テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#ご本人様には関係ありません
𝕐𝕌𝕀 @男体化中
1,068
るか🍑🐿(イラコン開催中)
3,566
#虹桃
りんごじゅーちゅ🍎@暇の人
1,252
る り す ん す ん
1,793
コメント
1件
うわあ…今回、特に好きな回だったかも。傘、なお兄の方に傾けてるの、無意識に優しくて泣ける。ベンチのとこで「僕、ここにいますから」って言うなお兄の落ち着いた声、もふくんが「ありがとう」って言い返すところ…二人の距離が少しずつ近づいてく感じがたまらない。青いガラス片の「M」も気になるし、なお兄自身が記憶のカケラを持ってたっていうラスト、すごく胸がざわついた。次でまた何か分かるよね?待ってる🥀
春凪町の雨は、今日も止まなかった。 けれど、昨日までとは少し違っていた。 朝、窓を開けたもふは、町の向こうに広がる森を見つめていた。 いつもなら、雨に濡れた木々がぼんやりと見えるはずだった。 しかし今日は、森全体が白い霧に覆われている。 まるで、その奥にあるものを隠そうとしているみたいに。
mf
もふは小さく呟いた。 昨日の夜、古い切符に浮かび上がった文字。
『次は、丘の上で。』
そして、春凪駅の写真に写っていた、二人の人影。 考えれば考えるほど、分からないことばかりだった。 それでも、行かないという選択肢はなかった。 何かが自分たちを呼んでいる。 そんな感覚が、ずっと胸の奥に残っていた。
mf
スマートフォンを手に取ると、ちょうど通知が届いた。
もふは思わず苦笑した。
mf
mf
no
mf
no
「……遠足じゃないんだけど」 そう呟きながらも、もふの口元には笑みが浮かんでいた。
mf
mf
no
no
メッセージを確認して、もふはスマートフォンをポケットにしまった。 それから、窓の外をもう一度見た。 霧の向こうで、何かが動いたような気がした。 けれど、目を凝らしても何も見えない。
mf
自分に言い聞かせるように呟き、もふは家を出る準備を始めた。
no
no
待ち合わせ場所に着くと、なおきりが大きく手を振っていた。 今日も、いつもどおりの明るい笑顔。 その姿を見て、もふは少しだけ安心した。
mf
no
なおきりは慌てて声を抑えた。
no
mf
mf
no
mf
二人は、春凪駅の脇を通り過ぎ、丘へ続く道を歩き始めた。 昨日は雨に霞んでいた道も、今日は霧に包まれている。 数メートル先の景色すら、はっきりとは見えなかった。
mf
もふは足元を確かめながら進んだ。
no
no
mf
no
なおきりは笑った。
no
mf
no
mf
そんな会話を交わしながら、二人はゆっくりと森の入口へ向かった。
入口には、古い案内板が立っていた。
『春凪の丘 遊歩道』
その文字は色褪せ、案内板の周囲には雑草が生い茂っている。 けれど、その下に貼られた小さな紙だけは、妙に新しかった。 もふは立ち止まった。
mf
紙には、手書きの文字が記されていた。
『青い花の咲く場所へ。』
no
なおきりが首を傾げる。
mf
mf
もふは腕を組んだ。
mf
no
なおきりは案内板の先を見つめた。 霧の向こうへ続く道。 その先に、何があるのだろう。
no
なおきりが言った。 もふは頷いた。
mf
mf
mf
no
二人は森の中へと足を踏み入れた。
森の中は、ひどく静かだった。 雨粒が葉を叩く音。 ぬかるんだ土を踏む音。 それ以外には、何も聞こえない。 鳥の声も、風の音もなかった。 まるで、森全体が息を潜めているようだった。
no
なおきりが周囲を見回した。
no
mf
mf
もふはスマートフォンの地図を確認した。 遊歩道は、確かにこの先へ続いている。 けれど、画面に表示される現在地が、さっきからほとんど変わっていなかった。
mf
no
mf
もふはスマートフォンを持ち上げ、少し向きを変えた。 それでも、地図上の現在地は同じ場所を示している。
no
mf
mf
もふは、ふと足を止めた。 道端に、小さな花が咲いていた。 淡い青色の花びら。 雨に濡れながらも、まっすぐに咲いている。 昨日、花壇で見たものとよく似ていた。
mf
なおきりも気づき、しゃがみ込んだ。
no
mf
mf
よく見ると、道の端に沿って、青い花が点々と続いていた。 まるで、道しるべのように。
no
mf
mf
no
二人は青い花を目印に、ゆっくりと森の奥へ進んでいった。 しばらくすると、霧の向こうに古いベンチが見えてきた。 木製の、二人掛けのベンチ。 表面は雨に濡れて黒ずみ、脚の部分には苔が生えている。 その隣には、小さな石碑が立っていた。
mf
もふが近づき、石碑を覗き込んだ。 表面には、かすれた文字が刻まれている。
『春を待つ場所』
その下には、日付があった。
四月一日。
mf
もふは眉を寄せた。
mf
なおきりは、ベンチをじっと見つめていた。
no
mf
no
その声は、いつもよりずっと小さかった。
mf
no
no
なおきりは目を閉じた。
no
mf
no
なおきりは困ったように笑った。
no
もふは、ベンチを見つめた。 自分も、同じような感覚があった。 この場所を知っている。 ここで誰かと過ごしたことがある。 けれど、記憶の中には何も残っていない。
mf
そう呟いた瞬間だった。 森の奥から、かすかな声が聞こえた。
??
