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紺君のお母さんと別れた私は、その場を逃げるように自宅に戻った。

言いようのない不安ばかりが押し寄せてくる。

綾子

…どうしよう

やるべきことは、分かっている…でも…

綾子

真実を知るのがこんなに怖いなんて…

パスポートを持ってきちんと入国したのだから、命に関わる事件ならば、紺君のお母さんにも知らせがあるはずだった。

綾子

何か隠したいことがあるって話だった…

綾子

死ぬよりも最悪の事態って、何?

綾子

紺君…

今日はどんな本を持っても、読み進める自信がなかった。

放心したように、部屋の中で立ち尽くしたまま、朝を迎えた。

翌朝

結局一睡もしていない私は、勇気を出して行動することにした。

綾子

このまま考えてたって、仕方ない

数ヶ月前、紺君から貰った栞を手に取り、祈るような気持ちで、役所に片っ端から電話をかけた………

その日の夕方には、握りしめていた栞は、もはやシワクチャになっていた。

ずっと紺君と私を、繋いでいたもの。

綾子

まるで、今の私と紺君みたいだね…

涙が溢れて止まらなかった。

綾子

紺君のお母さんに電話しなくちゃ…

綾子

でも、どう説明したらいいの…?

頭の芯がズキズキする。私の心の痛みそのものみたいに。

私は、紺君のお母さんと電話がつながったところを最後に、意識を手放した………

気がついた私は、白い部屋で寝かされていた。

綾子

ここは、どこ…?

私の声が聞こえたのか、紺君のお母さんが姿を見せた。

紺君のお母さん

良かった…!気がついたのね

綾子

え…?

紺君のお母さん

私と電話中に、倒れた音が聞こえたの。だからすぐに救急車を呼んで良かった…

紺君のお母さん

ごめんなさい…私のせいで…

ゆっくりと、記憶が蘇る。

綾子

紺君…紺君が…

紺君のお母さんは私の話を促そうとしたけれど、お医者さんらしい人が、制止した。

医者

今意識が戻ったばかりですから…それに今日はもう遅い…

紺君のお母さんは私とお医者さんに頭を下げて、部屋から出て行った…

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