テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
え、好き
夜の帰り道
街灯の下を歩いていた。
昼の喧騒が嘘みたいに静かで、風だけが冷たい。
隣には君がいる。
だけど、手を繋ぐ訳でもなく、
肩が触れる距離でもなく、
ただ同じ歩幅で歩いてるだけ。
沈黙が続くと、なんだか胸がざわざわした。
言いたい事はきっと同じなのに
でも、それを言葉にしてしまったら今の関係が壊れそうで
俺は空を見あげた。
雲の隙間から、丸い月が覗いている。
本当は君に言って欲しい
「好きだよ」なんて、そんな直接じゃなくていい。
ただ、隣でふと空を見上げて、
「月が綺麗だね」
って言ってくれたらそれでいい。
その一言で、きっと全部分かるから
だけど君はポケットに手を入れたまま、前を見て歩いてる
時々何かを言いかけて、やっぱり黙ってしまう
ねぇ気づいてる?
俺は、ずっと待ってるんだよ。
君の視線の中にずっと俺がいたらいいって
君の言葉の中に、ほんの少しだけ俺が居たらいいなって
そんな事を考えていると、君が急に立ち止まった。
それだけだった
本当は違う言葉を期待していた。
また歩きだす。
さっきより少しだけ距離が近い。
ふと君が空を見あげた。
つられて俺も見上げた。
丸い月
君は少し迷うように口を開いて、それから小さくいった。
胸の奥が静かに解けた。
それだけ答えた。
それだけで、よかった。
多分今夜はそれで伝わったから_。