テラーノベル
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郁不
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☆主☆
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高校一年の春。 入学式の帰り道も、 結局俺たちは一緒だった。 「クラス離れなくてよかったな」 佑一郎がそう言って笑う。 俺は肩をすくめる。 「別に。家隣なんだからどっちでもいいだろ」 生まれたときから家が隣。 幼稚園も小学校も中学も同じ。 そして高校まで一緒。 腐れ縁。 ……のはず。 「悠誠さ」 「なに」 「高校入ったら彼女作る?」 は? 「なんでそんな話になるんだよ」 「なんとなく」 横顔がちょっと真面目。 俺はわざと笑う。 「作んねーよ。めんどい」 本当は。 “彼女”って言葉に、少しだけ胸がざわついた。 佑一郎が誰かと付き合う未来を想像したら、 なんか、嫌だった。 でも言えない。 だって俺たち、ただの幼なじみ。 ――の、はず。 放課後。 部活見学の帰り、昇降口。 女子が佑一郎に話しかけてる。 「背高いね! バスケ部入るの?」 距離、近い。 俺は靴ひもを結ぶふりして視線を落とす。 どうせ幼なじみだし。 どうせ、俺はただの。 「悠誠」 声。 顔を上げると、佑一郎が立ってた。 さっきまで話してた女子はもういない。 「帰ろ」 「……おう」 俺は立ち上がって靴箱を閉める。 外に出ると、春の風が少し強い。 しばらく無言で歩く。 「さっきの子さ」 佑一郎がぽつっと言う。 「同じクラスだった」 「へぇ」 興味ないふり。 「バスケ部誘われた」 「ふーん」 俺の声、思ったより冷たい。 沈黙。 数歩歩いたあと、佑一郎が笑う。 「悠誠、機嫌悪い?」 「別に」 即答。 「嘘。分かりやすい」 ムカつく。 幼なじみってこういうとこ嫌だ。 「ただ、靴ひも結んでただけだし」 「結びながらめっちゃ見てた」 ……バレてた。 俺は顔をそらす。 「だから何だよ」 佑一郎が少し近づく。 「嫉妬?」 「違う」 即答。でも声が弱い。 しばらく歩いて、家の前の道に着く。 昔から何回通ったか分からない道。 佑一郎が急に立ち止まる。 「悠誠」 「なに」 真面目な顔。 「俺さ」 一歩近い。 「彼女作る気ない」 心臓、ドンって鳴る。 「……なんで」 「好きなやついるから」 空気、止まる。 俺は反射的に笑う。 「は? いつの間に」 胸が痛いのに、平気なふり。 「誰だよ」 聞きたくないのに聞く。 佑一郎は、まっすぐ俺を見る。 「幼なじみ」 ……え。 「ツンデレで」 一歩近づく。 「照れると話流す」 ……待て。 「名前は」 距離、すぐ目の前。 「大塚悠誠」 頭、真っ白。 「……は?」 声、裏返る。 佑一郎が少し照れた顔で笑う。 「ずっと前から」 心臓、暴れる。 「悠誠しか見てない」 俺は言葉が出ない。 幼なじみ。 ずっと隣にいたやつ。 そんな風に見られてたなんて。 「……お前」 やっと出た言葉。 「それ、反則だろ」 顔、熱い。 佑一郎が少しだけ不安そうに言う。 「嫌?」 俺は数秒黙ってから、 そっぽ向いて小さく言う。 「……嫌じゃねーよ」 「え?」 「むしろ」 俺は勇気出して言う。 「俺も、たぶん」 ドキドキしながら顔を上げる。 「お前好きだし」 数秒の沈黙。 そのあと、 佑一郎がめちゃくちゃ嬉しそうに笑った。 「やっと言った」 「うるせー!」 でも。 幼なじみだった俺たちは、 この日から少しだけ関係が変わった。 次の日の朝。 家を出たら、いつものように佑一郎がいた。 「おはよ」 「……おう」 いつも通り。 ……のはずなのに。 なんか変。 昨日まで普通だったのに、 今日は顔を見るだけで心臓うるさい。 だってこいつ、 俺の彼氏。 ……彼氏。 「悠誠?」 「な、なんだよ」 「顔赤い」 「寒いだけだし!」 春なのに。 学校までの道。 距離が妙に意識される。 昨日まで肩ぶつけて歩いてたのに、 今日は微妙に離れてる。 沈黙。 佑一郎がぽつっと言う。 「付き合ったのにさ」 「……うん」 「なんか距離遠くない?」 図星。 「気のせいだろ」 俺は歩くスピードを上げる。 その瞬間。 手首を軽くつかまれる。 「悠誠」 「なに」 振り向く。 佑一郎がちょっと困った顔。 「昨日まで普通だったのに」 「……」 「彼氏になった途端よそよそしい」 うるさい。 俺だって混乱してる。 「だって…」 言葉が詰まる。 「お前、急に彼氏とか言われても」 顔熱い。 佑一郎が少し笑う。 「かわいい」 「うるせー!」 そのあと、少しだけ真面目な声。 「じゃあさ」 「なに」 「少しずつ慣れよ」 そう言って、 俺の手をそっと握る。 ドクン。 「……!」 「嫌?」 周りに人はいない朝の道。 俺はしばらく黙ってから、 小さく言う。 「……離すなよ」 「うん」 そのまま、手をつないで歩く。 幼なじみだった距離。 でも今は少し違う。 ぎこちないけど、 前よりずっと近い。 