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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

オシタニア

いやはや、申し訳ないね

病室にいるのは オシタニア・ヘーベルト

我々国総統サクラ・シャルロットの義父 そして、ゾムの育ての親でもある

そして、シャルロット家の嫡男にして当主の座を捨てた人間

御歳、67歳である

しんぺい神

いえ、治療は僕の仕事ですから

しんぺい神

しかし、驚きました

しんぺい神

シャルロット家の方が此方へ来ていると言う報告が、無かったモノで

オシタニア

何をおっしゃるか

オシタニア

もう、私はシャルロット家の人間ではない

オシタニア

へーベルトと、平民の名を持っているのだからな

しんぺい神

(そのヘーベルトの名は、平民の中ではかなり高位の名前なんだけどね)

しんぺい神

(それがシャルロットに劣るとしても、平民には成り代われない…名ばかりの平民)

オシタニア

しかし、連絡をしなかったのは申し訳無かったな

オシタニア

なんでも、急ぎだったものだから忘れていた

しんぺい神

お急ぎの用事ですか?

しんぺい神

それでわざわざ闘いが酷い南部まで……

オシタニア

君はもう知っているだろう、彼女が持っている【呪い】を

しんぺい神

!?

しんぺい神

……部下を全員下がらせます

しんぺい神

少々お待ち頂いても?

オシタニア

ああ、構わないよ

そうして、しんぺい神は病室にいた兵士と看護師そして部屋の前を警備している人間全員を遠ざけた

それにより、正真正銘2人きりの部屋となった

しんぺい神

全員下がらせました

しんぺい神

お伺いしても宜しいでしょうか

オシタニア

何から聞きたい

しんぺい神

まずは、オシタニア様が此方に来られた理由を

しんぺい神

わざわざ安全である西部の第10番地区からお越しになったのですから

オシタニア

意地でも、我々国の総統代理であるグルッペン様に伝える事があったんだ

オシタニア

その道中で少し巻き込まれてしまってね

オシタニア

ここへは不可抗力さ

しんぺい神

グルッペンにですか?

しんぺい神

それはまた……

オシタニア

戦争で焼けたと思われていた、【呪い】についての紙の1部が見つかったのだ

しんぺい神

【呪い】……先輩に罹っている【歳を取らない】の記載があったんですか

オシタニア

私はシャルロット家にも関わらず、神に嫌われなかった人間だからな

オシタニア

それを管理していたのは弟だったし、縁もないと思っていたが、先日見つけた

しんぺい神

一体、何処にあったというのですか

オシタニア

ようやく、弟夫婦が死んだ場所への立ち入りが許可されてな

オシタニア

遺体も管理されていて、当時のまま保管されていた

オシタニア

その衣服の中に入っていたんだ

オシタニア

”シャルロットは神の祝福の元、以下の呪いを授ける”とな

オシタニア

だが、その文しか残されていなかった

しんぺい神

しかし、それだけで【呪い】が分かったというのは早いのでは?

オシタニア

【呪い】の詳細は、嫡男に詳しく説明されるのさ

しんぺい神

では、オシタニア様が全てご存知になられていると

オシタニア

【歳を取らない】は、彼女だけに与えられた【呪い】だ

オシタニア

その記載は無いだろう

オシタニア

私が引き取り育てた、弟の息子ゾムは【呪い】ではなく『祝福』だった

しんぺい神

ゾムが『祝福』……ですか

しんぺい神

人並外れた身体能力と観察眼、そして豪運

しんぺい神

確かに、『祝福』と言えば納得ですけど……

オシタニア

彼が与えられたのは『強運者』と言うんだよ

オシタニア

シャルロット家は、神から【呪い】、稀に『祝福』を生まれた時から貰うからね

オシタニア

私は母方の祖母の血が濃いから、そんなモノは無かったが

オシタニア

シャルロット家は『観察者』と『強運者』の2種類の『祝福』があるそうだ

オシタニア

ゾムがその『強運者』で娘が『観察者』と【呪い】を持っている

しんぺい神

『観察者』……ですか

オシタニア

私は何方も無かったが、『観察者』は弟が所持していたからな

オシタニア

彼女が持っている『観察者』は桁違いだ

オシタニア

黄緑の瞳、これが【呪い】の象徴であり、瞳に入る花形が深刻さを表す

しんぺい神

(確かに、先輩の目には花形のハイライトが入った)

しんぺい神

(医療分野から見れば、星眼症かと思ってたけど…)

オシタニア

彼女の【呪い】は深刻だ

オシタニア

深刻さは、先代の死によって悪化した

しんぺい神

!?

