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千冬

一虎

数週間が経った

羽宮君はあれから一度も此処に来てはいない

だけど、

モブ母

先生、ありがとうございました

千冬

此方こそ、足を運んで頂いてありがとうございました!

千冬

困った時はまた、何時でも来てください

モブ母

ありがとうございます…!

モブ母

では、失礼します、

羽宮君が来なくなってから、俺の病院にも患者さんが来るようになっていた

一日に最低でも1人、多くて5人くらいの患者さんが訪ねてきてくれる

千冬

(羽宮君の影響……じゃ、ないよな)

彼が軽々しくここのことを話すとは、到底思えなかった

千冬

…でも、まぁ

千冬

患者さんが来てくれるのは、嬉しいことだよな

羽宮君が来てくれないのは正直気掛かりだ

だが、自分は腐っても精神科医の端くれ

1人の患者さんに固執するのは絶対に駄目だと分かっていた

千冬

ましてや、好意を持つなんて__

絶対に、有り得ない

千冬

……わかってる、わかってるよ

俺が羽宮君に抱いている感情は好意じゃない

これは断言しなくてはならない事だ

そう自分に言い聞かせる日々が、段々と積もっていっていた

千冬

はぁ、こんなんじゃ……

からころ、と入口の鈴が鳴る

千冬

場地

よ!千冬!

一虎

千冬先生、でしょ

千冬

場地君!羽宮君!

千冬

いらっしゃいませ!

場地

いらっしゃいませって、なんか店みたいだな!

千冬

ふは、そうですね!

一虎

いきなり来ちゃって、ごめんなさい

千冬

いえいえ!大丈夫ですよ?

千冬

あぁ、患者さんが来ちゃったらちょっと困っちゃいますけど

一虎

そうなったらすぐ帰るから…

場地

えェ?

千冬

そんな!

千冬

大丈夫ですよ、別室もありますし!というか、ここで診察はしませんからね!

一虎

え?

千冬

何驚いてるんですか

一虎

い、いや、だって…

一虎

俺の時は、ここだったから、

場地

ァ、確かに!

千冬

あれは貴方々がびしょびしょだったからですよ!

千冬

お望みとあれば、診察室の方でお話聞くことも出来ますよ?

一虎

……大丈夫、です

場地

一虎ァ、聞いてもらえよ

一虎

やだ

千冬

まあまあ、そんなに急ぐことでもないですし

千冬

気が向いたら、いつでも言ってくださいね

一虎

………ウン、

久し振りに会った羽宮君は、前よりも少しだけ顔色が優れないように見えた

元々血色のいい方では無いようだけど、それにしても青白さが目立つ

場地君の元気は相変わらずだが、羽宮君を心配する色が濃くなっている気がする

千冬

(これはまた何かあったかなぁ……)

千冬

(今すぐカウンセリングしたい、ところなんだけど)

千冬

ところで、今日はどうしたんですか?

一虎

ぁ……、

場地

一虎がなァ、渡したいモンがあるーッて!

場地

1人じゃ怖いから付いてきてくれッて言われて俺も来た!

千冬

渡したいもの?

1人、首を傾げる

場地君に催促され、羽宮君は漸く鞄の中からあるものを取り出した

千冬

…!

千冬

これは、

一虎

あ、の

一虎

この間の、お礼、です

千冬

お礼…?

場地

こないださ、一虎のコト助けてくれたんだろ?

場地

それのお礼!2人で選んだんだぜ!

千冬

あぁ、あの時の…!

千冬

そんな…わざわざありがとうございます

俯いた羽宮君からは表情は伺えないけれども、行為自体が嬉しくて気にならなかった

場地

開けてみてくれよ!

場地

な、一虎も喜んでるトコ見たいよな!

一虎

ぁ、う、うん

千冬

ふふ、じゃあ、お言葉に甘えまして…

丁寧なラッピングを一つ一つ解き、中を顕にしていく

入っていたのは、愛らしい黒猫が刺繍されたハンカチだった

千冬

わぁ…!!

千冬

すごい、可愛いです!

場地

だろー?!めっちゃ可愛いよなこの猫!

千冬

はい!やばい、すげぇ嬉しい…!!

一虎

っめ、迷惑じゃなかったですか…?

千冬

迷惑だなんて、そんな!!

千冬

嬉しいです。ありがとうございます、羽宮君

にっこりと笑うと、羽宮君の口角も少しだが上がる

その様子がどうしようもなく可愛くて、2人揃って頭を撫でてしまった

千冬

ほんっっとうにありがとうございます!!

千冬

大事に使いますね!

場地

ん!気に入ってよかった!

場地

良かったなァ、一虎ァ

一虎

…ん

羽宮君の頬が少しだけ蒸気する

整った顔に差した紅はよく似合っていて、思わず目を奪われてしまうほどだ

千冬

……あ

千冬

というか貴方々、学校は?

羽宮君が、びくりとした

場地

アーーーー……

場地

ちょっとソレ、ダメ

千冬

え、

場地

一虎ァ、ダイジョウブかー?

ぱちりと瞬く瞳の奥に、確かな怯えが滲んだ気がして

その微かさに息が詰まった

一虎

ん、は、…大丈夫

一虎

大丈夫

場地

…オウ

千冬

(違うでしょう)

ソレは、大丈夫なんかじゃない

言い聞かせているだけなのだ

貼り付けた笑みが、蹲った震えるアイツの背中と重なる

一虎

大丈夫、です

一虎

すみません、学校は………

一虎

訳あって出席停止中、なんです

千冬

出席停止?

一虎

…はい、

千冬

へぇ、それは……

千冬

ちょっと話、聞いてもいいですか?

もう二度と繰り返さない

後悔はしたくない、そう決めた

一虎

え、

場地

……話してもいーの?

一虎

ッば、場地…!!

場地

なァ一虎、

場地

もう、隠してもしょうがねぇよ…

一虎

っ、そんなこと…!!

場地

だってお前、

場地

もうボロボロだ

一虎

ッ、…!!

千冬

羽宮君、俺は、貴方を救いたい

千冬

だから、話してはくれませんか

場地

一虎ァ……

千冬

大丈夫です

千冬

俺は決して、貴方を否定しない

場地君との説得は意味を持ったようで

苦しそうにではあるがうなづいてくれた

千冬

(絶対に、助ける)

この少年を俺が救ってみせるのだ

to be continued……

この作品はいかがでしたか?

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