いします
それではまた
コメント
8件
義理じゃなくて本命か友チョコってこと!?
え、好きちょっとその世界線行きたい
あっ…好きです(唐突な告白)終わり方好き過ぎ🥹夕焼けとかエモい…お願いだからその帰り道の途中に立っている電柱にしてくだせぇ…ごちそうさまでした😇