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隼人

ごめん

隼人

俺 彼女いるから

奈緒

奈緒

奈緒

知ってるからー!!

知らないよ 彼女がいたなんて

奈緒

冗談冗談!
やだ〜、本気にした?

隼人

奈緒

なんかさー!

奈緒

雰囲気ロマンチックだから
告白するとしたら今かなって

奈緒

いや、
隼人だからとかじゃなくて!

奈緒

別に誰でも良かったわけで…

隼人

…あー

焦って弁解すると 自分の惨めさに 涙が出てきそうだった

奈緒

(恥ずかしい)

奈緒

(もう、帰りたい)

奈緒

はは…

奈緒

冗談でも…こんなにいい女を
振るなんて…ね…

隼人

まあ、ちょっとドキッとしたよ

奈緒

えっ…

隼人

はは、冗談冗談──

隼人

奈緒

(冗談でも やめてよ)

奈緒

(期待しちゃうから──)

泣いてしまった

振られても なんて言われても

絶対に泣きはしないって 決めてきたのに

奈緒

(ほんっとに)

奈緒

(恥ずかしくて死にそう…)

隼人

…泣くなよ

奈緒

…うん、ごめん

隼人

隼人

何をされても
彼女がいるから

隼人

奈緒とは付き合えない

奈緒

うん、分かってるよ…

奈緒

(そうだよ)

奈緒

(もういっそ、
そうやって突き放してよ)

隼人

けど…

隼人

まあ

隼人

俺のせいで
泣かせてしまったし

隼人

奈緒

(なに?)

奈緒

(何が言いたいの?)

隼人

えっと…友達としてだけど

隼人

今日の祭り、ふたりで──

隼人

行く…?

奈緒

え…?

奈緒

(私と隼人がお祭り?
2人きり?どうして?)

隼人

い、嫌だったら別に!

隼人

…ごめん

奈緒

…でも隼人、彼女いるんでしょ

奈緒

見つかったりしたら…

隼人

別にいいよ

隼人

友達といるだけだから
変じゃないでしょ?

奈緒

そ、っか…

奈緒

(友達…。そうだよね)

奈緒

(今までと変わらない関係なだけ)

奈緒

ありがとう…
私も行きたい

隼人

じゃあ、18時くらいに

奈緒

うん

奈緒

奈緒

うううぅぅぅう…!!!

奈緒

(どうしよ!?)

奈緒

(私は振られたのに、
隼人には彼女だっているのに、)

奈緒

(こんな…お祭りなんて
一緒に行っちゃっていいのかな)

奈緒

(結構一大イベントですよね!?)

奈緒

(花火だって上がるし…)

隼人

あ、奈緒!

奈緒

隼人

奈緒

(うわ、うわうわうわ)

奈緒

浴衣、すごく…カッコイイね

奈緒

(眩しすぎる…!!)

隼人

あはは、ありがと

隼人

奈緒は浴衣じゃないんだ?

奈緒

なんか…
隼人の彼女に申し訳ないし

隼人

気使わなくていいのに

隼人

友達だし、
やましいことなんてないよ

奈緒

いや、でもね…

奈緒

(隼人は良くても、
彼女さんが不安になるよ…)

奈緒

(浴衣着た男女なんて
恋人にしか見えないよ!)

隼人

ま、私服も新鮮でいいね

奈緒

…ありがと

そうやって 甘い言葉をかけるから

私はまた、勘違いしそうになる

隼人

あ、お腹は空いてる?

奈緒

うん。何も食べてなくて

隼人

俺も!

隼人

じゃあ、適当に屋台回ろう

やっぱり 浴衣で来ればよかった

人が多すぎて きっと見つからないはずだから

隼人

俺りんご飴なんて初めてかも

奈緒

え、うそ

隼人

ほんとほんと笑

隼人

今までも見たけど
買おうとは思わなかったし

奈緒

まぁたしかに笑

奈緒

結構 食べにくいもんね

隼人

うんうん

隼人

あ、でも いちご飴なら
食べたことあるんだよな

奈緒

あー!美味しいよね!

隼人

あっちは食べやすくていい

隼人

初めて食べたけど
りんご飴も美味しいな…

奈緒

お祭りの定番って感じだけど
実際あんまり食べないよね〜

隼人

変わった店の方が興味湧く…

奈緒

分かる〜!!

奈緒

でも、かき氷は外せないかな〜

隼人

チョコバナナとか?笑

奈緒

小学校の時は毎年食べてた笑

隼人

俺もだわ

奈緒

あ、噂をすればチョコバナナ

隼人

買う?

奈緒

いや、いいかな

奈緒

なんか水色とかピンクとかも
あるんだね?

奈緒

かわい〜〜

隼人

…やっぱ買いたい?笑

奈緒

いいですー!!

隼人

声でかいな笑

会話は弾むし すごくすごく楽しい

奈緒

(でも)

奈緒

(私は手が近付くたびに
ドキドキしたり)

奈緒

(目が合ったら緊張してしまう)

奈緒

(だけど隼人はいつも通り)

やっぱり 隼人は私を友達としか見ていない

空回り。すごく虚しい。

隼人

あ、時間!
もう花火じゃん!!

