蓮 理史の異常性

重だるい瞼を開けた。

まだハッキリとしない意識の中で、

見慣れない天井が目の前に あった。

連行されていく父さんの 後ろ姿がフラッシュバックする。

吐いたことにより胃が空っぽだけれど、

空腹感は微塵もなかった。

プルルルルルルル！

理史の言葉を遮るように、着信音が 部屋に響いた。

ドアノブに手をかけた時、

理史は何か言いたげだった。

でもそれより、俺は皐を優先した。

 ︎︎

天気はうざいくらいに 快晴だった。

なんとなく家に帰る気にはならなくて、

近場の公園にでも着いてから 折り返そうと思った。

理史の言った通りだった。

近所の人が、俺を見た途端 コソコソと会話を始める。

大人しくやり過ごそうと思っていた。

けれど、父さんが悪く言われて いい気はしない。

父さんを、人殺し呼ばわりするなんて。

思わず握っていた拳に 力が篭もる。

なんだよそれ。

父さんのこと、何も知らないくせに。

な、なんだこの………

近所の人たちは、やばいやつが来た と言わんばかりに

一目散に逃げていった。

ある意味俺を助けてくれたとも 言えるが、

俺を認知していることに恐怖を覚えた。

父さんの、部下の警官。

場の空気が変わった。

そうやって手を差し出す桧葉さんは

なんとも胡散臭い顔をしているけれど

ひとりぼっちになった俺にとって、

今は、誰よりも頼もしかった。

（同時刻：理史の部屋)