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人の不幸は蜜の味

第1話 - 人の不幸は蜜の味

2018年11月24日

#いじめ

#ちょい怖

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黒間

やぁ、こんにちはー

勇

……こんにちは

勇

えっと、ここってカウンセリングの……

黒間

うん、合ってるよ。
悩みがあるのかな？

勇

…はい。
少しだけ。

勇

聞いてもらえますか？

黒間

うん、全然いいよ。
勇くんだね、

黒間

知ってると思うけどここは、チャット式でカウセリングを行う、君と僕との閉鎖空間だよ。

黒間

外に情報は絶対にながれないし、盗み聞きの危険性もない。安心してね。

勇

はい。

黒間

じゃあ、さっそくいいかな？

勇

はい、お願いします。

黒間

はい、どうぞ。

勇

あの、僕あんまり目立たないタイプで…。人と話すのも苦手で、クラスに馴染めないというか……。

勇

大勢の人に、嫌われているんです……。
友達は中一から同じクラスで親友の灰島しかいなくて……、高校で…。

黒間

いじめかい？

勇

はい、直接じゃない…。
陰湿で陰険なものです。
証拠を掴もうにも怖くて何も、

黒間

辛かったね

黒間

怖かったね

黒間

よく頑張ったよ

黒間

よく、ここに来てくれた

勇

黒間

もう君はひとりじゃない。
僕が君の味方だから。

勇

はい、
ありがとう、ございます。

勇

僕、寂しくて、辛くて……
何も出来ない自分が惨めで…

黒間

ううん、君は充分強い。
ここまで来れたじゃないか。
充分頑張ったよ。

黒間

これからは僕も一緒に戦うよ。

勇

…ありがとうございます。
本当に、ありがとう。

黒間

ふふ、まだ何も解決してないよ。感謝の言葉はずっと後に残しておいて

勇

そう、ですね。

黒間

…じゃあ、これからいくつか質問するんだけどね？

勇

はい

黒間

もしかしたら…答えたくないものがあるかもしれないんだ……。
答えてくれれば、僕は君を助けやすい。
けど、本当に辛くて答えたくないなら、それでもいい。

勇

いえ、全てに答えます。
それが解決に少しでも繋がるなら…

黒間

ありがとう

黒間

それじゃ、さっそくはじめるよ。

黒間

君はどんないじめを受けているんだい？

勇

最初は靴を隠されました。
けど、その靴は決まって僕の荷物の中にあって…。そういうのが、ずっと続いて……。先生も、どうせ荷物の中と決めつけて、助けてくれなくなりました。

勇

次にカツアゲでした。お金を渡せと。それも日に日に額がふえてきています。
僕もバイトをがんばっているのですが、あいつら、バイト先にも来て…客足を止めるようなことを…… 。
今では最低賃金くらいしかもらえないんです。
バイト先を変えても……あいつらは…

