ペンを持つ手が止まった
「だから」
それに続く言葉を 僕は持ち合わせていなくて
頭を抱えた
あの日
僕のことなんか嫌いだと言って家を出た君に手紙を出せるのなら
なんて言うのが正解だろう
「帰ってきてほしい」 なんておこがましいセリフ
僕には言えそうにもなくて
頭をひねって考えても思いつくのは傲慢なフレーズばかり
ベストの答えが分からない
分からないから
とりあえず君のことを考えた
明るくて笑った顔が可愛くて
僕より年上で博識なくせに 無邪気で幼くて
絵が下手で
相談に乗るのが上手で
そんな貴女に僕は
どうしようもないほど 心を奪われていた
……なんて、そんなの嘘
今もどうしようもないほど 好きで好きでたまらない
──だから、
思いのままに付け足した文章は
あからさまに一方通行の愛で
虚しいけれどそれさえも愛しいと思えるくらいに
僕はまだ、貴女に 焦がれています
コメント
5件
とても好きなお話でした。ブックマーク失礼します。
作品全て読ませていただきました! どれも素晴らしい作品で、頭に情景が浮かんできました! 泡沫 いと。さんの作品でストーリーの勉強させてもらってます_φ(・_・