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ーー昇降口

外に飛び出した瞬間、中也は壁に拳を叩きつける。

ドンッ!!!

中也

クソッ…クソがぁ…!

手が震えて止まらない。

ー家ー

中也

はぁ…はぁ…はぁっ!

自分の部屋にある本棚を叩き、本が落ちてくる、他にも鏡を殴り、粉砕。

中也

はぁあっ!はぁ…!

床には崩れた本、割れた鏡の破片、写真のフレームが散らばっている。

中也

はぁ…はぁ…

ガチャッ

太宰

…中也…っ!

中也

来んじゃねぇ!テメェなんて…俺はお前が大っ嫌いだ!

太宰

っ…中也…僕…

中也

うるせぇ!もう俺は、お前を兄として見ない!!!

中也

実の弟を守る?助ける?自分自身で傷つけてどうすんだよ!!!

中也

お前みたいなクズが、俺の兄じゃねぇ!血も何も繋がってねぇよ!!!

お前なんか!!!

中也の怒号が、

散らばった本と割れた鏡よりも鋭く、

太宰の胸に刺さった。

太宰は一瞬、呼吸の仕方さえ忘れたように固まった。

震える声で、しかし逃げずに踏み出す。

太宰

……うん。全部、中也の言う通りだよ

顔色は真っ青。

それでも中也のほうをまっすぐに見ている。

太宰

僕は…“兄”を名乗る資質なんてなかった。本当にそう思う。

太宰

さっきの言葉も、中也を守るどころか、一番傷つけた。

その目は、泣きそうでもなく怒りでもなく、

ただただ深く、静かに後悔していた。

シャリ…と痛い音がする。

太宰

痛いのなんてどうでもいい。

それより——ごめん。

太宰

中也をひとりで怒らせて、ひとりで泣かせて、ひとりで苦しませた。

中也は歯を食いしばる。

息が荒いまま震えている。

太宰はすぐ近くまで来て、でも触らずに、そっと言う。

太宰

“弟を守る兄”でいるはずなのに、僕は中也の心を真っ先に壊した。

太宰

嫌われて当然だよ。でも…中也を放っておくことだけは出来ない。

中也の肩がピクリと揺れる。

太宰は、自分の喉を掴むように苦しげに吐き出す。

太宰

——あれは違う。“嫌いだ”なんて、そんなわけないだろ…っ

声が震えた。

太宰

心配で、怖くて……どうしたら中也を守れるのか分からなくて……だから間違えたんだよ…!

部屋には

中也の荒い息と、太宰の弱い声だけが響く。

そして——

太宰

“僕は、中也が大事すぎるんだ”…

中也

うるせぇよ…俺はもうお前なんか…兄として見な——

言いかけた瞬間、太宰の大きくて暖かい手が、頬を包んだ。

太宰

お願いだから…そんな事言わないで…?(ポロポロ

中也

……っ……!

頬に触れた太宰の手は、驚くほどあたたかくて震えていた。

ゆっくり、そっと、

中也の顔を包み込むように添えられていて——その手の震えが“嘘じゃない感情”を全部伝えてきた。

太宰の目から、ポタポタ涙がこぼれ落ちる。

声は掠れて、

絞り出すようだった。

太宰

…中也……お願いだよ……“兄として見ない”なんて、言わないで……

太宰

そんなの……僕が耐えられない……っ

中也

……治……?

太宰の親指が、そっと中也の涙をなぞる。

自分の涙で濡れた指が、中也の頬に触れていく。

太宰

中也が痛い時は僕も痛い。苦しい時は胸が締め付けられる。怖い時は震える。怒られたら怖いし、嫌われたら死ぬほど苦しい。

そして、少しだけ声が裏返った。

太宰

そんな僕が……“兄として見ない”なんて言われたら……どうやって生きていけばいいの……?

中也は固まっていた。

怒りとも、悲しみともつかない何かが胸に詰まってる。

太宰はさらに手をぎゅっと頬に当ててくる。

太宰

僕ね……中也が笑ってくれるためなら、なんでも出来るんだよ……?

目を真っ赤にして言うその姿は、

いつもの余裕なんて欠片もなくて、

ただ“弟を失うのが怖い兄”だった。

太宰は——

割れた鏡の破片が散らばる床なんて、一切見ていなかった。

中也の頬から手を離した瞬間、まるで何かが切れたように、そのまま中也に向かって一歩、また一歩と踏み出した。

足元から——

パキ…ッ、ガリッ……

足に刺さる衝撃。

皮を貫き、足に痛みが走る。

けれど太宰は顔色ひとつ変えない。

むしろ痛みから逃げるどころか、

もっと深く踏み込んで——

太宰

……中也……

次の瞬間、太宰の腕が中也の身体をぎゅっと強く抱きしめた。

全身で、

壊れた部屋の景色も、

血の滲み始めた足の痛みも、

全部置き去りにして。

太宰

離さない……中也がどれだけ怒っても……僕は、絶対に……離さないから……

中也

っ……おい、離せよ……

声は荒いのに、震えていた。

太宰は中也の背中に顔を埋めたまま、血で床を濡らしながらさらに抱きしめる。

太宰

いいよ、何言われても。“嫌い”でも“兄じゃない”でも全部聞く。でも……中也を一人にだけはしない……

抱きしめる腕は震えてる。

声も涙で濡れていた。

太宰

痛いのなんて……どうでもいい……中也の方が……ずっと痛かったんだろ……?

