テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
澤野 葉月(さわの はづき
澤野 葉月(さわの はづき
昼休み、教室の前に並べられた大量のダンボール。
来週に迫った学園祭の準備で、美有はせっせと力仕事を任されていた。
枷場 美有(はさば みゆう
箱が思ったより重くて、足元がよろける。
美有がバランスを崩しかけた、その瞬間。
枷場 信乃(はさば しの
ひょい、と信乃が軽やかに箱を受け取った。
細い腕なのに、なぜか危なげなく支えている。
枷場 美有(はさば みゆう
美有が小さくつぶやくと、信乃は一瞬だけこちらを見て、小さく頷いた。
それだけだった。
それだけのことなのに───周囲は、騒がしく反応した。
小坂井 佳穂(こざかい かほ
河口 佐和(かわぐち さわ
冗談交じりのクラスメイトの声。
でも美有の耳には、どうしても「あんたより信乃が頼りになるよ」って聞こえてしまう。
机の陰にしゃがみながら、ふぅ、とため息をつく。
枷場 美有(はさば みゆう
信乃に助けられたとき、ちゃんと「ありがとう」って言った。
でも、心の奥ではずっとモヤモヤしてた。
やる前から「どうせ私じゃ無理」って思われてる気がして。
何をしても、信乃の方がちゃんとして見えてしまう。
枷場 美有(はさば みゆう
ふと目を上げると、教室の隅で信乃が何かメモを取っている。
その顔は真剣で、冷静で、まっすぐで。
まぶしすぎた。
そして、美有は思ってしまった。
枷場 美有(はさば みゆう
その思いは、小さな棘みたいに、心に刺さったまま抜けなかった。