少女はビルの屋上にあるフェンスの向かう側に佇んでいた。
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....何やってるの?
後ろから聞こえる声に少女は振り返った。
屋上の真ん中に一人の少年が立っていた。
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.....何やってるの?そんな所で
少女は少年の言葉を無視し、満天に輝く星空を見た。
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...えっと、あの...
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あなたこそ、ココに何しに来たの?
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え?僕は...ただ涼みに
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こんな夜中にこんな所で?
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え、うん...
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ふーん
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君はそんな所で何してるの?
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星...
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え?
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ココから見る星が凄くキレイなの..色んな事を忘れさせてくれる
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...何かあったの?
少女はその場に座り込み顔を伏せた。
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あ、..ごめん。気に触る事言ったなら謝るよ
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.....本当は死ぬためにここにきた
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え?
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私、今の世の中が大嫌い。
神様も人間も大嫌い
神様も人間も大嫌い
少年は少女の元へゆっくり歩み寄り、フェンスの前で足を止めた。
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どうして私は生まれてきたんだろう。
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.....どうしてお母さんは私が嫌いなのに私の事産んだんだろう
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.....
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お父さんもお母さんもクラスメイトも私が嫌いだから殴るんだ..だったら私なんていない方がきっとみんな喜ぶ
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そうかな?君のこと好きな人がいるかもしれないよ
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居ない。そんなの...居るわけない
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どうしてわかるの?
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わかる。
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みんな...私を見ると顔が歪む。
私が近づくと離れていく
私が近づくと離れていく
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私が話しかけると...殴ってくる。だから、わかる
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....
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あなたには私の気持ちなんてわからないよ
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わかるよ
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え?
少女は振り返り少年を見た。
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僕も君と一緒で誰からも愛されなかった。
自分の居場所がないんだ..
自分の居場所がないんだ..
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だから僕もココに来たのは、本当は死のうと思って
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...お父さんとお母さんに殴られるの?
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両親は僕が小さい時、施設の前に僕を捨てた
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それが原因でクラスメイトから無視されたり、教科書隠されたり...殴られたりした
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.....
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だから、君と僕は一緒だ
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....
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そっちに行ってもいいかな?
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...うん
少年はフェンスをよじ登った。そして、少女の隣に座り込み星を見た。
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本当にココから見る星はキレイだね
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...うん。辛いことがあった時、よくココで星を見てた
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そっか..じゃあさ今度は僕と一緒に、またココで星を見ようよ
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え?
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この場所は二人の秘密の場所だね
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私..死ぬつもりなんだよ?
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そうだね。それは僕もだよ。でも君に出会って少しだけ生きてみようって思った
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どうして?私はあなたに影響を与えられるような人間じゃない
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そんなことないよ
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だって...私、私...誰からも愛されてないし必要とされてない
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僕は君を必要と思ったし、好きだよ
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....なんで初めて会ったばかりの私にそんな事言えるの?私の事何も知らないのに
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これから知っていけばいいよ、お互い
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.....
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初めて君を見たとき、この満天の星空が霞むぐらい君が輝いてとてもキレイだった
少年は少女を見ながら優しく微笑んだ。
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お互い、誰からも愛されてないだろ?だったら、僕の愛情を君にあげる
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だから、少しで良い。君の愛情を僕に頂戴
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...ふふっ。何それ
二人はお互い顔を見合わせて笑った。
少女の笑顔はキレイに輝く満天の星空よりも美しかった。
それから二人は色んな話をした。 好きな本や好きな教科、好きな食べ物。
それは二人にとってどんな辛い事も忘れられる程、幸せな時間だった。
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ありがとう。君と色んな話を聞けて楽しかった。
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私も楽しかった。ありがとう
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この後、どうするの?
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.....帰るよ
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...大丈夫?
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うん...
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君がもし..もし嫌じゃなければウチに来る?
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え?
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実は僕、施設を出て一人暮らしをしてるんだ。だから、もし君が良ければ..家に来る?
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ありがとう....でも、帰るよ
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そっか...じゃあ明日、またココで会おう
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うん..楽しみにしてる。
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......じゃあ、バイバイ
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うん。バイバイ
二人はまたココで会う約束を交わし別れた
しかしその約束が果たされることは二度となかった。
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