勇

そして、クラス全体の悪口と無視。
それが学年に広まりました。

黒間

本当に陰険だね。

勇

そうなんです、僕は虫やコウモリとかそういう系は全然平気なんですが…あいつら、僕の苦手な爬虫類系の死骸を僕の机に詰め込むんです。

黒間

……勇くん、ちょっといいかい？

勇

はい、なんでしょうか？

黒間

爬虫類ってね、山の中へ行けば結構いるんだ。けど、基本的にそれは犯罪に繋がってしまう。

勇

はい……？つまり、どういうことですか？

黒間

君が渡しているお金は……

黒間

その爬虫類に使われている可能性が高い。君をいじめるために、彼らは君からお金を巻き上げている。

勇

嘘だろ…。

黒間

いや、まだ可能性の域だよ。

勇

そう、ですよね。

黒間

次の質問いいかい？

勇

はい

黒間

君は目立たないと、喋るのが苦手だと言っていたね。

勇

はい、本当に苦手なんです。

黒間

灰島くん、だっけ。君の親友の。

勇

はい！あいつはいつも話しかけてくれて…僕が無視されても、いじめられても、自分自身にターゲットが移りそうになっても。僕を慕ってくれているんです。

黒間

本当に彼はいい人なんだね。

勇

はい！

黒間

中学生の時は友人関係はどうだったの？

勇

普通に友達がいました。成績もそれなりにとれて、部活も充実してました。……それなのに、高校に入ってから……。

黒間

大勢に嫌われている、というやつだね？

勇

はい、

黒間

……

勇

どうしたんですか？

黒間

いや、1つね。
最悪の可能性が浮かんできた。

勇

最悪の……可能性…………？

黒間

うん。
辛いと思う。
だけど可能性の話だ。

黒間

君は確実に嫌な思いをする。

勇

……なんですか？

黒間

聞くのかい？

勇

聞きます。
それは確実に解決に繋がるんですよね、なら。僕はその可能性を聞かなければいけないんです。

黒間

本当に

黒間

君は強い

黒間

本当に

勇

……それで、可能性というのは？

黒間

その前に、より確信に近付くために、もう一つだけ質問させてもらえるかい？

勇

はい。

黒間

その｢嫌われている｣は誰かから聞かされているね？

勇

は…い

黒間

それを君に告げているのは

勇

黒間

灰島くんだろう

勇

……

黒間

人間は基本的に自分が嫌われることを恐れる。ただ、自分に利益がないと生きがいを感じることはできない。
だから、少し賢い人間は
力があるやつに情報を与えて利益を得る。役に立つことで、相手の好感度を稼ぐんだ。そして、結果的に自分も強者の立場にうつれるんだよ。

勇

ウソだ

勇

そんなわけない

勇

あいつはそんな事しない

黒間

そうだね、これじゃあまだヘマをしてしまう。

黒間

君から嫌われてしまう。
そうなったらとても動きずらいわけだ。

勇

やめて

黒間

もう、わかるね？

勇

やめてくれ……

黒間

主犯の力を借りてまで、君の味方のフリをした。よりオイシイ情報をより効率的に仕入れるために。ね。

勇

あぁ、いやだ。

黒間

君の親友は誰にも嫌われることなく、強者の地位まで登りつめた。

勇

ウソだ！

勇

嘘つき！

勇

灰島はそんな事しない！！！

勇

やめろ！

勇

アイツはそんなやつじゃないんだ！

高等学校昼休み灰島との会話

勇

なあ、灰島。

灰島

なんだ？またイジメか？
今度は誰だ！？
中尾か？真司か？

勇

いや、違う。
あぁ、それもそうなんだけど……

灰島

ん？
なんだ、いつにも増して
辛そうだな……

勇

なあ、灰島、僕は誰にイジメられているんだ？

灰島

……どういう意味だ？

勇

そのままの意味だよ。

灰島

中尾、真司、荒井、山田に……

勇

なぁ、お前、いつ、おれが
荒井と山田にいじめられてるところ見たんだ？

灰島

え？それは、放課後、旧校舎で。

勇

旧校舎なんて行かないだろ……

灰島

違う、あの時は用事があったんだ。

勇

用事って？

灰島

……

勇

言えないんだ……？

灰島

…

勇

お前も、俺をイジメてたんだな

灰島

！？

灰島

ちがう！なんでそんな？！

勇

あはは、必死だな灰島。
そんなに今の立場がいいかよ。

灰島

ちがっ

勇

うるさいっ！！！

灰島

っ！

勇

お前も、アイツらと何も変わらないじゃないか！

灰島

勇！！

カウンセリングチャット

勇

アンタの言う通りだったよ

黒間

あぁ、まさか……

勇

アンタの言う通り、灰島もグルで俺をイジメてた。裏切られたんだ！！

黒間

……

勇

なんで？俺はひとりぼっちなのか？
親友にも裏切られて…俺が一体何したっていうんだよ。

黒間

悔しい…？

勇

？

黒間

僕はとても悔しいよ。
君を取り巻くその環境を、
何とかして、こわしてあげられないものかと！

黒間

悔しくて！

黒間

手が届かない自分が惨めでならない！

勇

……あぁ、そうだ

黒間

？

黒間

何か、思いついたの？

勇

黒間さん、復讐したいです。
アイツらを灰島を見返したい。

勇

出来れば、灰島を追い詰めたい。
俺がどれだけ辛かったか。思い知らせたいんだ。

黒間

そう…
復讐…か…。

勇

ねぇ。力を貸して！
灰島を地獄に突き落としてやりたいんだ！黒間さん、俺を助けてよ!!