しんぺい神

どういう……事ですか

オシタニア

彼女は彼らを信用していた

オシタニア

そしても私も、彼女を託した人間を信用していた

オシタニア

そんな人間の手によって、彼女の人生が破壊された

オシタニア

なのに、彼女は先代達を思い続けている

オシタニア

まるでそれが、『観察者』の運命であるかのように

オシタニア

『観察者』は、その対象が亡くなると崩壊するとされている『祝福』

オシタニア

新たな対象が出るまでは、まともな生活は出来ないだろうな

しんぺい神

そんな……

オシタニア

その事を、私から先代達そしてその引き取り手達にも伝えていた

オシタニア

それだけ、共感を得ないと簡単に崩壊してしまう祝福だからな

しんぺい神

(それなのに……先代達は安直に自殺をした)

しんぺい神

(だから先輩は、先代達に固執している……)

しんぺい神

(恨む事は祝福によって叶わない……ってこと?)

オシタニア

それなのに、彼奴らは死んだそうだな

オシタニア

公にしておらんが、それぐらいは私でもわかる

オシタニア

目に見えて、彼女が変わったからな

しんぺい神

……

オシタニア

その原因についても、グルッペン様とお話したかったんだ

オシタニア

立て続けの幹部様の自殺、これになんの意味があったのか

オシタニア

まさか……君たち幹部も関係しているのではあるまいな?

しんぺい神

いえ、決してそのような事は御座いません

しんぺい神

我々も、上官たちにご指導ご鞭撻を頂きました

しんぺい神

上官たちの過去に、何があったかは存じ上げませんが、決して関与しておりません

しんぺい神

(自殺をしたのは上官たちの意思だ)

しんぺい神

(別に、俺達が自殺に追い込んだ訳じゃないし、その理由も分からない)

しんぺい神

(けど、隠蔽に協力したもの事実)

しんぺい神

(間接的な関与はしている)

しんぺい神

(これだけは、知られてはならない)

オシタニア

それは安心だ、いくら彼女を慕ってくれているとはいえ、【呪い】の話をしていないからな

オシタニア

勝手に動かれて、彼女が崩壊したら溜まったモノではない

しんぺい神

それを、グルッペンに伝えようと……

オシタニア

私も歳だからな、いつ亡くなるかわかったものじゃない

オシタニア

彼女……サクラには目上らしい事は出来なかった

オシタニア

ゾムにもだ

オシタニア

ならば……少しでも彼女を救うきっかけを作ろうでは無いか

そう言ってオシタニアは視線を下へ向けた

彼の実家、旧名 オシタニア・シャルロット

シャルロット家は親戚内の結婚により 権力を維持していた

彼の祖父母は、実の両親であると

まぁかなり複雑な関係である

そして、歳の差がある弟

その弟は従姉妹の女子と結婚して ゾムを産んだ

ではサクラは誰の子か?

それは彼の両親の子

つまり、かなり年の離れた兄妹となる

ゾムからすれば、サクラは姉にあたる年齢だが、家系図的にゾムはサクラの甥っ子となる

だから、サクラもオシタニアの事を兄とは思ったことは無い

その事実をオシタニアとその弟はサクラに伝えなかった

そして、サクラにオシタニアが引き取った遠縁の子として生活していた

本家の血を、一番に受け継いだ彼女に その事実をひた隠し続けている

オシタニア

政権が変わった時点で、城を尋ねてでも説明すべきだったと後悔しているよ

オシタニア

だが、彼女は私を毛嫌いしているからね

オシタニア

簡単に城へは行けなかった。ゾムとも会うのも気まずかったのもあるが

オシタニア

こんな複雑な家系事情を持ち出すのは吝かだと思っていたんだが……

オシタニア

そうも言えない事態になってしまったからな

オシタニア

サクラは今、行方をくらませているんだろ?しんぺい神様

しんぺい神

(なんで、なんでこの人にはお見通しなんだ)

