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見えるわけがない
こんな闇夜じゃ
どんなに目を凝らしても
目の前には黒い河
水音だけが聞こえている
行きたくない
行きたくない
行きたくない
優奈
あ、おはよう！
かなえ
おはよう……
優奈
晴れたね！
優奈
昨日夜中雨すごくなかった？
優奈
カミナリうるさかったし
優奈
窓の外ピカッて光って怖かったぁ
かなえ
うん
かなえ
雨の音はすごかったけど
かなえ
ぐっすり寝ててカミナリ鳴ったの知らなかった
優奈
えー！ うそぉ
優奈
よく寝られるねー
優奈
音すごかったのにー
かなえ
わたし、一度寝たらなかなか起きないんだ
優奈
えー、そうなのー？
優奈
いいなぁ
優奈
あたしは眠り浅くってー
何か
理由があるわけじゃない
友達関係も
勉強も
先生のウケだって良い方で
でも
毎日が
息苦しい
文香
ねえ、聞いた？
優奈
何何？
文香
エリカ、学校辞めるって
かなえ
え？
優奈
えー？ なんでなんで？
文香
できちゃったらしいよ
優奈
できちゃったって……
優奈
えー！？
文香
あ、でも、相手社会人で、結婚するらしいけど
優奈
えー、まじでー？
優奈
すごい意外！
文香
ねー！
優奈
エリカ成績もイイし！ マジメだったのに
優奈
えー、社会人の彼氏とかマジかー
かなえ
休学とかできないの？
文香
あー、ダメだよ
文香
うち、一応進学校だから
文香
進学率とか進学先とかに響くから
文香
中退は統計に含まれないからね
優奈
えー、ひどーい
文香
でもさ
文香
エリカも留年してまで残りたくないでしょ
真っ暗で
行き先が見えない
自分が何者で
どこへ行こうとしているのか
この先「何か」になれるのか
何も、わからない
抜け出したい
逃げ出したい
優奈
今日どこか寄ってくー？
文香
いいねー！
かなえ
わたしは、やめとく
優奈
えー？ なんでなんでー？
かなえ
うん、ちょっと
優奈
かなえ、元気なくない？
かなえ
そんなこと
かなえ
うーん？ ないことないかなー？
優奈
えー！？
優奈
気晴らしにカラオケでも行きたかったのに
文香
まぁ、今日はやめとく？
優奈
えー？
かなえ
2人で行ってきて！
かなえ
わたしのことは気にしないで！ ね？
文香
わかった！
文香
ほら、行こ？
優奈
……うん
優奈
今度はかなえも行こうね！
かなえ
うん
かなえ
ごめんね
かなえ
……あれ？
かなえ
エリカ？
かなえ
（あんなところに座り込んで……）
かなえ
（泣いてる）
かなえ
（どうしたんだろう）
かなえ
（……声、かけづらいな）
エリカ
あ
かなえ
あ
エリカ
かなえ……
エリカ
……聞いた？ よね
かなえ
うん
かなえ
学校辞めちゃうって
エリカ
うん
かなえ
えっと
かなえ
身体、大丈夫？
エリカ
うん
かなえ
……
エリカ
ごめんね
エリカ
気を遣わせちゃって
かなえ
ううん、全然……
エリカ
私ね
エリカ
こんなことになって
エリカ
怖くて
エリカ
もちろん、自分のせいなんだけど
エリカ
なんか
エリカ
今までずっと無難な道？ 選んで来たから
エリカ
普通じゃなくなるの、怖くて不安で
かなえ
うん
エリカ
情緒不安定かな？
エリカ
家ではさ、絶対産むって啖呵切っちゃったし
エリカ
彼には……一緒に頑張れるって、強がっちゃって
エリカ
私……
かなえ
うん
エリカ
かなえにこんな話、ごめんね
かなえ
いいよ、全然
かなえ
なんか……
かなえ
何も言えないけど
かなえ
聞くだけなら、できるから
エリカ
ありがとう
ここから抜け出せないのも
違う場所に行くのも
怖い
どこに行っても
「何」かわからない「自分」
何もない
ただふつうに続いて行く毎日
エリカ
……5年後に
かなえ
え？
エリカ
5年後に会ってくれない？
かなえ
5年後？
エリカ
うん
エリカ
今は先のこと、あんまり考えられないけど
エリカ
5年後にかなえに会うと思ったら
エリカ
頑張れる気がする
かなえ
わたし？
エリカ
うん
エリカ
かなえがいい
かなえ
……わかった
不安で
押しつぶされそうで
怖くて
逃げたくて
逃げられなくて
それでも
どこかへ向かって
進んで行くのだろう
時には立ち止まっても
それでも
前に進もう
かなえ
わたしも
かなえ
エリカに会えるように頑張る
かなえ
うん、頑張ろう
エリカ
うん
エリカ
私もこれで良かったんだって
エリカ
思えるように
エリカ
それでかなえに胸張って言えるように
エリカ
頑張るよ
前に進め！
電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
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