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夜中にすみませんブクマ失礼しますm(_ _)m
ゆら
ゆら
ゆら
ゆら
ゆら
ゆら
ゆら
【アイスバース】 この世界には3種類の人間がいる *アイス* ジュースと結ばれることで身体が 溶け、3分後には死に至る 体温が低いため、他の人との 見分けが可能 *ジュース* アイスと結ばれることでアイスを 溶かしてしまう 見分ける方法が無いためアイスを 溶かして初めて自分がジュースであることを自覚する *どちらにも属さない* 特徴無し 普通の人間 アイスとジュースは互いに惹かれ合う運命にある
ゆら
ゆら
翔
満
そう言いながら、少し険しい顔をして自身の腰をさする彼。
俺、翔は今大好きな彼とまぁ…うん、察しろ?
ここでは言っちゃ駄目なんだろ?
まぁ、『彼』とは言っても付き合っている訳では無い。
所謂、『セフレ』というやつだ。
友達以上、恋人未満の関係。
でも、俺は彼のことが好きだ。
恋愛として。
だが、この気持ちを伝えることは出来ない。
この世に『アイス』と『ジュース』が存在する限り…
満
翔
満
その質問を聞き、思わず心臓がドキリと跳ねる。
翔
翔
満
翔
嘘だ。
俺には、自分が『ジュース』である自覚がある。
でも、『ジュース』が自覚出来るのは『アイス』を溶かしたときだけ…
そう。
俺は、無意識に『アイス』を溶かしたことがある。
小学生のとき。
好きだった女の子に告白されて、
その子はあっという間に体育館の裏の土に吸い込まれていった。
それから俺は、体温が低い人に気持ちを伝えることを諦めた。
惚れっぽい俺の、せめてもの償いだ。
満
翔
満
こう言うしか、俺には選択肢が無かった。
女
翔
女
別の日。
その日抱いた女にそう言われた。
翔
女
翔
歯切れを悪くしながら、スマホから目を離す。
今、彼と会う約束してて…
俺、ニヤニヤしてた…?
女
隣で大きなため息をつく彼女。
彼女は、学生時代に告白してきた子。
断るのは申し訳なくて、 でもガッカリさせたくないから、 こんななぁなぁなセフレという付き合いをしてしまっている。
俺には、こんな関係の女が何人かいる。
まぁ、彼…満だけは俺から手を出しちゃったんだけどね。
こんなに強く惹かれたのは初めて。 これが俗に言う『運命』ってやつかなぁ?
『アイス』と『ジュース』なんて、無ければ良いのに。
そう思いながらベッドから立ち上がった。
満
冬の冷たい空気に、白い息を吐く。
スマホの位置情報アプリをチラチラと確認しながら。
ここが、今日の翔がとの待ち合わせ場所。
とは言っても、遊びに行く訳でも、デートに行く訳でも無いけれど。
俺たちの関係は、簡潔に言えば 『セフレ』
友達だけど、そこからもう一歩踏み込んだ関係。
この関係には、『恋心』なんてあってはいけない。
恋愛感情なんてあったら、この関係は容易に崩れる。
それどころか、俺が死ぬ可能性もあるんだ。
これ以上の関係を望んではいけない。
そうは分かっているんだけど…
俺は、恋愛というものに人一倍奥手だった。
俺の『アイス』という体質がそうさせていたのだが。
そのせいで告白しないしされないし、『好き』という感情を持つこともなかった。
だから、これが俺の初めてなんだが…
満
ボソ、と呟いたその声は
冬の空気に溶けて、消えていった。
満
何分か待っていると、聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。
スマホから顔を上げ、姿を探す。
…が、近くに姿は見当たらない。
満
そう呟きながら少しだけ歩くと、
少し遠くに、彼の姿。
満
駆け寄って声をかけた。
そこで俺が見たのは、彼。
…と、知らない女の人。
かけようとした声が途中で詰まる。
翔
女
彼の腕に女の人が抱きついていて、彼もそれを強く注意していない。
彼女、だろうか。
その考えが脳裏を過ぎった瞬間、俺は急に自分が惨めに思えた。
この関係が続けば良い、なんて。
優しくてイケメンな彼なら、他にセフレがいるのなんておかしな話ではないじゃないか。
そう考えたけど。
心にぽっかりと穴が空いたようで。
虚無感、とでも言うか。
自分の全てが無くなったような感覚。
こんなの、初めてだ。
でも、なんで?
