えと
るな
ゆあん
本人様とは関係ありません❌
ゆあんの家を出て、るなと一緒に帰り道を歩く。
えと
るな
何も話す気にはなれなかった。
そんな私の気持ちをわかっているのか、るなもまた何も話すことはなかった。
えと
るな
えと
反対方向なのに私の家まで着いてきてくれたことにお礼を言うと、
何言ってるのとるなは笑う。
るな
えと
心配そうに私を見つめるるなに手を振ると、私は玄関のドアを閉めた
声をかけて来る母と妹を無視して部屋へと戻る
ベッドの上に荷物を放り出すと、着替えることもなくそのまま寝転がった。
___何もする気に、なれなかった。
ゆあんはもういない。
別れた時とは違う喪失に襲われる。
もう二度と.......ゆあんに会えることはない。
もう、二度と..........。
えと
嗚咽が、涙が止まらない。
大好きだった。
大好きだった。
別れても、忘れようとしても、ずっと、ずっと、大好きだった.......。
えと
溢れる涙を拭いながら顔を上げると、
投げ出した荷物の中にある1冊の本が目に入った。
えと
それは、
ゆあんのお母さんから渡されたゆあんの日記帳だった。
渡された意図はわかんない。
けれど、
これが今私の手元にある唯一の形見だった。
えと
1ページ目を開いて見る。
そこには私が知っているゆあんからは想像のつかない、
几帳面な文字が書き綴られていた。
赤木 ゆあん 14歳 好きな食べ物 ななチキ 嫌いな食べ物 ピーマン 好きなこと 友達と遊ぶこと 日記を書くこと 嫌いなこと 病院に行くこと 明日から3年生。今年もみんなと楽しく過ごしたい。
えと
私が出会う前のゆあんがそこにはいた。
そういえば___私がゆあんの存在を認識したのは、いつだったんだろう。
クラス替えの後の自己紹介の時?
ううん、
あの時はまだたくさんいるクラスメイトの中の1人だった。
ゆあんをゆあんとして認識したのは、いつのことだったんだろう......?
日記帳の2ページ目を開いてみる。
そこには新学期1日目の様子がゆあんらしい文章で書かれていた。
4月8日 今日から新しいクラスが始まった。 1、2年で一緒だったやつらもいたし、知らない子もいた。 出来ればみんなと仲良くなってたくさん思い出を作りたい。 そういえば担任は去年から引き続きなおにぃーせんせーだった。 俺の身体のこともあるのか3年間ずっと一緒だ。 今年もよろしくってことで朝、なおにぃーせんせーが教室に入ってくる時に、黒板消しをドアに挟んでおいた←古典的?(笑) 見事に引っかかったせんせーにめっちゃ怒られたけどまぁいいや。 今年も迷惑かけるけどせんせーよろしくね。
えと
新学期早々、
先生から全員が怒られた記憶はあるけれど、
あれはゆあんたちのいたずらだったんだ。
えと
そうつぶやくと私はゆあんの日記帳を胸に抱いて、いつの間にか眠りに落ちていた........。
◼️◼️◼️
おはよー
おはよー!また同じクラスで嬉しい!
私も!今年もよろしくね!
気づくと私は教室の喧騒の中にいた。
えと
確かさっきまで自分の部屋にいたはずだ......。
それに......。
えと
目の前に広がる光景は、
見慣れた高校のものではなく.....
懐かしい中学の時のものだった。
えと
ゆあんの日記を読んで当時のことを思い出したからだろうか?
夢の中の私は中学3年生の、
ゆあんと初めて同じクラスになったあの教室にいた。
えと
教室を見渡すと入り口の所で、男子たちが何がしようとしているのが目に入った。
えと
夢だから当たり前なんだけれど、
あの当時となんら変わることのないゆあんの姿が
そこにはあった
男子たちは椅子に上がって、
入り口のドアに黒板消しを挟もうとしている。
えと
我ながらくだらないことを思いついたなって思うけれど
思い付いたものは仕方ない。
私は教室の後ろのドアからそっと出ると廊下を歩いて前のドアに向かった。
廊下の先には今年の担任となる直也先生の姿が小さく見える。
そして、
少しだけ開いたドアの向こうには....... いたずらの仕掛けをしているゆあんの姿が見えた。
_____目が、合った。
ゆあん
えと
視線を上にずらしてそう言うと....
バツが悪そうに頭を掻きながら、
そっとドアを開けてくれる。
ボスン
という音を立てて私の前に黒板消しが落ちた。
えと
ゆあん
笑いが漏れるのを必死で堪えながら私は自分の席についた。
____その直後だった。
黒板消しのトラップのなくなったドアから、直也先生が普通に入ってきたのは。
◼️◼️◼️
えと
目が覚めるとそこはいつもの私の部屋だった。
懐かしい夢を見た。
大好きだったゆあんにも、もう1度会えた。
えと
私は日記帳をそっとカバンの中に入れると、1つ伸びをして部屋を後にした。
るな
るな
教室に入るなり駆け寄って来たるなが心配そうに聞いてきた。
えと
ホントはまだまだ立ち直れてなんかいなかったけれど........
心配してくれている親友に少しでも安心して欲しくて嘘をついた
るな
えと
そんな私の嘘なんてお見通しのるなは
心配そうな表情を崩さないまま席に向かう。
えと
少しでも笑って貰えればと、昨日見た夢の話をしてみる。
えと
それを夢の中の私がさーと続けようとした時、
るながおかしなことを言い出した。
るな
えと
るな
えと
動揺が隠せない
だってそれは、
夢の中での話のはずだ。
実際の私はあの時新しいクラスにドキドキしていて、そんなことが行われていた事さえ知らなかった。
るな
るな
るな
だけど
るなは夢の内容こそ現実だと言う。
分からない
どういうこと?
えと
私はカバンの中から昨日受け取った日記帳を取り出した。
なんとなくそばに置いておきたくてカバンの中に忍ばせていた日記帳だったけれど
こんなふうに役に立つなんて思っても見なかった。
えと
昨日見たページをるなに見せようと2ページ目を開いた私の眼に、
信じられないものが飛び込んできた。
えと
そこに書かれていた内容は昨日のものとは変わっていた。
昨日は確かに直也先生がトラップに引っかかったと書かれていたのに......。
今開いたそこには、
トラップが不発に終わったという.....
夢の中で見たままの内容に変わっていた。
えと
るな
心配そうに見つめるるなに____私は、何も言うことが出来なかった......。
ただ
何が起きているのか理解ができないままゆあんの日記帳を.......綴られた文字を見つめる。
けれど私は、日記帳に書かれている内容を理解ができずにいた。
何も言わなくなった私の顔を、るなが覗き込む。
るな
えと
るな
納得していないような、
そんな表情でるなは言った。
勘違い_______に、
決まっている。
過去が変わるなんで、
そんなことが起きるわけないんだから..。
一瞬よぎった考えを振り払うように、
私は取り出した日記帳を再びカバンの中に押し込んだ。
コメント
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おお?これはこれは? 記憶が変わるってこと? てことはてことは!? 続き楽しみ!!
コメント💭🫣