no
なおきりが尋ねる。 もふは頷いた。
mf
mf
霧の向こうには、誰もいない。 それでも、確かに聞こえた。
??
今度は、もふのすぐ近くで。 まるで、耳元で囁かれたように。 もふは思わず、なおきりの袖を掴んだ。
mf
no
mf
mf
慌てて手を離そうとした。 けれど、なおきりは何も言わず、そっとその手を受け止めた。
no
いつもより、落ち着いた声だった。
no
もふは、顔を上げた。 なおきりは笑っていた。 その笑顔を見た瞬間、胸の奥が、きゅっと締めつけられた。 なぜだろう。 その言葉を、前にも聞いたことがある気がした。 もっと幼い頃。 もっと暖かい季節。 雨なんて降っていなかった、あの日に。
――大丈夫。僕がいるよ。
頭の中に、そんな声が響いた。
mf
もふは、思わず目を閉じた。 そして。
景色が、変わった。
そこは、春の丘だった。 雨は降っていない。 空はどこまでも青く、柔らかな風が吹いている。 足元には、青い花が一面に咲いていた。 もふは、ひとりでベンチに座っていた。 いや、ひとりではない。 隣に、誰かがいる。 顔は見えない。 けれど、その人は楽しそうに笑っていた。
??
その声は、どこか懐かしかった。
??
もふは、その人を見た。
mf
自分の声が聞こえた。 今よりも、ずっと幼い声だった。
??
??
隣の人は、嬉しそうに笑った。
??
mf
mf
もふは、小さな指を差し出した。 相手も指を差し出す。 二人の指が、そっと絡まった。 その瞬間、風が吹いた。 青い花びらが舞い上がる。 眩しいほどの春の光。 そして、隣の人が、もう一度笑った。
??
no
誰かに肩を揺さぶられ、もふは目を開けた。 目の前にあったのは、霧に包まれた森。 そして、心配そうにこちらを覗き込む、なおきりの顔だった。
mf
no
no
なおきりは、ほっとしたように息を吐いた。
no
no
もふは、自分の手を見下ろした。 いつの間にか、ベンチの端を強く握っていたらしい。 指先が少し白くなっている。
mf
mf
no
mf
そう答えながらも、もふの頭の中には、さっきの光景が残っていた。 春の丘。 青い花。 そして、誰かと交わした約束。 夢だったのだろうか。 それとも、忘れていた記憶なのだろうか。
mf
no
mf
なおきりは黙って、もふの話を聞いていた。
mf
mf
mf
no
もふは、少しだけ目を伏せた。
mf
口にした瞬間、胸の奥が痛んだ。 懐かしくて。 嬉しくて。 そして、どうしようもなく寂しい。
mf
もふは、ゆっくりと言葉を続けた。
mf
なおきりは、何も言わなかった。 ただ、真剣な表情でもふを見つめていた。 やがて、彼は小さく頷いた。
no
mf
no
no
mf
no
もふは、思わず言葉に詰まった。 そんな顔をしていたのだろうか。 自分では、よく分からなかった。
mf
no
mf
もふは視線を逸らした。
mf
なおきりは、少しだけ考え込んだ。 そして、そっと笑った。
no
mf
no
no
なおきりは、まっすぐにもふを見つめていた。
no
もふは、しばらく何も言えなかった。 どうして、この人は。 いつも、そんなふうに言ってくれるのだろう。 何も分からないのに。 何の保証もないのに。 それでも、迷わず隣にいてくれる。
mf
小さく呟くと、なおきりは少し驚いたように目を瞬かせた。
no
mf
no
なおきりは、嬉しそうに笑った。 もふは、その笑顔から目を逸らした。 少しだけ、顔が熱い。
mf
no
no
mf
no
mf
もふは、ほんの少しだけ笑った。 けれど、その笑顔はすぐに消えた。 ベンチの下。 そこに、小さなものが落ちているのに気づいたからだ。 青いガラス片だった。 駅の窓に挟まっていたものと、よく似ている。 もふはしゃがみ込み、慎重に拾い上げた。 ガラス片の表面には、細かな傷が付いている。 その中央に、小さな文字が刻まれていた。
『M』
mf
なおきりも覗き込んだ。
no
mf
mf
もふはガラス片を光にかざした。 霧の中でも、青い色が淡く輝いている。 そのとき。 ガラス片の向こうに、何かが映った。 一瞬だけ。 春の丘。 青い花。 そして、隣に立つ誰かの姿。 その人は、もふに向かって手を伸ばしていた。