そんな疑問なんてどうでも良かった。
早く、ここから離れたい。
そう思い、さっきまで待っていた彼に声もかけずに走り出した。
後ろから翔の声が聞こえた気がしたけど、それに応える余裕は無かった。
満
とにかく、あそこから消えたくて。
息が切れて、気が済むまで走った。
どれくらい走ったか、なんて覚えていない。
海。地平線。
視界の前に現れたそれに、足を止めた。
真冬の夜の海は人気が少なく、どこか寂しくて。
綺麗だな、なんてふと思う。
なんとなくポケットからスマホを取り出す。
現代人の習性かもな、
スマホに依存しきった世界。
勿論、彼も例外ではなくて。
俺がスマホを開いて1番最初に目に飛び込んできたのは、
大量の不在着信。
『翔』
その文字を見て、思わず泣きそうになる。
なんで、こんなに優しいんだよ。
いっその事、俺の事なんて拒絶してくれた方が楽なのに。
涙を飲み込み、覚悟を決める。
そして、大量の着信履歴から恐る恐る折り返しボタンを押した。
プルルルル…
プルルルル…
…
決めた覚悟が揺らぎそうになったとき
翔
翔の焦りの声が聞こえた。
満
翔
満
隠そうか迷って、やめた。
どうせ、翔は気がついていたと思うから。
翔
さっきとは打って変わって落ち着いた声で翔は俺の名前を呼ぶ。
満
翔
満
翔
緊張感のある声が聞こえた後、
ツーツーという機械音が通話が切れたことを知らせる。
…通話をして、やっと決心がついた。
恋は、辛いもの。
苦しいもの。
だから俺は、そんな恋に終止符を打とうと思う。
告白して、ちゃんと振ってもらって、
この恋心も、この関係も、
全て、終わりにしよう。
そう心の中で決めて、足元の砂を踏み潰す。
サァッと冷たい風が頬を撫でた。
俺の目から溢れた雫は、砂に染みて、消えていった。
教えてもらった海岸へ走る。
夜の冬の海は人気が全く無くて。
砂浜にポツンと立っている彼を探すのは容易なことだった。
翔
そう声をかけると、視線を海から俺に向ける彼。
その目は少しだけ赤くて…
翔
満
翔
彼の頬に触れて、涙を拭き取る。
頬が冷たく感じるのは、寒いからか、それとも彼が『アイス』だからか。
俺には分からなかった。
満
翔
そう言いながら彼の肩に手を添えようとするが、
その手は彼に払い除けられる。
満
そう言って、俺の手を握る彼。
声も顔も、真剣そのもの。
…あ、俺、これ知ってる。
この表情をして俺に話しかけてくる人がどんなことを言うかも、
彼が俺に言って欲しいことも、
俺が返さなきゃいけない言葉も。
満
翔
彼が言いかけた言葉を遮り、耳を塞ぐ。
ずっと、ずっと強く惹かれている人の好意を拒まなきゃいけないなんて、
全てを聞いてしまったら無理だと思ったから。
でも、俺が拒まなきゃ、その先にあるのは
『死』
満
ごめん、ほんと、ごめんとしか言えない俺。
満はそんな俺を見て悲しそうに微笑むと、口を開いた。
満
寂しそうに、それでも笑顔で告げる彼。
翔
満
翔
こんな関係をダラダラと続けるなんて、お互いに良いことではないってことくらい分かってる。
それでも、好きな人を手放せるほどの思い切りの良さは俺には無い。
彼はそんな俺を見て、語気を強めた。
満
気がつけば、彼の目には涙が溜まっていて。
さっきの笑顔も相当無理をしていたんだなって、察する。
満
ポロポロと涙を零しながら、嗚咽混じりに言う彼。
「もう、良いんじゃないか。」
諦念に似た感情が、頭をよぎる。
翔
満
顔を上げる彼。
ごめんな、期待していることは言ってあげられない。
翔
彼の顔が、引きづるのが分かる。
翔
絶対に、絶対に言えない。
言葉にしちゃったら、3分後には満はこの世から消えてしまう。
溶けて、いなくなっちゃうから。
俺の姿を見て、満がオロオロし始める。
俺も相当酷い顔してたんだろうな。
でも、彼には俺が言いたいことが分かったらしい。
悲しそうな、寂しそうな、色んな感情が詰まった笑顔で彼は言う。
満
満
翔
満
翔
彼の瞳は、真剣そのもの。
こんなの、俺が決められることじゃないじゃん…
満
その言葉を聞いた俺の口から、絶対に出さないようにしていた言葉が漏れてしまった。
翔
その言葉を聞いて、俺に抱きつく満。
君を失いたくない。ずっと一緒にいたい。
彼に抱きつかれるだけで、そんな思いが洪水のように押し寄せて。
涙が溢れそうになる。
彼は、俺に抱きついたままで言う。
満
満の目から溢れるのが涙なのか、それとも溶け始めた彼なのか…
それすら分からないのが怖くて、彼を強く抱きしめる。
この感覚を忘れないように。
満
翔
変事をしながら俺が目を合わせると、彼は笑顔で言った。
満
満
その言葉を聞いた俺は、ボロボロと涙を零しながら頷いて、
初めて、その唇にキスを落とした。
「いっその事、出会わなければ」
「最初から君のことが嫌いだったら」
この世に、『アイス』と『ジュース』なんて存在しなければ、
どんなに楽だろうと思ってたけど。
『君と出会って、』
『君のことを好きになって、』
この世に『アイス』と『ジュース』が存在したから、
俺たちは今、結ばれているんだ。
それから、どれくらい経ったのか。
そんなことはどうでも良かった。
足元の砂が湿って固くなっている。
あぁ、もう、君は。
本当に、この世にいないんだね。
翔
死のう。
そう思った。
俺は、わざとでは無いとはいえ。人を2人も殺してしまった。
愛なんて、なぁなぁにして返せば、
応えなければ大丈夫だと、
そう思い、どこか余裕振っていた。
だけど、そんなこと無理だった。
いや、そんなの綺麗事だな。
俺は、満のところに行きたいだけ。
俺1人じゃ、『欠ける』だから。
『満ちたい』
ただ、それだけ。
翔
丁度良いところに海がある。
俺はゆっくりと歩を進めた。
風がサァッと吹き、足に砂が絡まる。
靴を綺麗に揃えて、空を見上げた。
満、待っててね。
すぐに、そっちに行くから。
ゆら
ゆら
ゆら