テラーノベル
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『その背中に、風穴を』
暗闇の中、銃声が一発、静かに響いた。 ーーパン、という乾いた音。
それだけだったはずなのに、時が止まったような、鈍い世界が広がる。
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なおきりの足がふらついた。 体の奥に、熱と冷たさが同時に湧き上がる。
えとは振り返る。 ゆっくりと、なおきりがその場に崩れ落ちていくのが見えた。
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地面に膝をついた彼の背中から、 赤いしぶきが滲んでいた。 血の色は、妙に鮮やかで。 その分、現実が遠ざかる。
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敵はーー味方のはずだった者。 えとのかつての上官、“ゼロ”と呼ばれた男が、 まだ煙を上げる銃口を持って、立っていた。
「ターゲットの排除。任務完了だ」
無機質な声に、怒りよりも先に、 えとの中にあったのは ーー恐怖。
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えとは駆け寄り、なおきりの体を抱きとめる。 その顔は、血の気を失いながらも、まだ笑おうとしていた。
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えとの手が震える。 なおきりの手は、逆に穏やかだった。
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なおきりの唇が、わずかに動く。 何かを言おうとして、けれど、言葉にならず
その代わりに。 なおきりは、えとの手を握った。 血に濡れた手で。
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えとの瞳が滲む。 その涙が、なおきりの頬に落ちた瞬間。
彼の瞼が、そっと閉じた。
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どれだけ呼んでも、返ってこない。
時間が止まったみたいな沈黙の中で、 えとは、なおきりの体を抱きしめたまま、 泣き声を押し殺した。
ーーだけど、その涙の奥には、怒りと覚悟が確かにあった。
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えとの目が、まっすぐに“ゼロ”を見る。
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ーー決戦は、ここから。
えとは立ち上がった。 なおきりの体から、そっと手を離して。 その瞳には、涙の代わりに“火”が宿っていた。
組織ーー壊す
銃を握り直す。 その手には、まだなおきりの血が滲んでいた。
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えとは、無線機を取り出すと、震える声で告げた
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そのまま何も答えず、えとは静かにターゲット“ゼロ”を見つめる。
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「えと。お前はただの駒だ。情を持った時点で、終わりなんだよ」
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えとは、足元から転がってきた手榴弾を一蹴りし、爆煙の中に消えた。 ーー目的はただ一つ。
組織の中枢を、潰す。
『反撃の牙』
深夜。 隠れ家に戻ったえとは、なおきりの血で汚れた服を脱ぎ捨てる。
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鏡に映る自分の顔が、強くて、悲しかった。 思い出すのは、なおきりの手の温もり。 からかい交じりの声。作戦中、ふと見せた本音。 ーーそして、最後の言葉。
『君に出会えて……よかった』
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震える唇を噛み締めて、 えとは、封印していた“秘密兵装”のスーツケースを開けた。
中には、黒いスーツと、改造銃。 そして、コードネーム(クロス•アポストル)のバッジ。
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装備を身につけ、髪を一束、鋭く縛る。 戦う女の目になった。
えとは静かに呟いた。
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その瞬間、無線が微かに反応した。
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えとの体が跳ねた。
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かすかな、でも確かに彼の声。 なおきりの心拍モニターが、病室で反応した。
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えとの目が潤んだ。 でも、もう立ち止まらない。
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『コードネーム:ラブエージェント』 MISSION:LAST ORDERー組織殲滅作戦ー
