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コメント
2件
元々後味悪いの苦手だったのですけど、これで克服できましたありがとうございます(( フランスの事を思ってそばにいてあげてるイギリスがとてもかっこよく感じられました✨✨ 両方...報われてくれると良いですね...!!(私欲)
またまた新作です。
まぁ1話完結ですけど…
あんてんしょん!! 英仏(見方によれば仏英)です。 まっくろくろすけみたいな話があります。 政治的意図や戦争賛美、犯罪の助長等の意図はありません。
それでもよろしければ↓どうぞ
その日も、フランスは一人だった。
会議室の窓から見える空は低く、曇っているのに雨は降らない。
まるで泣き方を忘れたみたいな、嫌な天気だ。
兄はもういない。
それを口に出す者はいないが、皆が知っていた。
知らないふりをするには、あまりにも長い時間が経ちすぎていた。
…それに、フランスは知っている。
戦火の中、当時敵だったにも関わらず、
フランスを庇って、死んだことを。
フランス
フランスは、机の上に肘をついて、ぼんやりと紅茶を見つめていた。
香りは立っているのに、味がしない。
最近は、何を飲んでも、何を食べても、そんな感じだった。
…恋人だったロシアは、行方が暗んだ。
ある日突然、なんの前触れもなく。
あの世界会議以降、彼を見たものは誰一人として存在しなかった。
その時、
扉が、静かにノックされた。
イギリス
低く、落ち着いた声。
フランスが顔を上げる前に、その人物はもう中へ入ってきていた。
フランス
イギリス
イギリスはいつも通りだった。
背筋は伸び、表情は穏やかで、距離の取り方も正確だ。
近すぎず、遠すぎず。
触れないし、踏み込まない。
ただ、そこにいる。
フランス
フランスはそう答えたが、イギリスは気にしなかった。
否定も肯定もせず、静かに椅子を引き、対面に座る。
イギリス
そう言って、紅茶を差し出す。
砂糖も、ミルクも、聞かない。
フランスの好みを、もう把握しているからだ。
フランス
イギリス
冗談めかした言い方に、フランスは一瞬だけ口角を上げた。
沈黙が落ちる。
だが、それは居心地の悪いものではなかった。
…イギリスは、聞かない。
兄のことも、ロシアのことも、最近の体調も、夜眠れているかどうかも。
何も、触れない。
だからこそ、フランスは呼吸ができた。
フランス
フランスが、ぽつりと言う。
フランス
イギリスは驚かなかった。
ただ、カップを置く手を止めて、視線だけを向ける。
それが、今のフランスにとっては、最大の救いであった。
イギリス
それ以上でも、それ以下でもない答え。
フランスは、それにひどく安心してしまった。
何も要求されない。
何も聞かれない。
強くならなくていい。
国として振る舞わなくていい。
少なくとも、ここにいる間だけは。
フランス
イギリス
即答だった。
イギリスは立ち上がらないし、距離も詰めない。
ただ、逃げもしない。
フランスはその背中を見て、気づかないうちに思っていた。
_______この人は、いなくならない。
フランスは、静かにそう想った。
想って、しまった。
フランス
あれから数日後。
フランスは...大分落ち着いたような気がする。
いつも通り私が彼にコーヒーを入れて、一緒にいると、
不意に彼の方から声がした。
フランス
フランス
イギリス
彼の精神状態は、WW2以降から崩れていた。
恐らく...兄のことだ。
フランス自身ですら気づかないくらいゆっくり、じんわりと。
彼の傷を、形成していた。
しかし本人自覚がないからかそのことにはほぼ誰も気がついていなかった。
…いや。
正しくは誰も"気にも留めなかった"と言ったほうが正しいか。
WW2が終わった後、
世界中が、どこかおかしくなっていった。
例えば、ドイツとイタリア。
例えば、トルコとオーストリア。
例えば、ソ連。
例えば、日本と韓国、それから中国。
…そんな中、心の余裕があったのは、ロシア...ソ連の弟と、私だった。
正直私もあの頃は気が気ではなかったのですが...
そんな中でのお付き合い報告だったものだから、びっくりした。
冷戦中、私のもとにロシアを連れたフランスが来た。
一体どうしたのか要件を尋ねたら、まさかの『付き合ったよ』。
……本当に、すごい時期だったな、と思う。
まぁ、フランスも壊れ気味だったし、見てくれる人がいるのならよかったと思って、
全然祝福しましたけどね。
…そして、今。
そんな相手が、突如として消えた。
…彼の精神状態は、恐らく酷いものだろう。
それが、私でなんとか持つのなら、それで。
ロシアさんを探しつつ、私がその間の埋め合わせになれば、
それで。
フランス
今日は、よく私の名を呼ぶ。
いつもより、痛いのだろうか。
…それにしては、ちょっと緩んだ顔してるんですけどね。
フランス
フランス
イギリス
恐る恐るの確認を取った彼を安心させるように、
私は優しく彼に言う。
イギリス
フランス
フランス
安堵しきった顔で、彼は息をついた。
次の、瞬間。
唇に、なにかが触れた。
イギリス
絶対にされるとは思っていなくて、反応が遅れる。
………
…キス、された...?
フランス、に...?
私が...?
フランス
フランス
フランス
...そんな言葉を聞いて。
つい、質問を、してしまった。
イギリス
イギリス
フランス
恐る恐る、彼は僕になにかを聞いた。
イギリス
イギリス
イギリス
フランス
フランス
フランス
フランス
フランス
フランス
フランス
思わず、目を見開く。
……僕、今なんて言った?
なんて...言おうと、して。
愛してくれるなら...誰でも、?
なん、だ。
その先を、
なんて言おうと、した?
フランス
フランス
フランス
イギリス
………本当なら、分かってたのかもしれない。
でも、それを理解するなんて、したくなくて。
心の奥底の、脳裏の、自分でも気がつかないような場所に、
全て捨てたつもりだった。
フランス
でもたった今、理解してしまった。
理性が警鐘を鳴らそうが、
僕は、彼に言ってしまった。
行動に、移してしまった。
フランス
フランス
フランス
フランス
フランス
気がつけば部屋の鍵を閉めて、
窓も閉めて、
逃げられないように、
彼の袖を掴んでいた。
多分、無意識だと思う。
彼があの二人のように、
僕を置いていかないように、
そうしたんだと思う。
イギリス
目の前に光景に、彼は絶句していた。
彼の顔には普段現れな焦りと、ほんの少しの恐怖が滲んでいた。
フランス
フランス
フランス
フランス
フランス
果たして、そんな一言で片付けて良いのか。
わからなかったけど、そう言ってみることにした。
そうしたら、
なんだか。
報われるかもしれないって、想ったから。
イギリス
…壊、れた。
驚くほどの無表情、無感情で、
暗い目を、私に向けていた。
…私が、あんなことを言わなければ、
よかったのに。
これは...
私のせい、?
イギリス
だったら________
イギリス
イギリス
イギリス
イギリス
彼は、無表情のまま、私を見つめる。
まるで、感情そのものを、
落としたかのような顔だった。
フランス
フランス
イギリス
私は、彼が壊れていると知っても尚、彼の手を振り払わず、
私の袖を掴んだ彼の手に、自身の手を重ねた。
振り払って逃げるほうが、きっと、良いのかもしれない。
多分、それが最良の選択だろう。
彼も私も、一線を超えずに済むから。
…けど、別の選択肢を取る、だなんて。
最初から考えられなかった。
ぬし
ぬし
ぬし
ぬし