朝、手をつないだまま学校に着く。 校門が見えた瞬間、俺は手を離した。 「……」 「……」 二人とも同時。 「今の危なかったな」 佑一郎が小さく笑う。 「当たり前だろ。学校だぞ」 昇降口で靴を履き替える。 そのとき。 「おー、大塚! 朝から佑一郎と一緒?」 クラスの男子。 ビクッ。 「家隣だから普通だろ」 俺は平然を装う。 でも。 教室に入ると、佑一郎が俺の席の横に来る。 距離近い。 「悠誠」 「なに」 「手」 「は?」 机の下で、 佑一郎が俺の指に触れる。 「やめろ!」 小声で言う。 「誰か見てたらどうすんだよ」 「見えないって」 軽く言うな。 そのとき。 後ろの席の女子が振り向く。 「ねぇ」 ビクッ。 「大塚くんと佑一郎くんってさ」 心臓止まりそう。 「めっちゃ仲いいよね」 ……セーフ? 俺は肩をすくめる。 「幼なじみだし」 女子は笑う。 「いいなーそういうの」 前を向く。 俺は小さく息を吐く。 でも。 机の下。 まだ指、触れてる。 「佑一郎」 「ん?」 「離せ」 「やだ」 「お前な……」 顔上げると、佑一郎が楽しそうに笑ってる。 昼休み。 俺は廊下でクラスの女子に呼ばれる。 「大塚くんってさ、数学得意?」 「まあ普通」 「今度教えてくれない?」 距離、ちょっと近い。 そのとき。 後ろから声。 「悠誠」 振り向くと佑一郎。 でも、なんか空気違う。 「何」 「昼メシ行くぞ」 いつもより短い言い方。 女子は「またね」と去る。 俺は佑一郎を見る。 「どうした」 「別に」 歩き出す。 でも。 階段の踊り場で急に止まる。 「さっきの子」 「何が」 「距離近くない?」 え。 「普通だろ」 「普通じゃない」 声、少し低い。 「俺の彼氏なんだけど」 ドクン。 「……お前」 こんな言い方初めて。 俺はちょっと笑う。 「嫉妬かよ」 佑一郎は少し黙ってから、 小さく言う。 「……悪い?」 その顔、真面目。 俺は一瞬固まって、 それから袖を軽く引く。 「安心しろ」 「?」 「俺、そんな簡単に取られねーから」 佑一郎が少し驚いた顔。 「お前のだろ」 言ってから顔熱い。 佑一郎、数秒止まる。 それから小さく笑う。 「……やば」 「何が」 「好きすぎる」 「うるせー!」 でも。 そのあと二人で笑った。 放課後の教室。 ほとんどの人は部活に行って、 残ってるのは俺と佑一郎だけ。 「数学分かんね」 俺はノートを見ながらつぶやく。 佑一郎が椅子を持ってきて、 俺の横に座る。 近い。 「ここさ」 ノートをのぞき込む。 肩、当たる。 ドクン。 「……近くね?」 「見えない」 平然としてる。 「お前、わざとだろ」 「ばれた?」 笑うな。 そのとき。 佑一郎が俺のシャーペンを持つ。 「こう」 手を重ねるみたいにして書く。 距離ゼロ。 心臓うるさい。 「佑一郎」 「ん?」 「近い」 顔、ほんの数センチ。 佑一郎も少し固まる。 沈黙。 窓から夕日。 「悠誠」 小さく呼ばれる。 「……なに」 佑一郎が少しだけ顔を近づける。 俺も動けない。 あと少しで―― ガラッ。 教室のドアが開く。 「おーまだいたのか!」 クラスの男子。 二人同時に離れる。 「……」 「……」 男子は気づかず笑う。 「早く帰ろーぜ」 危なすぎた。 俺は顔をそらして小さく言う。 「学校でやるな」 佑一郎が小さく笑う。 「未遂だし」 その夜。 スマホが鳴る。 📱佑一郎 「……もしもし」 『悠誠?』 声聞いた瞬間、なんか落ち着く。 「なんだよ急に」 『今日さ』 「うん」 『教室』 あ。 『ちょっとやばかったな』 俺は布団に顔うずめる。 「お前が近づくからだろ」 電話の向こうで笑う声。 『でもさ』 「なに」 少し静かになる。 『あのとき、悠誠逃げなかった』 ドキッ。 「……逃げる理由ないし」 『キスできたかも』 心臓爆発。 「バカ言うな!」 声でかくなる。 『今度は誰もいないとこでな』 「お前な……」 しばらく沈黙。 でも、嫌じゃない。 むしろ心地いい。 『悠誠』 「ん?」 『好き』 突然。 俺は数秒黙ってから言う。 「……俺も」 『え、もう一回』 「言わねー」 でも電話切る前に、小さく言う。 「好きだよ、佑一郎」 電話の向こうで笑う声がした。 夜の静かな部屋。 画面は暗いのに、 胸はちょっとあったかい
☆主☆
☆主☆
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コメント
3件
こんにちは☆ 罰ゲームちゃんとやってて良かった!次もちゃんとやってね☆
第22話、一気に読んじゃいました!もう、幼なじみからの恋人関係に変わっていくぎこちなさと距離感がたまらないですね。佑一郎の「好きなやついるから」からの告白シーン、心臓が止まるかと思いました。机の下で指に触れてくるところも、学校でこっそり近づく感じも、全部が甘酸っぱくて…。悠誠のツンデレ具合が可愛すぎます。「嫌じゃねーよ」からの「俺も、たぶん」にはニヤニヤが止まりませんでした。夜の電話で「好き」と言い合うところも最高です。また続き、楽しみにしてます!