テラーノベル
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夜だった。
雨は昼間よりも強くなっていて, 校舎の街灯に照らされて 白く跳ねている。 製菓実習室の窓ガラスを 一定のリズムで叩いていた。
康平は,忘れ物に気づいて 戻ってきただけだった。 本当に, それだけのつもりだった。
ドアを開けた瞬間, 明かりが点いているのが見えた。
康平
康平
誰かが残っているはずがない。
雨音に紛れて, かすかな物音がする。
康平は,足を止めたまま 声をかけた。
康平
返事はなかった。
けれど,倉庫の奥── 材料保管庫の小さな部屋から, 気配だけが伝わってくる。
康平は,胸の奥が ざわつくのを感じながら, そちらへ向かった。