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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

俺は生まれつき体が弱かった

学生時代の半分は病院生活だった

牢獄みたいな部屋での孤独感と共に生きてきた

友達なんかろくに居ないし

親も…しばらく見ていない

お見舞いに来る人なんか誰も居なかった

でも、ある日

同じ病室になった、同い年か少し下か

可愛らしい雰囲気の男の子が入ってきた

その子供は明るく、フレンドリーな性格で

看護師や同じ病室のおじいさんとも

すぐに打ち解けて楽しそうに話していた

俺は小さい頃から人とのコミュニケーションが少なかったせいか

素っ気ない態度を取ってしまう事が多かった

そのせいで傷つけたり、悲しい表情をする人が多かった

だからその子とも、仲良くしようとは思わなかった

…はずだったのに

その子が入院してきて数日が経った頃

急に話しかけてきた

ねね!

それさ、○○の漫画でしょ?

自分もよく見るんだー!

暇だから、という理由で読んでいた漫画

…それがきっかけで、

その子から話しかけられる頻度が段々と増えていった

俺は勿論、話す気も仲良くする気もなかった

だから無視したり…たまに頷いてやったり。

それが嬉しかったのか毎日話しかけてくるようになった

怖かった

また傷つけてしまうのが。

俺のせいで悲しい顔をする人が増えていくのが。

ある日、俺はその子を突き放すように

「話しかけてこないで」

とだけ言い放ち、部屋を出ようとした

…でもその子は

なんで?

悪気の欠片も感じられない様な

首を傾げて、俺の目をしっかりと見るその子に

「俺なんかすぐ嫌いになる」

「だから話しかけてくんな」

…今思ったら酷い言い方だっただろう

でもその子は…

じゃあ…ん!

目の前に突き出された、俺よりも少し小さな小指

ほら手出して!

そう言って俺の手を取り、自分の小指と絡める

ゆーびきーりげーんまーん!

うーそつーいたーらはーりせーんぼーん

のーます!

今目の前で起きていることに理解が追いつかなかった

急な言動に俺がドギマギしていると

ちゃんと目を見て話聞いてくれる!

話しかけたら、頷いてくれる!

話しかけても嫌がらずにいてくれる!

そんな優しい所、大好きなんだ!

たまに冷たいけどぉ〜…

でも良いの!

…仲良くなりたいの!

そう言ってまっすぐに俺の目を見つめてくるその子に

少しの光が見えたような気がした

だから!

ずっと一緒!

約束破ったら飛び降りでもなんでもする!

そう強く断言してくれた彼は

…未だに、その約束を破らずにいる

暇72

こさめ〜?

こさめ

はーい!

暇72

もうおせーし泊まってくか?

こさめ

え、いいの!?

こさめ

やったぁ!✨

飛び跳ねてはしゃぐ彼を横目に

2人分の布団と食事を準備する

こさめ

ん!うま!

こさめ

なつくん料理も出来るとか流石過ぎる…

暇72

そうか?w

最近忙しかった事もあって

二人でゆっくりと話をするのは久しぶりに感じた

そんな中

俺のスマホからの着信音

暇72

あ…ごめんな

こさめ

いいよ〜

口いっぱいに頬張る彼に断りをいれ

スマホの画面に目を落とす

相手の名前とメッセージを見た瞬間、急いでかけ直す

暇72

もしもし?

あ!もしもしなっちゃん!

暇72

どした?

メッセージの相手はみことだった

すちくんが悪化しちゃったっぽくて…!

今お医者さんが見てくれてんねんけど…

暇72

悪化って…どういう風に?

心拍数が上がっちゃって過呼吸なっちゃったり…

あ、あと!目眩したり…頭痛いって言ってた!

暇72

俺ら今から行った方が良さそうか?

できればなっちゃんだけが良いかも…?

らしい!

暇72

すちが?

うん…

今ちょっとだけ落ち着いて…とりあえず別室に移動やって!