しんぺい神

(先輩と同じ血筋ながら、【呪い】も『祝福』も持たなかった人間が)

しんぺい神

いえ、総統閣下は現在他国へ赴いております

オシタニア

国民にも公にできない公務か?彼女は「信用」を重視する

オシタニア

内密の政治は、彼女は行わない

オシタニア

それを信条としているのは、私が一番知っている

しんぺい神

(ああ、しつこい)

しんぺい神

(お前は先輩を捨てた人間の癖に……)

しんぺい神

(どの口で喋ってんの?彼女の事を一番知ってるって?)

しんぺい神

(まっさきに手に負えないと捨てた人間が、何を言うんだ?)

オシタニア

……

オシタニア

そうか、君は私の事をそんな風に思っているのか

しんぺい神

はい?

オシタニア

私はね、シャルロット家の『祝福』は受け取れなかった

オシタニア

ましてや【呪い】も持ち合わせていない

オシタニア

しかしね、『心音者』というモノを持っている

オシタニア

これは簡単に言うと、人の心を読む力だ

オシタニア

だが、私の場合は何も鍛えていなかったからね

オシタニア

私に対して、明確な悪意でないと聴こえないのだよ

しんぺい神

(それじゃつまり……さっきの俺の気持ちが筒抜けだったって事か)

オシタニア

確かに、サクラが手に負えなくなって引き渡したのは私だ

オシタニア

お金に困っていたモノ理由のひとつでもある

オシタニア

ヘーベルトは、平民で裕福では無い

しんぺい神

それで、先輩を捨てていい理由にはならないでしょう

しんぺい神

あの人は、その先で苦しい思いをした

しんぺい神

貴方が捨てなければ、そんな事に遭う事も無かった

オシタニア

そうなれば、君たちは彼女に出会うことも無かっただろうな

しんぺい神

オシタニア

もし私の元にずっと居たのなら、彼女も同じへーベルトの名を持たせて生活させていたはずだ

オシタニア

私はただでさえ、闘いが嫌いなんだ

オシタニア

そんなところに、大切な妹を出せる訳ないだろう

しんぺい神

なら……なんで捨てたんですか

しんぺい神

お金は自己満足のためであり、その理由で子を捨てる事に賛同するつもりはありませんよ

しんぺい神

まさか、ご自身のご両親に命令されたから……とか言いませんよね?

オシタニア

……

しんぺい神

無言は肯定と捉えますよ?

オシタニア

ああ、それで構わない

しんぺい神

(結局、同じじゃないか)

しんぺい神

オシタニア様、ここは南部

しんぺい神

闘いが激しい地域です

しんぺい神

ここを抜けて、城に行くのはとても危険だ

オシタニア

引き返せというのか

オシタニア

それ程までして、不都合な話をグルッペン様の耳に入れたくないか

しんぺい神

僕達は、先輩を慕っています

しんぺい神

それと同時に、グルッペンには絶対的忠誠を誓っているのですよ

しんぺい神

グルッペンが……一番先輩を大切にしている

しんぺい神

彼がいれば、彼の声があれば、全ては上手くいく

オシタニア

(グルッペン・フューラー……まさか『洗脳者』の持ち主か?)

しんぺい神

【呪い】や『祝福』のことは、ちゃんとグルッペンに報告しますよ

しんぺい神

ですので、お引き取りください

しんぺい神

本部をこれ以上、混乱に貶めようとする愚かな行動を慎むように

しんぺい神

今、南部を任されているのは紛れもなく俺ですので

そうしてしんぺい神は病室を出る

下がらせていた部下を呼び、護衛付きでオシタニアの帰還の手伝いをしろと命じた

オシタニアは、数分して病室を出て住処へ帰って行った

先輩をよく知るのは俺だけでいい

先輩の内部から外部まで

全ての状態を知るのは俺だけでいい

だから、先輩が苦しんだ時

一番いい方法で

俺が先輩を助けるんだ

先輩を捨てた奴なんか、先輩にもグルッペンにも会わせて溜まるかよ

ただ願っただけなのに

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