白河
5年前…
昏宮
白河 陽向は死人である。
生前の名を白河 陽向 (しらかわ ひなた) という。
白河 陽向の世界は常に暗かった。
冷たいコンクリートで出来た 地下室が陽向の居場所だった。
父親が愛人との間に作った 子供であり、白河グループの 隠し子であった 彼は、物心着く前から 地下室に幽閉されていた。
製薬会社白河グループの 主に黒い部分の新薬は 全て白河陽向によって 臨床実験がされており、 薬の体制はここから 来たものである。
元から心など白河には なかった。 元から死んでいたのかもしれない。
そんな彼が生きる希望を得たのは 17歳の時のことである。
ひなた
時計のない地下室で 時間を知る方法は音のみだ。 視界を閉ざしているような 暗闇の中では 感覚が研ぎ澄まされる。
陽向は地下で過ごすうちに 酷く耳が良くなっていた。
ひなた
ひなた
ひなた
ひなた
音から全て察して、 きっと邪魔者の自分は 捨てられるのだろうと ただ落胆する訳でもなく 理解した。
ひなた
やがて静まり返る屋敷内。
定期的な栄養補給もなくなるから ゆっくりと身体は 死に向かうだろう。 ただその事に安堵する。
時間の感覚もなくなって ゆっくりと手足が痺れていく 身体が重くなって、 やがて視界も霞む。
ひなた
呼吸が徐々に薄れていく。 しかし、 解放に向かうその道は突如として 閉ざされたのだった。
ひなた
ひなた
ひなた
???
???
???
騒がしい声が何を言っているか 理解も出来ずに白河 陽向は 地上に引き摺り出された。
気がつくと知らない天井が 視界いっぱいに写った。
部屋は明るく、 柔らかな感触が肌に触れていた。 明らかに地下室ではない。
ひなた
ひなた
???
ぼんやりとしたまま やせ細った自身の手を眺めていた 陽向は 聞き覚えのある声に 肩を揺らした。
見やった先に居たのは 白髪に赤い瞳、チャイナ服の男。
ひなた
誠一郎
誠一郎
ひなた
誠一郎
誠一郎
ひなた
誠一郎
ひなた
誠一郎
誠一郎
誠一郎
ひなた
ひなた
誠一郎
誠一郎
ひなた
誠一郎
父親と母親が死んだこと、 自身の現状、 ここが何処か等、 誠一郎は陽向にも 分かりやすいように教えてくれた。
誠一郎
誠一郎
ひなた
あの時、しらかわ ひなたは死んだ。 ひなたは、まともな生き方など 知らなかった。 でも、命の恩人には生涯を掛けて 恩返しをしたいと この時確かに思ったのだ。
誠一郎
誠一郎
誠一郎
こうして、 この怪しい男に 救い出されてしまったことから 白河 陽向は第二の生を始めることになったのだ。
白河
昏宮
昏宮
昏宮
白河
昏宮
昏宮
昏宮
白河
白河
昏宮
白河
白河
昏宮
白河
昏宮
昏宮
麻沼
白河
昏宮
昏宮
黒澤
昏宮
麻沼
麻沼
昏宮
麻沼
麻沼
麻沼
昏宮
白河
黒澤
おしまい。
コメント
63件