レウクラウド
んっ…う…
時が過ぎ、明るい日差しがガラスから俺の頬に届く。
いつの間にか寝かされた重い体を起こして正面を向いた。
シオン
……
教会の正面。
普通は神父が達、やってきた民に言葉を授ける場所で、彼女はただ目を閉じていた。
主に紫、黒をベースとしたステンドグラス。 赤いヒビも入っている
朝日に照らされて色の変わる影が彼女の頬を撫でていた
シオン
……起床なさいましたか?おはようございます…♪
こちらに気づけば優しく微笑んでくれる彼女だが、目が軽く腫れている。
寝起きで朝が弱いのだろうか…
レウクラウド
おはよう……ございます
レウクラウド
今は何を…?
シオン
ここは教会ですよ?
シオン
自分の進行する神様に祈りを捧げる。普通のことでしょう…?
レウクラウド
そう…ですけど…
普通とは言えど、他に人はいないのか…?
キョロキョロと見回しても、俺たち以外に人は見当たらない。
?を浮かばせる俺を見て、彼女はクスクスと笑って
シオン
そうです
シオン
見た通り、今は私と貴方様しか居ませんよ。
レウクラウド
えっ…
シオン
神父様は居ません。
シオン
シスターとして私が1人、
ここで毎日祈りを捧げるだけにございます。
ここで毎日祈りを捧げるだけにございます。
シオン
たまに参拝者は起こし致しますが…
シオン
まぁ、大体は私1人がここで暮らしているだけにございます。
レウクラウド
1人…
シオン
えぇ。
1人でここにいるのも少々退屈ですし、道端で寒くて震えているところを見捨てる訳には行きませんでしたから。
1人でここにいるのも少々退屈ですし、道端で寒くて震えているところを見捨てる訳には行きませんでしたから。
レウクラウド
…信仰
シオン
はい?
レウクラウド
信仰を捧げている神様って…
シオン
あぁ…えっとー、信仰って言っていいのかは分かりませんが…
シオン
『シュブ=ニグラス』です。
レウクラウド
呼び捨て…
シオン
信仰ではありませんからね
レウクラウド
それはどう言う…?
シオン
シュブ=ニグラスの事、ご説明致しますね。
シオン
シュブ=ニグラス、それは木の根のような触手を振り回して周りの物を壊し食う化け物。
シオン
しかし、その姿になるには色々と条件がございます。
シオン
元々の姿は真っ黒な羊。白い羊の群れの中に生まれ、色が違うそれだけでいじめの対象となります。
レウクラウド
っ…
『色が違うだけ』という言葉が少し引っかかった
シオン
条件が揃えば白い羊は石のように固まり、シュブ=ニグラスに食われ、養分となります
シオン
条件は人間の子供の生き血などと難しいものが多いのですが…
シオン
そんなシュブ=ニグラスにも奥さんや子供もいます。が、
シオン
『嫌われ者』なのです。
レウクラウド
嫌われ者…?
シオン
はい。彼は誰からも嫌われ者でした。
シオン
周りの白い羊にも、子供にも、そして奥さんにも
シオン
誰にも愛されずに周りのものを食い狂うだけ。
シオン
私はそんな彼に手を伸ばしたかった、ただそれだけにございます。
シオン
彼がどう思おうと、誰がなんと言おうと、私は願い続けます。
シオン
……私も、愛されたかったから…
レウクラウド
…
最後に聞こえた虫の音のような小さな言葉。
彼女は笑う、俺はどうしたら良かったんだろうか