中也

……っ……う、うるせぇよ……

中也の喉が詰まり、言葉が崩れそうになっている。

太宰は、破片を踏みしめ、足から血を流しながら、それでも少しも離れない。

太宰

もう……中也に“ごめん”が追いつかないくらい……僕は中也を傷つけた……

一呼吸置いて、搾り出すように。

太宰

それでも……それでも、中也を守りたいんだよ……

中也の肩が、ぴくりと揺れた——。

太宰の声は、泣きすぎてもう壊れそうだった。

抱きしめる腕も震えて、必死に縋りつくような強さになっていく。

太宰

嫌ってもいい…怒っててもいい…でも……

涙がぽたぽた落ちて、中也の肩を濡らす。

太宰

せめて兄としては見てほしい……っ

その瞬間、中也の胸の奥がギュッと強く掴まれた。

太宰は、自分でも支えられないほど崩れた声で続ける。

太宰

僕達は兄弟なんだよ……血も繋がってるよ……僕にとって中也は……中也は、生きがいなんだよ……

床に落ちた太宰の涙が、鏡の破片に反射して光る。

太宰

他人なんて……嫌だよ……っ

破片を踏んで傷だらけになった足から血が滲んでも、全く離れる気配がない。

息が詰まりそうな声で。

太宰

中也に……“特別な存在”として……見てほしいよ……

太宰

兄でも……守る人でも……なんでもいい……でも……“特別”でいたい……っ

中也

……っ……

言葉が喉奥で震える。

怒りと、悲しみと、そしてどうしようもないほどの愛情がごちゃ混ぜになって。

太宰の体温と涙が、中也の心の氷を溶かすみたいに染み込んでいく。

太宰に抱きしめられたまま、

中也の胸の奥に溜まっていた感情が——

とうとう爆発した。

太宰

中也……っ、僕は……

中也

……なんで……

震える声。

ふるふる震えながら、ゆっくり太宰の胸に拳を握る。

次の瞬間——

ドンッ!!

太宰の胸を叩く音が部屋に響いた。

中也

なんでそんな事言うんだよ!!!

中也の叫びは、涙に濡れて掠れていた。

太宰

……中也……

ドンッ! ドンッ!

叩く拳は弱い。

痛みなんて与えられないほど震えてる。

中也

なんで“特別でいたい”なんて言うんだよ!!!

中也

そんなの言われたら……ッ……俺……ッ!!!

言葉が続かない。

涙が溢れて喉が詰まる。

太宰は抱きしめた腕を緩めず、ただ中也の頭を支え続ける。

中也

……バカじゃねぇの……兄として……特別な存在とか……そんなの言われたら……どうすりゃいいんだよ……!

太宰

……中也……

中也は太宰の胸を叩き続ける。

でもその拳はほんの少しずつ弱くなっていき——

中也

……嫌いになんて……なれねぇだろ……っ……

涙がポタポタ落ちる。

太宰の服に大きな濡れた染みを作っていく。

太宰の目も、溶けるように優しくなる。

太宰

……中也。“嫌いになれない”って言ってくれただけで……僕はもう……

中也

言ってねぇよ……ッ……言いてぇわけじゃねぇよ……でも……!!

中也は必死に太宰の胸ぐらを掴む。

中也

なんで……俺にそんな事を言うんだよ……離れられなくなるだろ……っ……!!!

太宰は、痛む足を無視して、そのまま中也を強く抱きしめ返す。

太宰

離れなくていいよ。中也は僕の弟で、僕の特別で……僕の大切なんだから……

中也

……っ……治……

太宰

泣いていいよ。全部僕が受け止めるから。

中也は堪えきれず、太宰の胸に顔を埋めて号泣し始めた。

この作品はいかがでしたか?

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コメント

4

ユーザー

たまたまメンタルが弱ってたからかもしれませんが普通に泣きました(がちで)いや、ほんとに素晴らしい作品ありがとうございます

ユーザー

太宰さんいいお兄ちゃんすぎる😭中也も太宰さんも可愛いしもう最高すぎるし喧嘩なのになんかモヤモヤしないおわり方でもうほんとに泣きました😭😭

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