語部
題︰ヘビースモーカー
*死ネタ、中太、ビーストネタバレ多々。苦手な方はスキップ推奨!
〝え〜〜っと此見えてる?うふふ、中也の滑稽な面が目に浮かぶね。うふ、うふふ、中也。君の居ない此世界は中々に退屈だろうね、噫。待ち望ンでいたものが今目の前にあると云うのに未練が出来て仕舞う。
───これは君のせいだよね?
なンて、全て君のせいにするよ。…あァ、此爆発音、うふふ、疾いね。流石はあの二人。…中也。最後に一つ云いたいな。ねえ、中也。
「 」〟
プツン、と云う音と共に通信とやらが切れた。
「…ッは、真逆こンな簡単におっちンじまうとはなァ…流石の俺も予想のよ文字もしてなかッたぜ。」
今日、つい数時間前に首領である太宰が死んだ。理由はただの飛び降り。つまらねェ死に方をしやがった、阿呆な野郎。
「ちっ、ンな言葉云いやがって。ウワキできねェだろーがよ、くそ。…くそったれ。」
太宰が唯一好きだった銘柄の煙草を一本、口に咥える。火を付けて誤魔化すように、大袈裟に。肺に取り入れる為に大きく吸い上げる。
「…手前との、接吻の味。…くそまじィな、ンとに…まじィ。不味くて、不味くて堪らない。…っ、」
目の前が滲むのは、屹度気の所為。じりじり、と云う音と共に灰が散っていく。
「っはは、…ふ、ふは、巫山戯んなっ、くそだざい、何時もみたいに笑えよ、揶揄えよっ、…何してンだって、嘲笑いに来いよ、くそだざい、くそぼす…っ、」
ポツり、と落ちていく大粒の雫が地面に模様を彩る。地味に湿った煙草を踏み潰し、もう一本取り出し吸う。莫迦みたいに不味いモンなのに辞められない。否、辞めさせてくれない。
「…これで俺もヘビースモーカーの仲間入り、かよ。理由がくそだせェな。」
自嘲しながらも煙草をまた吸って、踏み潰してを何回も繰り返す。…吸う度に、愛しの人を思い浮かべながら。
「 最期に君に言葉が残せて善かった。愛してるよ、私の中也。 」
「…あァ、俺も愛してンぜ。手前も、ソッチで浮気すンじゃねェぞ、糞太宰。」
厭でも彼の人を思い出し、愛に狂い地獄でも愛し合う事を誓ったモノ同士の決意の表れ。
この煙草は契約。果たされる迄消えることない契約。
「…ソッチで待ってやがれ。俺が殺しに行ってやる。」
〝うん。待ってるね、中也。〟
その言葉は誰にも届かず、煙草の煙と共に散っていった。