黒間

いいよ。
じゃあ、勇くん君、
部活何入ってた？

勇

？

黒間

中学生の頃だよ

勇

サッカー部で一応エースストライカーやってたけど……今じゃ、部活どころか勉強も手につかないよ。

黒間

よし、勉強そっちのけでサッカー部に復帰してみるんだ！

勇

なんで。

黒間

サッカー部の先輩とできるだけ良好な関係を築いて、いじめっ子達を上から押さえつけるんだ。

勇

そんなに、上手く行くわけない。

黒間

上手くいかせるんだ！
復讐したいんだろう？

勇

……うん。絶対に。

黒間

いいかい？
先輩に頼ったり、絶対に決まる時にボールを渡すんだ。そして、いつでも笑顔でいるんだ。

勇

なんでそんなこと

黒間

言っただろう、できるだけ良好な関係を築くんだ。

勇

地道だな。

黒間

最初はそんなものだ。
けど、途中で先輩達は気付くだろう。君の成績が悪いことにね。

勇

あぁ、そうなったら退部だ。

黒間

いや、そうはならない。
先輩達は必ず君の成績が悪い理由を尋ねてくる。その時、いじめっ子の名前を出すんだ。

勇

なるほど……！

勇

そうすれば！

黒間

うん、君を取り巻く環境はなくなる

勇

そこで、俺は灰島にされたことと同じことを灰島自身にやり返すんだな。

黒間

あぁ、そうなったら、明らかな敵意と嫌悪を示せ。君が裏切られた時に味わった感覚を彼は痛感するだろう。

勇

ありがとう！
俺、強くなれるよ！

黒間

いや、君は充分

黒間

強いさ

勇

またそれかw

黒間

あぁ、ごめんね

黒間

口癖なんだ

勇

ま。いいけどねー。
黒間さんだし！

黒間

それは

黒間

嬉しいなぁ

１ヶ月後

勇

黒間さん！聞いてください！

黒間

こんにちは、久しぶりだね。

勇

はい！
灰島のやつここ1ヶ月で不登校になりました！ざまぁみやがれです！

黒間

それはそれは、よかったね

勇

俺は耐えて耐えて学校に来ていたのに。アイツは弱いから来なくなったんだ！俺の辛さをもっと味あわせてやる！

黒間

あぁ、頑張って。
君が勝つのを僕は心から待ってるからね。

勇

ありがとうございます！！

さらに１ヶ月後

勇

聞いてください！

黒間

今度はどんな変化がありましたか？

勇

灰島のやつ今日学校に来て、僕に、
｢許してくれ。お前の辛さはよく分かった、すまなかった。｣とか行ってきたんですよ。

黒間

それは、どうなんだろうね

勇

そうですよね！
ありえないですよね！

勇

だから。黒板消しを投げつけてやりましたよ！！

勇

本当にいい気味だ！

黒間

楽しそうだね。

勇

はい、毎日が楽しいです！

その後も勇によるいじめは続いた

それは１ヶ月、2ヶ月……

ついには1年の月日が経った

勇

あーーー！

黒間

どうしたの？

勇

黒間さん、覚えてないの？

黒間

？？

勇

今日、復讐劇の記念すべき1周年だよー！！！

黒間

あぁ、そういえばそうだね。

勇

軽っ！まあ、これまで話してきて気付いたけどさ、黒間さんって相当マイペースだよねwww

黒間

そうだね

勇

あーあ！ほんっとーに、いい1年だったなぁ！！！

黒間

あぁ、強いよ。きみは。

勇

それもう聞き飽きた！

黒間

でもね

勇

？

黒間

ここまで耐えた彼こそが

勇

かれ？だれ？

黒間

真の強いひとだと僕は思うよ

勇

何の話？

勇

え、これ。

勇

なに、アイツ自殺したの？w

勇

よっわwww笑えるわw

黒間

ねぇ、勇くん。

黒間

本当に彼は君をイジメてたかな？

勇

は？

黒間

