テラーノベル
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不破湊
自分でも理解できなかった。
何故辞めたんだ?
何故無意味に走った?
酒が回っても、俺は妙に冷静だった。
…いや、冷静ではなかったかもしれない
ただ必死に冷静でいようとしたんだ。
何故?
何が冷静でなくさせた?
不破湊
…そうだ、彼だ。
いつのまにか彼で脳がいっぱいになっていたんだ
初めてだった。
あんな一瞬だけで
あんな空っぽだった俺が、 こんなに興味を持ったのは
晴のせいで辞めた
晴のせいで走ったんだ、
…いや違う。
晴のおかげで、だ
俺にこびりついた雨は、 ポタポタと地面を鳴らし続けた。
あの瞬間を思い出した。
俺は逃げるように風呂に入った。
俺は考えない為にシャワーを浴びた。
…でも、やっぱり考えてしまう。
あのたった数分の記憶が、 脳内をめちゃくちゃにする
晴…
もっと知りたい。
もっと…
きっと運命だ。
いや…運命だ。
そうに違いない、絶対に、晴はきっと俺を救ってくれた…
救世主だ。
不破湊
酒のせいにして、狂ったように思い出し続けた。
あの数分、見つめた彼の姿を。
一目惚れとはこんな事を言うのだろう。
…きっと…、
僕は、ただ日常を過ごしていただけだった。
不破湊
自殺しようとした理由が「気まぐれ」?
何て悲しい人なんだろう
…こんなに飄々としているのに
甲斐田晴
何でそんな事を言ってしまうんだろう
甲斐田晴
悲しい
どんなに苦しいだろう
彼の目線は、信じられない程冷たかった。
なんて…なんて
脆い人なんだろう
僕にとって、彼はそんな人に見えた。
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