信じてたよ 。 君達は 。

ねぇ お師匠

俺はもう 立派な大人で

立派な殺し屋だよ

そんな心配しなくてもいいじゃん

…… そんなこと 言いたかったな

もう お師匠の手からは離れたよって

口角を上げて 言いたかったな

そしたら お師匠 なんて言うだろう

まだまだ俺からしちゃ 子供だぞ ?

…… とか 言いそうだな

相変わらず 俺を子供扱いするのはやめて欲しいな

俺だって

立派な大人で

立派な殺し屋で

立派なお師匠を持ってるんだから

…… でも

心はまだ 未熟で

弱虫で

躊躇して

怒れなくて

言い出せなくて

……

弱虫は しぶとく生きるしかないんだよ

周りを照らす キャンドルみたいに

人に火という名の自信をつけられて

勝手に燃え尽きて

もういっその事

波に流されて

無気力に漂って

最後は溶けてなくなっちゃう

海月になりたいな

…… 何処ここ …?

……

…… あ゛～

なんか

枕が ないこさんの柔軟剤の匂いする ……

…… いい匂い …

…… 何 してたっけ

何があってここにいるんだ …… ?

…… ぁ

…… 酷いとこ 見せちゃったな

過去の自分を殴りたい ……

……

…… とりあえず 窓から脱出する …?

…… ぇ いいよね ?

…… 裸足痛そ ｯ

…… でも あの痛さよりはマシか

…… よしｯ

…… ぇ ?

すちおさん この家に住んでたの ?

…… え タイミング …

張り切ってすごい声出ちゃった

やっべ☆

お口ツルツル滑っちゃう☆

ノリいいなこの人

久しぶりに見た 。

お師匠の泣き顔 。

年齢のせいか シワシワになった頬に 涙が流れる

俺より大きかったお師匠が 今では見下ろせるようになった

俺より小さな

強くて

強い心を持ってて

人を救えて

尊敬する老父が

目から涙を流している

視界が だんだんとぼやけてくる

頬に 冷たい一筋の涙が通る

床に 水が落ちる

それを拭おうとして 手を伸ばす

でも どんなにどんなに拭っても

溢れ出る水は止まらない

だんだんと 足に力が入らなくなって 座り込む

拭っても 拭っても

どんなに拭っても

どんなにどんなに拭っても

泣いたという事実からは逃れられないやｯ

やっぱ

弱虫で

泣き虫で

信じることが出来ない

最低なヤツには

涙が止まらない呪いがかかってしまうんだ

子供の頃は

泣かなかったのに

子供の頃は 強い心を 信じる心を持ってたんだな

部屋には 18つの音の嗚咽が響き渡る

俺は 人を殺した手で 涙を拭う 。