いやぁ。ここまで笑える話はないと僕は思うんだけれどね？

勇

なに？

黒間

君、コロッと信じちゃうんだもん！あはっ！

勇

は？どういうこと？

黒間

君の親友さぁー！
がんばってたよ？

勇

何？なんなんだよ

黒間

君に学校に来てもらいたくて！
君を元気づけたくて！
君が心の底からだいすきで！

勇

どういうこと…

黒間

馬鹿だなぁ！勇くん！
君は誰にも裏切られてない！
強いていえば僕がうらぎったんだ！

勇

はぁ？なんで？じゃあ灰島は？
いや、そもそも灰島は知らないハズの情報を知っていた。それに知っていた理由も喋らなかった。
アイツは正真正銘俺を裏切ってたんだ。

黒間

？

黒間

馬鹿だなぁ、馬鹿すぎる。
笑えてくるよ、勇くん！

黒間

そんなことも分からないのかい？

勇

アイツは用事があると言ってたけど、そんなの嘘で旧校舎にいたのはイジメられてる俺を見て嘲笑うためだろ！

黒間

あー！やめてくれ！
面白すぎてお腹がよじれちゃうよ！

勇

なんだ！さっきからなんなんだ！

黒間

いいかい？

黒間

君のいう弱い親友は！

黒間

大事な親友のために！

黒間

君のために！

黒間

君のための！

黒間

君を救うために必要な！

黒間

いじめの

黒間

証拠を！

黒間

集めてたんだよ！

勇

ウソだ！

黒間

またそれか？

勇

？！

黒間

嘘だ、やめろ
そんなの嘘で関係ない

黒間

現実逃避もいい加減にしろゴミクズ

勇

なんだと？

黒間

お前は、不幸自慢をしにここにきた。僕はそういうのやつが大っ嫌いなんだよ。

勇

クズが！

黒間

人殺しに言われたくないよ。

黒間

そもそも、君は自分の不幸に甘えた。親友の優しさにも。

勇

うるさい

勇

だまれ

黒間

自分で解決しようとしなかった。不幸を振り切ろうとしなかった。解決策を見出そうともしなかった。
1人でもいいと。親友さえいてくれればそれでいいと。小さな良心さえもてばなした！！

勇

うるさい！！！

黒間

そうやって

勇

……

黒間

灰島の言葉を遮った

勇

俺は……

勇

殺したのか……？

勇

灰島を……親友を…

黒間

安心して、君は親友を殺しちゃいないよ

勇

え？ほんとに？

黒間

あぁ、本当さ。

勇

じゃあ！

黒間

だって……

勇

？

黒間

君の呼ぶ親友は

勇

黒間

単なる復讐劇の悪役だろう？

勇

違う！

黒間

違わないさ

勇

違う！

黒間

さて、ここからは地獄へのカウントダウンだ。

黒間

君を守る先輩はもういない。

黒間

君は少しやりすぎた。周りの人間ももうそろそろ君から離れていく頃だ。

勇

おい、やめろ何をする気だ！

黒間

何もしないよ。
ただ、きみはどうにかなってしまうだろうね。

勇

やめてくれ！！

黒間

そうだな、少なくとも彼の命日という来年の記念日には……

黒間

君はまともじゃいられないだろうね

勇

お前のせいだ！お前が復讐なんかさせるから！

黒間

おいおい、言い掛かりまでつける気か？

勇

だってそうだろ！お前がいなきゃ！
灰島は！

黒間

言っとくけどな、最初に言い出してそのままポンポンと話を進めて大きくしたのは勇くん、君自身だよ。

黒間

全く、付き合ってらんないよ。

勇

なんなんだよお前！何が目的なんだよ！

黒間

目的ぃ？そんなの無いよ。
あぁ、でも、
昔から言うよね？

黒間

人の不幸は蜜の味

黒間

ってさ。

黒間さんがチャットから離脱しました

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