奈緒

え、どこか行く?

隼人

俺、いいとこ知ってんだよ

奈緒

え…?

ヒュー…

バンッ!

隼人

でっけー!
久しぶりに花火見た

奈緒

綺麗…

隼人

ここ思ったより人いないし

隼人

本当にいいスポットじゃん!

奈緒

少し歩くだけで

奈緒

こんな見えやすいところ
来れるなんて

隼人

な!

ヒュー…

バンッ

バンッ!

奈緒

(今、きっとみんな)

奈緒

(告白でもしてるんだろうな…)

隼人

すご…

奈緒

(あれ、また泣きそうだよ…)

奈緒

…っ

奈緒

(花火の音と切ない音楽で)

奈緒

(ああ、
このまま泣いていいかな)

奈緒

(花火の音でバレないよね)

どうせ私の事なんて 見てないんだから

隼人

……よ

奈緒

え?

隼人

泣くなよ

奈緒

あ…

隼人

なんで?楽しくなかった?

隼人

俺のせいで泣かせたから
祭りでは楽しませようって

隼人

結構、これでも俺
緊張して来てたんだけど…

奈緒

(そうなの?)

隼人

奈緒、花火だって
あんまり見てないし

奈緒

(え?)

奈緒

(隼人、
私の事も見てくれてたの?)

隼人

あ、もしかして花火嫌い?
音が怖いとか?

隼人

それだったらごめん…

奈緒

(待ってよ)

奈緒

(優しくしないでって)

奈緒

(期待しちゃダメ)

隼人

移動する?答えてくれ

奈緒

…大丈夫、だから

奈緒

私こそごめん

隼人

そう?ほんとに?

隼人

しんどいなら言って

奈緒

…うん

奈緒

(もし、あの私の告白が)

奈緒

(少しでも隼人の中に残ってて)

奈緒

(少しでも私を
意識してくれているなら)

花火の音に紛れて、もう一度だけ 告白してもいいんですか…?

ヒュー…

ヒュー…

バンッ!

バンッ!

奈緒

…ここまででいいから

奈緒

送ってくれてありがとう

隼人

うん

隼人

楽しかったよ。今日

奈緒

私もだよ

隼人

俺が急に言い出したのに
来てくれてありがとう

奈緒

ううん

奈緒

私もお祭りなんて久しぶりで
はしゃいじゃった

隼人

じゃあ

奈緒

うん、また

隼人

あ、家に着いたら連絡しろよ

奈緒

うん

奈緒

ホント、優しいよね…

隼人

女子が1人で帰るんだから

隼人

心配に決まってる

奈緒

…──よ

隼人

ん?

奈緒

…そーゆー優しいとこ!

奈緒

女子はすぐ惚れちゃうんだぞー!

隼人

なんだよ笑

隼人

急に笑

奈緒

じ、じゃあね!!!

奈緒

連絡するから!

隼人

おーー

隼人

隼人

隼人

なんだよ…

あの花火の音に紛れて

もう一度だけでも

本当に告白してしまえば 良かったのかもしれない

でも簡単に言えるほど 私にとって軽い言葉でもなく

''好きです'' の四文字が

やっぱり思い付きなんかじゃ 言えそうになくて

何度も告白して 隼人を困らせられないし

優しさに漬け込みすぎて 絶交されたらどうしようって

もう既に 振られた身なのに

不安で仕方ないんだ

奈緒

帰ったよ

奈緒

今日はありがとう
本当に楽しかったよ

隼人

おー!

隼人

おれもーー!

隼人

って…この会話、
分かれる時にもしたよな笑

奈緒

そうだね笑

隼人

あのさ

隼人

また来年も行かない?

奈緒

え?

奈緒

でも彼女いるんじゃん?

隼人

そうだけど

隼人

正直、話が合うのは奈緒だし

隼人

彼女のことは好きだけど
気使うのが疲れるから

奈緒

そうなの?

奈緒

奈緒

でもダメだよー?

奈緒

彼女といってあげなきゃ

隼人

そっか

隼人

なんかごめん

奈緒

あはは

''来年も'' なんて言葉

分かれる時に期待してた

でも、隼人には彼女がいるのに

私なんかに 恋心なんて抱かないのに

期待しちゃうのは辛いから

───しんどいなら言って

───泣くなよ

───俺が泣かせてしまったから

───女子が1人で帰るんだから

───心配に決まってるだろ

優しすぎて その優しさが痛かった

振られた理由が ''彼女がいる'' だというのなら

私が先に告白していれば 隼人の本当の隣は私でしたか?

花火が上がって パラパラと散り落ちていくのが

なんだか

切なくて 脆くて 儚くて

だけどそれを美しく感じた

振られたのは 恥ずかしくて 苦しくて 胸がいっぱいだ

だけど

好きになったのが あなたで良かったと思う

恋は儚く美しい

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