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暖かい陽光が一帯に差されている
快晴の下、広がるは満開の桜
心地よい風が頬を掠め通り過ぎていく
今年の春も、綺麗に桜が咲いてくれてよかった。
ほっと胸を撫で下ろす。
春、
それは別れの季節
それと同時に、始まりの季節でもある
高校の先輩は、この満開の桜の中笑顔で卒業して行ったのだろう、とぼんやり考える
新しい場所で、新しい出会いをこれからするのであろう
まあ、彼女らが楽しく過ごせていればいい
桜がひらひらと舞い降りていく風景は美しい
いくら美しがろうが、なんだろうがそれが永遠に続く訳では無い。
いずれは、散る。
散るからこそ、その儚さと尊さが美しいのであろう
それはまた人も同じ……
なのだろうな。きっと
聞こえるのは鳥のさえずり、風の音、そして……
誰かさんの、足音
花乃
そう言って、大きな声で飛びついてくる彼女が転ばないように支える。
亥
花乃
花乃
亥
彼女は隠れているつもりだったんだろうけど、隠しきれない足音でバレバレであった
花乃
亥
可愛いくて、思わず笑ってしまう
花乃
彼女は 三葉奈 花乃
俺の
親友
とある有名財閥のお嬢様で、小さな頃からずっと一緒で、 現在は身辺警護をさせてもらっている
少々……というか結構な世間知らずで、箱入り娘である 彼女は、17歳になって尚小さな頃から変わらない。 一言で言うならば、天真爛漫
誰にでも優しく、正義感が強い彼女のことを、俺は 尊敬している
亥
花乃
花乃
少し怒った様子で伝えられるが、なんだか小動物のようで全く怖くは無い。
少し自信なさげなのは、多少の自覚があるのだろうか……?
亥
花乃
亥
花乃
むすっとした顔で告げられる。 今日も表情が豊かで可愛らしいと思う
やっぱり、花乃のことが
花乃の……ことが?
ああ、
これは普通の友人に抱く感情では無い
これは、
これはきっと そうなんだろう?
暗く澱んだ感情が渦巻く
考えないようにしていたのに
花乃
ズキリ、ズキリと胸が痛む
花乃
結末なんて分かりきっているのに
微かな期待を抱く自分が嫌いで、イヤで、
いっそ──────────
花乃
亥
亥
花乃
花乃
亥
それでも俺は笑いかける
君には笑顔でいて欲しいから
何がなんでも俺は絶対に隠し通す
君が名前を呼んでくれるなら
花乃
亥
花乃
そう、笑って微笑んだ
俺が好きな優しい微笑みでそう伝えられると、断れない
木漏れ日が心地いい中をふたり歩く
散った花弁が絨毯のようになっていて、美しい
春は、好きだ
自分の苗字に入っているから、というありきたりな理由
花乃が好きだと言ってくれたからなのもあるし、生まれたのが春だからなのもある
花乃
亥
花乃は楽しそうに話をしてくれる
こちらも思わず、嬉しくなり笑みがこぼれた
花乃
ぱっと、明るい笑顔。 俺が一番好きな笑顔で、そう伝えられる
亥
そんな事を言われると思わず、素っ頓狂な声が出た
花乃
花乃
花乃
風が吹いて、彼女の髪とスカートが舞った
美しい桜吹雪が舞い踊る 辺りが桃色で包まれた
その中で、彼女は太陽のように輝く笑顔で笑っている
揺れるような黄金の瞳がこちらを見据えて
ああ、本当に、敵わない
儚くて、美しくて
だから
亥
彼女の手を、掴んだ
花乃
花乃
亥
花乃
亥
亥
いきなり掴まれたのでびっくりしました!! と彼女に伝えられて、ゆっくりと手を離す
本当にあるわけがないのに、とても、ありきたりな事で
君が桜に攫われそうだった、なんて言えない
いつか 臆病な私が
この想いを真正面から伝えられるようになりたいけど
今この瞬間が、永遠に続いて欲しいと願うのはずるいだろうか
花乃は優しいから、すぐ甘えてしまうんだ
花乃
亥
花乃
亥
友人として、なのだろう
過ぎる季節の中で、ずっとどんなときも君の隣に居られるとして、その時の俺はなんなんだろう
亥
花乃
花乃
そう言ってニコッと笑う
亥
散りゆく桜の中で、そう約束をしたのだ
どうか、このままで