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最後の音が、ホールに落ちた。
跳ね返ってくる響きを聞きながら、 私はまだクラリネットを下ろせずにいる。
うまくいったかどうかは、 自分が一番わからない。
客席は遠くて、 照明が眩しくて、 誰がどんな顔をしているのかも見えない。
ただ、隣の音は聞こえた。
少し遅れて重なって、 私の音を支える音。
――この音で、終わるんだ。
そう思った瞬間、 胸の奥が、静かに鳴った。
結果が出る前の沈黙の中で、 私は息を吐く。
これが最後の大会だなんて、 まだ実感はない。
それでも、 この音楽室に戻れる日が もう多くないことだけは、 はっきりしていた。
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