《舞台:旧首都•地下施設“オメガルーム”》 地下32階。 高層ビルの地下深くに、存在すら抹消された秘密施設がある。 そこが、なおきりとえとが所属していた敵対スパイ組織ーー
そして、ふたりを使い捨てようとした“黒幕”の居場所だった。 今夜、この場所をふたりで終わらせる。
22:12 侵入開始
えとが指をぱちんと鳴らすと、瞬時に警備システムがブラックアウトした。
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爆薬で鍵を焼き切ると同時に、閃光弾が通路に炸裂。 警備兵たちは視界を奪われ、えとの弾丸が正確に沈めていく。
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22:26 ラボブロック:敵幹部との交戦
なおきりの背後から、巨大な男が襲いかかる。 床に転がるえとのナイフを、足で蹴り上げ ーー空中でキャッチ、即投擲(そくとうてき)
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刃は男の喉元を貫いた。 なおきりは少し肩で息をしながら、笑う。
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そこへ、通路の奥から機関銃の音。
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なおきりがえとを押し倒し、壁へ身体を寄せる。 弾丸が二人の肩先をかすめて、火花を散らす。
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なおきりは懐(ふところ)から小型EMPグレネードを取り出した。
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EMPが炸裂し、兵士の銃が一斉に沈黙ーー その隙を突いて、ふたりは一気に突破する。
22:39 本部中枢“オメガルーム”
分厚い防弾扉の前。 中には、“上司”だった男ーーゼロが待っている。
「ようこそ、“裏切り者”たち。愛を語って死にに来たか?」
えとはにやっと笑った。
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戦闘が始まる。 ゼロは超高性能義手を使い、銃弾をはじく。 なおきりの一発、えとの一撃も弾かれ、壁に弾ける。
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なおきりはわざと撃ち漏らし、弾を切らせる動作を見せる。 ゼロがその隙を狙って飛びかかる ーーその瞬間。
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背後。 えとの銃口が、ゼロの後頭部にぴたりと。
パンッ。
鈍い音が響いた。
重力に引かれて、ゼロの身体が崩れる。 その目が、最後まで見ていたのはーー かつて自分が「道具」として扱った、ふたりの“失敗作”だった。
22:54 脱出、そして爆破
施設に仕掛けた爆薬のカウントが始まる。 制限時間は3分。
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二人は階段を駆け上がる。 崩れてくる天井、揺れる地面、鳴り響く警報。 そしてーー 最後の非常扉が開いた瞬間、夜風の風が、ふたりの髪を揺らした。
23:00 “終わり”の花火
ドンッーー!
空を割るような大爆発。 地下施設は、跡形もなく吹き飛んだ。
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月明かりの下、えとがつぶやく。
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えとの手が、そっとなおきりの手を握る。 もう、離さない。誰にも奪わせない。
そしてふたりは、夜の闇の中へ歩きだした。
『シーン:海辺のチャペル•夕暮れ』
潮風が香る浜辺に、小さな白いチャペル。 服の下にまだ包帯や巻いたなおきりは、ゆっくりとひざをついた。
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そう言って、えとへ差し出したのはーー
小さな、小さな箱だった。
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えとは、しばらく黙ったあと ーーにやっと笑った
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そっと手を重ねる。 指輪が、ぴたりと薬指におさまった。
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ふたりは、微笑み合った。
《ラストカット:どこかの国の市場、賑やかな雑踏の中ーー》
サングラスをかけたふたり。 手をつなぎ、笑いながら歩いている。
街の片隅、古びた公衆電話の中ーー 新しい任務指令が、ガチャンと落ちてくる。
えとは電話を手に取り、からかうように笑った。
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ふたりの背中に、夕日が差し込んで ーー物語は、幕を閉じた。
💍次回予告:(もうないけど) 「私があんたを守るって決めたんだから、最後まで背中預けなさいよね」 「……はい、お姫様」
🌹完🌹
コメント
4件
完結おめでとう!!! 相変わらず神すぎるって✨✨✨ これ何千回何万回読んでも飽きない よ😭😭 これからも頑張れ!!!
完結お疲れ様ぁ ー ! ! 🌹✨ いやこれは泣くしか無くない !? 終わり方も最高すぎなん だよぉお ! ! ! ! 🥲︎ 長い連載ほんとにお疲れ様でした! いいねは任せてください 👍🏻