中野玲斗
中野玲斗
俺は退屈していた。
両親が喧嘩したり
気に入っていたキーホルダーを落としたり。
何とも不運な事が立て続けに起こっている。
確かに、これといって特段嫌な事があった訳でもないが
塵も積もれば山となる、というか
兎に角、不運な事が続いているのだ。
両親が喧嘩しているのは日常茶飯事だが
こちらとしても気分は良くない。
恐らく俺は代わり映えのしない日常に飽き飽きしているのだろう。
中野玲斗
溜息と共にそう吐き出して
俺は枕元に無造作に置かれたスマホを手に取った。
惚けた眼でメッセージアプリのアイコンを捉え、指先で触れた。
中野玲斗
高橋 愛
中野玲斗
中野玲斗
高橋 愛
高橋 愛
高橋 愛
中野玲斗
中野玲斗
高橋 愛
高橋 愛
『外せない用事があるの。』
その言葉が嘘か誠かなんて分からなかったが
本来、ダメ元で誘った為
正直どうでも良くなっていた。
中野玲斗
俺と高橋さんの関係は
世間一般で言う『クラスメイト』
そう、ただのクラスメイトだ。
彼女にとって、俺はそれ以上でもそれ以下でもない存在。
俺にとって彼女は、憧れの様な、そんな好意を抱いた存在だった。
所謂、『恋』という物だ。
悲しい事に、片想いだが。
中野玲斗
半ば自暴自棄になりながらも、これも日常茶飯事な為
結局、気にしないことにした。
中野玲斗
先程まで惚けていたが、それも段々と冴えてきて
自分が朝から何も口にしていない事に気が付いた。
何か食べようと思ったが、生憎家の冷蔵庫には直ぐに食べれるものは無い。
俺は鞄から財布を出してポケットに入れると
たどたどしい足取りでコンビニへ向かった。
ビニール袋を手に掲げ
コンビニから帰っている最中だった。
猫
ふと、動物の鳴き声がして、足を止めた。
立ち止まって辺りを見渡したが、声の在り処は分からなかった。
きっと、誰かの家猫が窓辺で鳴いているのだろう。
そう思い込んで、また足を進める。
猫
また鳴き声がした。
俺はまた立ち止まって、今度目を凝らして辺りを見渡した。
すると、足の先に何かが触れる感触がした。
足元を見てみると、小さな黒猫が居た。
中野玲斗
その場にしゃがんで、黒猫を持ち上げる。
思った以上に軽くて驚いた。まだ生まれたばかりだろうか。
中野玲斗
見た所、首輪などは着いておらず
痩せこけていて、飼い猫には見えなかった。
猫
中野玲斗
中野玲斗
猫
そっと猫から手を離し、立ち上がったはいいものの
か細い鳴き声を上げながら俺の足元に擦り寄ってくる。
俺はそんな猫を見捨てられなかった。
中野玲斗
中野玲斗
猫
返事をするかのように鳴き声をあげる黒猫。
俺は右手に猫を抱えて帰路についた。
黒猫を拾ってから幾つか日が経った。
最初は慣れずあたふたしていた世話も幾分か慣れてきた所だ。
最初は悪かった健康状態も少しマシになっている。
とはいえ油断はならなかった。
少し目を離せばカーテンを引っ掻いたり。
本棚に登ろうとして倒したり。
獣医はまだ安静に、と言っていたが
俺にはこれ以上無い程元気に見える。
時折、俺よりも元気だと思う程だ。
毎朝母親に世話を頼んでから登校しているが
正直心配で仕方がなかった。
高橋 愛
中野玲斗
いきなり挨拶され、動揺を隠せなかった。
何時も言葉を交わす事は少ないのに、一体どうしたものか。
高橋 愛
高橋 愛
中野玲斗
中野玲斗
高橋 愛
高橋 愛
中野玲斗
中野玲斗
高橋 愛
高橋 愛
中野玲斗
高橋 愛
中野玲斗
高橋 愛
高橋 愛
高橋 愛
中野玲斗
高橋 愛
中野玲斗
高橋 愛
中野玲斗
高橋 愛
中野玲斗
本当にどうしたものか。
その日の授業は、この朝の会話の事で頭がいっぱいで
全く頭に入ってこなかった。
高橋さんと自分の家に入り、リビングの戸を開ける。
するとそこには、衝撃の光景が広がっていた。
今日の朝まで物々しい雰囲気を漂わせていた両親が
ソファで隣同士に座って談笑していたのだ。
中野玲斗
母
中野玲斗
高橋 愛
父
何時もは厳しい父が、何故だか笑みを浮かべていた。
父
母
何時もの二人ならありえないような会話だ。
二人の間に『猫』がいるだけで
こんなにも雰囲気が変わっている。
高橋 愛
中野玲斗
その日は結局、このまま変わりなく終わった。
高橋さんと沢山話せた事もそうだが
その後、夕食時に家族で楽しげに食卓を囲んだ事が
何よりも不思議で仕方がなかった。
喧嘩しないに越したことはないのだが
現実味がない、何ともいえない感情に苛まれた
そして、黒猫には『リアン』という名前がつけられた。
フランス語がどうとか、色々話し合っていたが
あまり覚えていなかった
猫を拾ってから数ヶ月後
今、俺は数ヶ月前じゃ考えられない状況にいる。
そう、なんと俺は今
高橋さんと付き合っている。
高橋 愛
中野玲斗
高橋 愛
冷静に考えるととんでも無い状況だと自分でも思う。
ただ、驚く事にこれは現実なのだ。
あの後、猫関係で高橋さんとよく話すようになり
放課後はほぼ毎日二人で猫と触れ合っていた。
それを重ねていく内に、学校でも話す事が増え
ついに俺は告白をしたのだ。
その時の事は未だ鮮明に覚えている。
というか一生忘れられないだろう
結局、何もかもあの猫、『リアン』のお陰なのだ。
リアンは一ヶ月前に親戚に引き取られてしまったが
居なくなったあとも両親は仲が良いままで
僕と高橋さんも相変わらずだ。
もしかしたら、リアンは
俺に幸せを運んでくれたのかも、なんて
中野玲斗
母
親戚
母
母
親戚
母
親戚
親戚
母
母
母
親戚
親戚
母
母
コメント
1件
リアンちゃんが行くと幸せになる、みたいな、、?