この作品はいかがでしたか?
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泣いて、笑ったぐちゃぐちゃな顔。
それを見合わせ、また笑った。
あぁ、こんなお腹の底から笑ったのは初めてだ
子供の時も、学校でも、 一度もこんなことは無かった。
それぞれの目尻に浮かぶ涙を拭い合う。
俺は、愛されたかった。
愛情を、向けて欲しかった。
認めて欲しかった。
肯定して欲しかった。
…こうして、笑い合いたかった。
とっくに、俺は手に入れてたんだな。
愛されていた。
認めて貰えてた。
肯定してくれた。
ありがとう。
ありがとう。
ありがとう…!
いくら言っても足りないくらい、
ごめんねと
ありがとうを
いっぱいいっぱい、伝えたい。
また、3人で抱きしめあった。
ふわりと優しく。
でも、しっかりと。
そんな時、ここにはいないはずの めんの声が聞こえてきた。
俺の名前を何度も呼んで、
逢いたいと。
察し、3人で顔を見合わせる。
くしゃりと、顔を歪めて、微笑む。
2人が来たところで、待っていようと。
この木に辿り着くまでの足取りは重かったはずなのに、今は走り出さんばかりに軽い。
2人に連れられて、
手を繋ぎながら歩き出す。
もう、離さないという意志を込めて。
はたして、”そこ”に着いた時、
案の定、きょろきょろと見回す人影が見える。
僕らは思いっきり、抱きついて。
「「「ごめんね。」」」
と一言。
驚きで大きく目を見開いためんの目から
ぼろぼろと大粒の涙が零れる。
思いっきり抱きしめられて、 そのままずるずるとしゃがみこむ。
めんの暖かさに包み込まれて、 ぎゅっと抱きしめ返す。
僕の服にしみがいくつもできる。
頭をふわふわと優しく撫でられて、いつもなら突き返すけれど、受け入れる。
その瞳には慈しみの色が浮かんでいた。
すっと立ち上がり、しゃがみこんだままのめんに向けて、手を差し伸べる。
めんは目を細め、くしゃりと笑って─── 手を取った。
───多分、この分だと、ドズルさんも。
4人で手を取り合い、 目を閉じて意識をシェアハウスに向ける。
なんとなく。ほんとに、勘で。なんとなく、 そうしたら逢える気がして。
目を開けたらそこは、思い描いた通りの場所で
倒れ伏していたのは、 枯れ枝のように細くなったドズルさんで。
きゅうと心を掴まれた気がした。
ここまで細いという事はろくに口にしていないのだろう。
目はうっすらと開けているけどぼんやりとしていて、遠いところを見ている気がした。
とっさに、その手を掴んでふわりと笑いかける
「「「「ドズルさん」」」」
と。
びくっと肩を揺らしたあと、視線をあげて。
僕らを視界に入れた途端、 目にハイライトが戻る。
まるでモノクロだった世界に 色が戻ってきたように。
口を開けて何かを言おうとしているが、
はく、はくと空を切る音がするだけで 声にならない。
必死に身体を起こそうとしているけれど、 そのやせ細った身体は動いてはくれない。
ふるふると震えながら弱々しく差し出された 右手をぱしっと握って。
「ただいま、ドズルさん。」
そう、囁く。
電気が消されたリビングは暗かったけれど、 僕らの周りだけは光が灯ったように 明るかった。
「お、かえり。皆。」
ドズルさんがか細く、でもしっかりと返した時
そっ、と目を閉じた。
そして、また目を開くと、
這いつくばっていた身体を起こして、すくっと立ち上がる。
また、あの時みたいに、 背筋をぴんと伸ばして、立っていた。
「「「「「じゃあ、逝こうか。」」」」」
綺麗に揃った声に、ぷっと吹き出す。
あははははは、そんな声が暗い家に響く。
今だけ、この家に再び光が灯っていた。
笑い声が徐々に震え、嗚咽が増えていく。
でも、笑った。笑って、笑いあった。
「皆、いるよね?」
誰かが呟く。 -口から声が漏れる。-
「「「「ちゃんと、居るよ。」」」」
「ほんとに、ほんと?」
「「「「ほんとに、ほんとだよ。」」」」
ぼんやりと滲んでいた視界を拭って、 もう一度、心の底から
笑いあった。
「ただいま。」
「「「「おかえり。」」」」
side 3
その声を皮切りに、 彼らの身体が光に包まれていく。
皆心からほっとしたような、切ないような、 それでいてとびきりの笑顔を浮かべたまま、 その身体が徐々に粒子になっていく。
───暗いリビングに残された最期の光の粒が消えた時、再び家は暗闇に包まれた。
コメント
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号泣案件(;´༎ຶД༎ຶ`)
感動作品👏 新作待ってるで。
めちゃくちゃこの作品好きでした