七緒
___ねぇ、俺今日、誕生日なんだけど。
12月18日、10時半。 本日の主役、『晴川七緒』は、唐突に口を開いた。
近くで携帯を眺めていた『兎山暁』は、七緒を一瞥し、小さく溜息を吐く。
暁
………そうか。
七緒
それだけっ!?
暁の口から発せられた言葉は、 何とも薄情なものであった。
まさか七緒も、誕生日にこんな言い様をされるとは思っていなかったのだろう。開いた口が塞がらないとは、まさにこの事であった。
七緒
いやいやっ、俺、誕生日、だよ!?
七緒
「生まれてきてくれてありがとう、I love you.」は?
暁
誰が言うか、そんなこっ恥ずかしいセリフ…………。
若干頬を赤らめながら、 暁は呆れた視線を七緒に送る。
そんな暁からの視線に気付いたのか、七緒はそっと目を逸らした。
七緒
む〜………。
七緒
0時ぴったりに、メッセージを送ってくれたのは嬉しかったけど………。
七緒
もっと盛大に祝ってくれても良かったんだよ?
ほら、パイ投げとか……。
ほら、パイ投げとか……。
暁
されたいの?お前。
七緒
え?やだけど。
七緒はそう言って、頭を横に振る。
「何なんだよ…………」と呟く暁には目もくれず、諦めた七緒は自分の手元に視線を移した。
七緒
…………んっ?
暁からのメッセージ。5秒前。
刹那、後方から爆発音がした。 ………………気がした。
七緒
…………えっ!?
七緒
な、何!?なになに!?
暁
…………七緒。
七緒
へ?なんっ___
べしっ。
突然、 視界が真っ白に埋め尽くされた。
混乱が止まらない七緒の周りで、可愛らしい笑い声が聞こえる。
甘い匂い、甘い味。 七緒の顔に思いっきりぶつけられた「それ」が、“パイ”だと言うことに気付くのに、そう時間はかからなかった。
七緒
…けほっ………。
………んんっ!なに………、
………んんっ!なに………、
暁
………ははっ、パイ投げ!
目を擦り、口に入ったパイを飲み込む。
段々と見えやすくなってきた視界の先で、子供みたく微笑む暁の姿が、其処にあった。
七緒
………!
まさかっ、
まさかっ、
暁
誕生日なんだ、
……メッセージだけで終わりなワケ無いだろ?
……メッセージだけで終わりなワケ無いだろ?
暁
皆、この日の為に準備してきたんだ。
今日は寝かせないからな。
今日は寝かせないからな。
七緒
……!
上等ッ……♪
上等ッ……♪
七緒
あと1時間…、…とちょっと!サイッコーに楽しんでやるからね!!
fin♪
12/18 晴川七緒 生誕祭 (力尽きた)