絶対泣かない君の涙が見たい

土曜日の練習後、私はそそくさと支度を済ませ早速スマホでゲームを始めた彼の後ろに仁王立ちした

猫のようにビクッと体を震わせた彼はゆっくり迷惑そうにこっちを振り返った

夜久さんの一言に、リエーフは焦ったようにカバンを持って体育館を出ていった

研磨さんは明らかに嫌そうな顔をして返事を渋る

孤爪家

あの後全力で研磨さんを説得して、渋々家にあげてもらった

研磨さんが部屋を出ていくのを見届けると、さっきから気になっていた棚上の写真に目をうつす

小さい頃の研磨さんと黒尾先輩の写真だ

2人とも泥だらけの格好で、黒尾先輩はバレーボールを持って笑っている

普段ゲームなんてあまりやらない

本当は大して興味もなかったんだけど、黒尾先輩のことを聞くキッカケを作りたくて

なんのゲームかも分からずにアプリをインストールしたのだ

ぼんやり写真を眺めていたら、いつの間にかお茶を持って戻ってきた研磨さんがドアの前で訝しげにこっちを見ていた

まんまとはめられたと思いつつ、少し縮こまりながら聞いた

両親の事故を口外しないでいてくれてるのだろう

今この流れで説明をしないのは変だろうか

相手に気を使わせたり、暗い雰囲気になってしまうことは目に見えている

でも人のことを知るには、まず自分のことも言わなければならない

意を決して口を開いた時、後ろから黒尾先輩の声がして大きな手で口を塞がれた

黒尾先輩の大きくてたくましい手を両手でどけながら彼を見上げる

研磨side

俺はカチャカチャと食器の用意をしながら思う

何があって2人が出会って、何を話したかなんて知らないけど

さっきのクロは完全に何か話を誤魔化していた

梵はそれに気づかずに少し不服そうな顔をしていたけど

聞かれたくないことなら別に無理に聞いたりしないのに

でもただ純粋に

命に関わる話ってなんだろうと疑問には思う

例え病気だったとしても、クロが泣いたことや弱点は関係ないだろうし

クロのことが好きだから色々聞いてるわけでも無さそうだ

わからないな

でもきっと重要で大切な事なんだろう

俺が干渉することでも無い

梵が言ってきたから思い出したけど

そういえば懐かしいな

クロが大声をあげて泣いた日

To be continued