mf
もふは、思わずガラス片を握りしめた。 ぐらり、と倒れかかる
no
なおきりが慌てて支える。
no
mf
言葉が続かなかった。 見えた。 確かに、誰かがいた。 けれど、顔だけが思い出せない。 まるで、そこだけを切り取られてしまったみたいに。
mf
もふは、ガラス片を見つめた。
mf
その声は、霧の中へ静かに溶けていった。
二人は、それ以上森の奥へ進むのをやめた。 霧が濃くなり、帰り道が分からなくなる可能性があったからだ。 来た道を慎重に戻り、森の入口まで辿り着いた頃には、雨が少し強くなっていた。 しかし、もふは傘をどこかに置いてきてしまったらしい。 なおきりは傘を広げ、もふの方へ傾けた。
mf
no
mf
mf
no
mf
もふは、何も言えなくなった。 こういうところだ。 なおきりは、いつも何気なく、そういうことを言う。 特別な意味なんてないのかもしれない。 誰にでも、同じように優しいのかもしれない。 それでも。 自分に向けられた言葉だと思うと、胸の奥が妙に落ち着かなくなる。
mf
no
mf
no
mf
mf
なおきりは、一瞬きょとんとした。 それから、ぱっと笑った。
no
no
mf
もふは、傘の内側で少しだけ顔を背けた。 雨音が、二人の間を満たしていた。
家に帰ったあと、もふは拾った青いガラス片を机の上に置いた。 ノートを開き、これまでに見つけた手がかりを書き出していく。 古い気象観測所。 存在しないはずの一日。 春凪駅の切符。 青いガラス。 そして、森の中で見た夢。
『また春に、二人で。』 『忘れた約束を、迎えに来て。』 『忘れないでね。』
もふはペンを止めた。
mf
まだ、何も確信は持てない。 けれど、一つだけ分かったことがある。 自分たちは、確かに誰かと約束をしていた。 その約束は、春に関係している。 そして、その相手は――。
mf
口にした瞬間、もふは目を見開いた。 どうして、そう思ったのだろう。 夢の中の相手の顔は、見えなかった。 それなのに。 隣にいた誰かの声が、なおきりの声と重なった気がした。
『また、ここに来ようね』 『約束だよ?』
もふは、ゆっくりと息を吐いた。
mf
そんなはずはない。 なおきりとは、ずっと一緒にいたわけではない。 少なくとも、十年前の記憶なんてない。 それなのに。 なおきりの笑顔を見ると、どこか懐かしい気持ちになる。 初めて会った気がしない。 隣にいることが、当たり前のように感じる。 それは、ただ気が合うからなのだろうか。 それとも――。 もふは、それ以上考えるのをやめた。 今はまだ、答えが出ない。 だったら、調べるしかない。 そう思ってノートを閉じようとした、そのとき。 青いガラス片が、淡く光った。
mf
ガラス片の表面に、見覚えのない文字が浮かび上がっている。
『次は、四月一日の記録を。』
その下には、小さな数字が刻まれていた。
『3:31』
もふは、息を呑んだ。 観測所の時計が止まっていた時刻。 三時三十一分。 そして、その下に、もう一行。
『なお兄に、聞いて。』
mf
もふは、思わず声を上げた。 なぜ、なおきりの呼び方を知っているのか。 なぜ、自分がそう呼んでいることを知っているのか。 このガラス片は、いったい何なのか。 答えは、まだ何一つ分からない。 ただ、これだけは確かだった。 次に調べるべき場所は、もう決まっている。 もふはスマートフォンを手に取った。 なおきりとのトーク画面を開く。
mf
送信してから、少しだけ迷った。 それから、もう一通。
mf
すぐに返事が来た。
no
no
もふは、その文字を見つめた。 そして、ゆっくりと笑った。
mf
mf
窓の外では、まだ雨が降っていた。 けれど、遠くの空の端に、ほんの少しだけ青い色が見えた。 それは、霧の中で見たガラス片と、よく似た色だった。 ――第三話・終。
翌日、二人は再び古い気象観測所を訪れる。 もふが青いガラス片を見せると、なおきりは不思議そうにそれを見つめた。 そして、ぽつりと呟く。 「……これ、僕も持ってた気がします」
なおきりの中にも、忘れていた記憶の欠片が眠っていた