ヒロト
おま…ヒロ…え…?
ヒロト(無印)
そうか。この世界じゃ君が本物なんだね…
ヒロト(無印)
俺の名前は基山ヒロト。はじめまして。ヒロト。
ヒロト
お、お前が…俺…?
ヒロト
違うだろ!お前はタツヤだろ!
ヒロト(無印)
名前がヒロトなだけで、見た目や性格、口調はタツヤさ。
ヒロト(無印)
まあ話そうか。俺がなんで「ヒロト」なのか。
ヒロト(無印)
俺には親がいなかった。
ヒロト(無印)
親戚もみんな亡くなってるし、田舎に住んでたから近所の人も年寄りばかり。
ヒロト(無印)
そんな俺をおじいちゃん達は孤児院に預けてくれた。
ヒロト(無印)
「お日さま園」
タツヤ
…全く同じ…
ヒロト(無印)
俺は極度な人見知りだったから、施設のみんなに名前も言わずにいた。
ヒロト(無印)
そんな時、父さんが俺を見て言ったんだ。
ヒロト(無印)
「ヒロト」って。
ヒロト
父さんって…親父のことか…
円堂
ん???なんか頭がこんがらがってきたぞ!
鬼道
吉良星二郎には吉良ヒロトという息子がいるが、タツヤのことを一目見てヒロトと呼んだということか…?何故そんな…
ヒロト(無印)
俺は父さんの息子の吉良ヒロトに顔がそっくりだったみたいだ。こっちの世界では吉良ヒロトが幼少期の時に亡くなっている。
野坂
つまり吉良星二郎は亡くなった吉良ヒロトと重ねてみていたということ…?
ヒロト(無印)
まあそんな感じかな。
ヒロト(無印)
孤児院に入ったのなんて3歳くらいの時だったから、もう自分の本当の名前なんて忘れてた。
ヒロト(無印)
タツヤ…か…
ヒロト
じゃ、じゃあ俺もそっちの世界では…
ヒロト(無印)
あぁ、いや、ここら辺よくわからないんだよね。
ヒロト
え?
吹雪(無印)
さっきも言ってたように、こっちの世界の吉良ヒロトはタツヤくんにそっくりな姿。名前が同じ出会ったとしても、明らかに人が違うんだ。
ヒロト
じゃあ俺ってそっちの世界にいねえってこと…?
ヒロト(無印)
そういうことかな。
フェイ
僕もまだよくわかってないけど、やっぱりこれはフリークたちの仕業なんじゃ…
吹雪(無印)
博士が言うには、それはまた別の話で〜らしいよ。続きを聞こうとしたら、どっか行っちゃった。
フェイ
博士らしいね…
野坂
…ちょっといいかい?
ヒロト
んだよ…
野坂
これはあくまで仮説なんだけど、
野坂
実は2人は本当に死んでいなくちゃいけないんじゃないかな?
ヒロト
…は?
野坂
この世界軸を中心として世界が回っているわけではないんでしょ?だったら…
ヒロト
おい、待てよ。
ヒロト
俺とアツヤがいねえ世界が正しいって言いてえのか?
野坂
うん。簡単に言えば。
ヒロト
てめえ!!
俺は教室の机を退かし、野坂の方へドシドシと近づいた。
タツヤ
おいヒロト!!
止めようとするタツヤを振り払って、野坂の胸ぐらをつかんでゆすった。
西蔭
野坂さん!!!
ヒロト
マジで言ってんのかてめえ!!!
野坂
僕はあくまで仮説って言ったよね。
ヒロト
俺からしちゃ存在を否定されたようなもんだ!!
西蔭
野坂さんから離れろ!!!その手を今すぐどけろ!!
ヒロト
てめえは黙ってろよ!!
一星
あっ、あの!!
一星
俺も…野坂さんの意見に賛成です…
円堂
一星…?
一星
この世界じゃないけど…フリークの仕業かもしれないけど…俺を助けてくれた兄ちゃんが生きていたのは事実です。
一星
兄ちゃんが消えて不思議じゃないのに、俺たちの中の誰かが消えて不思議なんて…おかしいです…
ヒロト
…喧嘩売ってんのか…?
一星
そ、そんなつもり…!!
ヒロト
…もういい。
俺はアツヤの腕を引っ張って廊下に連れ出した。
アツヤ
は?!ちょ!!何すん…
バタンっ
扉を勢いよく閉めた。
アツヤ
おい、離せって。
ヒロト
悔しくねえのかよお前は。
ヒロト
俺たちを死人扱いしやがったんだ。あいつらは。
アツヤ
でも事実だろ。しかも野坂は「仮説」って言ってたし。本当かどうかもわかんないのにそんなマジになっても仕方ないだろ。
ヒロト
なんだよそれ…
アツヤ
ポジティブ思考だから。俺。
アツヤは俺の手を振りほどいて教室へ戻って言った。
俺はただその後ろ姿を見ながら突っ立っていた。
続く