seungmin
机を三つ並べた、個別指導塾のブース。
真ん中に座る俺の左隣で問題を解いていた
中学三年生、スンミンが手を止めてこちらを向き、
生意気なニヤケ顔でそんなことを言い出す。
LeeKnow
また始まったかーーと、
りのは額を抑えてしまった。
りのは大学入学前の春休みから、それまで
続けていたスーパーでのアルバイトをやめ、とある個別指導塾で講師の
アルバイトを始めていた。
中学時代からの友達に
「楽だし、楽しいからやってみたら」
と変更を勧められたためだった。
実際、その通りだと思っていた。
授業はローパーテーションによって仕切られたブースでおこない、
生徒と二対一か一対一。
スーパーのときのように上司や他のアルバイト、
パートの人たちに気を遣いながら仕事をしなくていい。
塾のルールさえ守っていれば誰にも邪魔されることはない。
指導に集中できる。
そして、人にモノを教えるということが非常に面白く感じた。
説明して理解してもらえることが楽しく、
問題を解けるようになって喜ぶ生徒を見ることも楽しかった。
教える時間以外にも教材の予習に割く時間が必要で、
それは当然給料が発生しない。
それが嫌だと言っている講師もいる。
しかし自分には、忘れかけていた
中学校の学習内容をおさらいすることもまた、
楽しいことだった。
楽しんでお金をもらえる。
こんなよい仕事があるのだろうか?
と思っていたし、担当生徒たちの成績もいまのところで順調で、
仕事の悩みなどはまったく発生しなかった。
……彼の担当になるまでは。
seungmin
seungmin
LeeKnow
はぁ、…
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