knmc
ASMR配信ってさ。どんな気持ちでやってんの?

ろふまお終わりの控室で、もちさんから唐突に尋ねられた。
社長も不破さんも後の予定があって、控室には二人だけだった。
kid
どんな気持ちで…って言われても…。まあ、リスナーを癒したいとかそんな?

knmc
耳かきASMRとか、よくあんなセリフ吐けるよね…媚びやがって。

kid
おい、ディスりたくて始めた話か、これ?

knmc
ごめん、つい本音が。けどさ、ぜんぜんピンとこないんだよね。

kid
まあ、耳かきとかはもちさんにはハードル高いだろうけど…。
普通の雑談配信みたいな内容を、ささやきボイスくらいの声のトーンでやるとかならいいんじゃない?

knmc
ふむふむ。甲斐田くんはどんな感じでやってるの?

kid
ASMR雑談? そうだなぁ…バイノーラルマイクって耳型だったり、ダミーヘッドっていって頭のかたちしてたりするのね。だから雑談だったら真後ろで語りかけてるみたいな感じで始めることが多いかなぁ。

knmc
…真後ろで語りかける…。うーん。ちょっと甲斐田くんで試させて。

そういうと、もちさんは僕の背後に回り、僕の両肩に手を置く。
knmc
…えー、にじさんじ所属ヴァーチャルライバーの、剣持刀也です。こんな感じ?

僕の真後ろで、いつもより柔らかめのトーンのもちさんの声が響く。
kid
うん、いい感じだと思うよ。

knmc
今日はASMR雑談のなんたるかを、甲斐田くんに教わろうと思ってるわけですけど、あとはどんな感じですすめればいいでしょうか、先生?

kid
あとは…たまにどっちかの耳に近づいてささやいてみたりだとか…?

knmc
なるほど。“こういう、かんじ、ですか? 甲斐田くん?”

kid
…ンッ…!?

突然右耳のすぐ脇でささやかれ、思わず声が漏れてしまう。
knmc
“どうしました? 僕のやり方、ダメですか?”

kid
…いや…いいとおもっ…うけど…っ、ん…っ

knmc
“もしかしてだけど、甲斐田くん、耳弱い?”

kid
…そんなことな…っ、い…

knmc
“…ふーっ。ふふ、やっぱり笑っちゃうなぁ。僕には、向いてないかも(笑)”

kid
…ちょっ…いまの、わざと…息…ッ

気が付いたらがっちりもちさんにハグされてて、逃げることもできなかった。
knmc
“ちょっと呼吸が乱れてるんじゃないですか? リラックス、リラックス(笑)”

kid
ひゃう…ッ

knmc
“どうしたの?(笑)”

kid
み、耳舐めとか…ッ センシティブ判定…アウトだし…!

knmc
”甲斐田くんの声のほうがよっぽどセンシティブだよ(笑)“

kid
…ハァ…ハァ…もぅ、やめ…っ…んんッ…♡

もちさんが容赦なく右耳のあらゆるところを嘗め回す。
kid
…ヤ…ッ…、ン…ッ、あッ♡ だめぇ…ッ

しばらくして解放された僕は、テーブルに突っ伏していた。
涙目でもちさんを睨むけれど、もちさんは傍に立ってにこにことしているだけだ。
knmc
あ。

kid
ん?

knmc
そもそも僕、未成年だからASMR配信とか、出来ないんだった。

kid
…は?

いったいどこからが悪ふざけだったのか。もしや最初から全部…?
kid
剣持ぃ…!

knmc
やだなぁ、ほんのジョークじゃん。

僕はもちさんを正面からホールドすると、肩に顎を乗せた状態でつぶやいた。
kid
責任とれよ。ばーか。