暇72

わかった

暇72

着いたら連絡するから

ごめんな、なっちゃん…!

あ、今行きます!

じゃあ後でね!

暇72

みこととの会話が終わり、席を立つ

みことの説明じゃ今のすちの症状がいまいち分からない

それほどみことも焦っていたのだろう

出来るだけ早く行った方が良いだろう

こさめ

なつくん何処行くの?

さっきの会話の内容は聞こえていなかったらしい

暇72

病院に忘れ物しちまってさ

暇72

みことが連絡してきてくれたんよ

こさめ

着いていこうか?

暇72

いや、大丈夫

暇72

ちょっと遅くなるかもだけど先寝てろよ

こさめ

ん!気をつけてね!

無事に病院に着き、急いでみことに連絡を入れる

今はもう消灯時間を過ぎているのか

どこの病室も静まり返っていた

そんな中、ゆっくりと車椅子の音が近づいてくる

みこと

なっちゃーん

暇72

お、みこと

暇72

行くか

看護師

すちさんの部屋に案内したらよろしいですか?

暇72

あ、はい

暇72

よろしくお願いします

病室の扉を開け、カーテンに近づく

看護師

失礼しますね

暇72

すち!

そこには目を瞑り、何やら口に機械を取り付けられているすちの姿があった

医者

今はだいぶ落ち着きました

みこと

よかったぁ…

暇72

悪化したって聞いたんですけど…

医者

そうですね…

医者

説明しますので座って下さい

医者の話によると

「過換気症候群」という病気になってしまったらしい

発作の原因としては、緊張や精神的なストレスからだと。

LANの事だろうか、と勝手な想像をする

すちは普段から過度な心配性ではない

まあ…そう考えてしまうのが自然だろう

この病気は

簡単に言えば過呼吸状態

詳しく言えば、血液中の二酸化炭素濃度が少なくなり

体内がアルカリに傾く

それによって血管が収縮して

血液中のカルシウム濃度が低下してしまうそう。

すちの症状としては

呼吸困難や全体的な痙攣

他にも吐き気や頭痛、目眩を訴えたそう

これは別に命に関わるような病気ではないため

それなりの治療法を続けていれば治るらしい

でもこの事が原因で退院はもう少し先になるとのこと。

みこと

ほぇー…

暇72

なるほどなぁ〜

みこと

でも!命に異常ないんだったらよかった…

暇72

それはそうやな

医者

本人には目が覚めたら説明しますので

医者

今日はどうされますか?

暇72

んー…

既にこさめが心配するような時間だ

出来るだけ早く帰らなければ不審に思われる…

暇72

今日は帰ります

暇72

ありがとうございました

みこと

ん!また連絡するな!

医者

お気をつけて

暇72

はーい

暇72

ふぃ〜…

外の冷たい風を受けながら歩く

今はもう深夜に近く、家につく頃には日が回っているだろう

そんな事を考えながら歩いていると 反対方向に見知った顔を見つける

暇72

らん…?

暇72

ちょ、らん!

LAN

…え

暇72

お前歩くスピード早くね…

息を切らしながら彼に追いつく

LAN

…そうかな

暇72

…?

いつもより返事がワンテンポ遅く感じるのは気の所為だろうか

暇72

こんな所で何してんだよ?

暇72

てか今日お前配信じゃなかったっけ…?

そう、今日は20時からいるま、21時からはLANの枠だ

でも通知は二人共なし。

X(旧twitter)も更新されている気配はなかった

LAN

暇72

らん?

いつもなら彼から目を合わせてくるのに

今日は顔がよく見えなかった

俯き加減に下を向く彼の顔を見ようと近づいた

その時

LAN

パシッという音を立て、俺の手を払い除けた

髪が揺れた時に見えた彼の目は

いつもよりも何倍も、何十倍も

暗くて、悲しそうだった

消えてしまった"感情"…?

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